岡田美術館所蔵琳派名品展@日本橋三越

 1月21日から2月2日まで
 岡田美術館所蔵琳派名品展 知られざる名作初公開

 平成25年10月に箱根小涌谷に出来た岡田美術館
小林忠館長の元で、日本画・浮世絵・東洋陶磁器の名品が揃い、風神雷神が出迎えてくれる。
 そのうち琳派400年を機会に、かのコレクションを日本橋三越で展示している。デパートの小さな空間狭しと大作が招き入れる。
 早蕨の団扇絵額装から、長谷川派らしい柳図屏風、蛇籠を立体的に金泥で描いた作品。王朝文化を華麗に描き出す伊年印。
 乾山の陶芸も見どころが多く、ちょうど出光美術館や畠山記念館の所蔵品と繋がる兄弟連作など見どころが多い。
 光琳の緻密なデザイン構成力がポスターでも紹介されている「雪松群禽図屏風」さまざまなスタイルの鴨だちが描かれているなかで、大きく画面と二分する雪を冠する常緑の松、そして青い水辺。
 さらには、胡粉で立体的に花咲かす「菊図屏風」その葉も艶やかな緑、墨色を効かせて花を引き立てている。
 今回は再会を果たした「月に秋草図屏風」どこかで見た事がある、と思えば『酒井抱一と江戸琳派の全貌』(千葉市美術館)で拝見した作品だった。
その当時の図録を見ると(個人蔵)。岡田美術館が生まれる前。
 そう思うと岡田氏がずっと収集された作品を一堂に鑑賞できる素晴らしい美術館が出来るのは喜ばしい事だろう。
 今回また贅沢なことには、本阿弥光悦俵屋宗達が展示されていること。
会場最後に行くにつれて、江戸後期から昭和と琳派の精神を受け継いだ日本画家を紹介する。
 まるで幕の内弁当のように、限られた空間にぎっちり味どころ、見どころを集めて展示している様子。
 これは、いざ箱根。雷神風神の招かれていってみようか。

パスキン展@汐留ミュージアム

「生誕120年エコール・ド・パリの貴公子 ジュール・パスキン展」

 パスキン展は16年ぶりという。いつものミュージアムの様相が違う。
 この入口から魅惑的!1920年パリや作風を思わせる壁や天井照明までこだわり、開幕後ずっと好評だというが納得できよう。マダムを魅了するパスキンだもの。
 会場ではパスキン展の生涯と旅路に合わせて4章仕立てになっている。パスキンの邸宅をイメージして構成したそうだ。

 Takさんと担当学芸員さんとの対談での解説から、会場構成も照明に至るまで素敵。
 まさに4章の空間は1920年のパリを彷彿される贅沢、行く価値あり。

 2月1日の日曜美術館アートシーンで「パスキン展」紹介される。

 子供向けガイドブックに「パスキンの旅するバッグ」とあり
中を広げると世界地図が現れる。まさに世界を旅した生涯であろう。
 ブルガリアの貴族に生まれたピンカス君。見事なアナグラム
(ジュール・パスキン)Jules PASCIN 本名はJ.PINCAS
 ブルガリアで生まれ、ブカレストルーマニア)、ウィーン(オースリア)で学ぶ。ミュンヘンで美術学校の通うが、その素描の実力が見出され、ドイツの風刺雑誌「シンプリティズム」の挿絵画家として高給で活躍する。
 しかし、自分の描きたいのは油絵、とパリに向かう。彼は気前も良く友人に恵まれていたので、パリに着いた時には大歓迎を受けたそう。Cafe Domeなど馴染みの場所だった。
 パリのモンパルナスに住み、やがてアメリカにわたる。
1920年にはアメリカ国籍を取得するが、やがてパリに戻る。
そこで運命の愛すべき人「シュリー」と出会うことに。その間、アメリカとを行き来はするが、パリでは超売れっ子画家。
 1929年に画廊と契約を結ぶがむしろ自由を束縛されたと感じ苦悩し、1930年アトリエで自死する。「さよなら シュリー」と残して。

 真珠のような淡いパステルの画面から何を感じるだろう。
パリの時代に愛されたパスキンが堪能した。麗しい女性に囲まれて、友人にも画廊にも顧客にも恵まれた人生。何の不足があろうか、という程恵まれた境遇の中にずっと抱いていた願望。真珠貝のごとく。

ジョルジョ・デ・キリコ −変遷と回帰−@汐留ミュージアム

ジョルジョ・デ・キリコ −変遷と回帰−
2014年10月25日(土)−12月26日(金)

 ジョルジュ・デ・キリコ(1888-1978)は
シュルレアリスム(超現実主義)に影響を与えたという印象が強かった。
しかし、今回は新しい顔を見つける展覧会であった。
 第一次世界大戦後、ルネサンスバロックの画家たちの影響を受けた デ・キリコの画面は古典主義へと回帰する。
 素描・デッサンが多く残っているのを初めて見た。
そして美しき妻をモデルに、古代ギリシャと現在の日常風景を繋ぎ、空間も室内から海辺に、そしてギリシャへとさまざまな時空間で揺らぐ。
 そして、晩年には、再び、形而上絵画へと戻るとともに、さらなる新たな形而上絵画を創造した。その一連の流れを見る事が出来た。
 ブロンズ像の彫刻も置かれており、なかでも銀メッキを塗ったブロンズ像「不安を与えるミューズ」には影が投影されていく。
 知らなかったキリコの新たな側面を知る展覧会。
古典への回帰、馬シリーズ。好きな作家に新たな魅力を知るパナソニック汐留ミュージアムの空間構成も驚き!

建築家ピエール・シャローとガラスの家@汐留ミュージアム

2014年7月26日-10月13日
建築家ピエール・シャローとガラスの家
パナソニック汐留ミュージアム

 アール・デコ時代の最も革新的な建築家
ピエール・シャロー(1883-1950)を紹介する日本初の展覧会。
 フランスはパリ ポンピドゥーセンターコレクションにある、ピエール・シャローのコレクションは、今回の展覧会では、吊りベッド以外ほとんど日本に持ってきたという意欲、3年前から準備を進めたそう。
 内覧会のため特別に撮影許可を頂く。今回は担当学芸員大村理恵子さんから解説を頂いた。
 3年かかりの企画ということで、決して広くはない空間をいつも広がる世界を見せてくれる。みかんぐみが内容構成を設計。ガラスの家、そして機能的な展示空間。

 建築としては「ガラスの家」、インテリアデザイン、家具製作でそれぞれの分野では有名だが、今回は総合的に評価する試み。
 1920年から1930年のフランスの良き時代を担った一人。1925年のアールデコ博覧会ではいくつも内装を手がけたという。

 彼の制作は常に協働コラボレーションであり、モビリテ動きのある作品が多いという。アラバスタ―の照明は職人タルベ氏と。

 扇のように広がる机、曲線と直線が美しい。アールデコデザインで材質も良いものが多い。



 今回「『木と金属』の時期」には、ロベール・マレ=ステヴァンスが実際に愛用していたという機能的な机が展示されている。

そして椅子のコレクション

後半は、二川幸夫の写真で建築界であまりにも有名になった「ガラスの家」が役所に提出した図面と展示パネル、そして写真で紹介される。
世界現代住宅全集13 ピエール・シャロー ガラスの家(ダルザス邸)
18世紀の邸宅を3階を残したままリノベーションをしたという。
当時ガラスの壁というのは大変珍しく。しかも中と外からの光との調和が美しいということだ。生涯でひとつだけ、光輝く名建築を生み出した後、アメリカに渡り、ロバート・マザウェルのためにやはり改築してアトリエを設計したという。

 ピカソやリプシッツ、モンドリアンなど同時代の芸術家たちとも交流があり室内には多くの作品が飾られていたようだ。
 それぞれの分野でアールデコの時代を築いた作品を、ぜひこの空間で。体験できることは幸い。
ガラスの家:ダルザス邸 La Maison de Verre/Pierre Chareau

日本の美を極める@ホテルオークラ

2014年8月8日〜31日
ホテルオークラ別館地下2階アスコットホール『第20回 記念特別展秘蔵の名品アートコレクション展』

 今回は企画担当された熊澤弘先生の解説と共に鑑賞する機会を頂いた。今回の画像は主催者の許可を頂いた。毎年オークラで開催される「秘蔵の名品アートコレクション展」は20年の節目を迎える記念特別展である。
 今回は東山魁夷《渓音》から展覧会の構想が始まり江戸と明治、日本画から油絵という時期を生きた高橋由一《墨水桜花輝耀の景》を加え、日本独自の美意識が息づく日本近代絵画を「四季」「花鳥」「風情」と分けながらホテル空間の制約の中でそれぞれ工夫され一期一会の会場となっている。実際にこの空間でしか成し得ない組合せ。また著作権上の制約から掲載できない作品が素晴らしいのでぜひ足を運ばれたい。
 このカタログ 300円。特に四季と美人画では図版配置が実に見事で、展示会場とは違う組み合わせで、このカタログだけでも楽しめる。なお、裏表紙は、前田青邨《みやまの四季》前田青邨は歴史画を得意とした筆致から一転《みやまの四季》。桜楓の間を鳥が飛び交い栗鼠が戯れる 愛らしい作品である。これはぜひ「リスを探せ」

大広間にはこのスケール感で屏風が揃う。竹内栖鳳《河畔群鷺》金屏風に濃淡の墨と白鷺を描く筆遣いは見事。横山大観《夜桜》1930年羅馬展に出品された一つ。

大智勝観《梅雨あけ》

横山大観の軸装の作品が並ぶ。29歳《四季の雨》と57歳《山四題》での4幅ずつ。展示会場の制約から敢えて禁じ手として重ねた面白い展示となっている。むしろ比較出来て良い効果がある。カタログでも比較が出来る。

川合玉堂《秋川懸瀑》1930年羅馬展に出品されたひとつ。カタログでは秋の章で東山魁夷《渓音》と共に瀑布が落ちる。

培広庵コレクションから池田蕉園《秋思》と北野恒富《願いの糸》培広庵コレクションは個人コレクターながら質が高い美人画が揃う。今回もその一部が登場する。京都の上村松園、大阪の島成園 東京の池田蕉園が当代の日本女流美人画家と言われたという。とりわけ蕉園は美人薄命31歳没と解説にあり、初めて知った作家であった。

こちらな上村松園美人画。これだけそろうと目が嬉しい。

浅井忠《早春》岡田三郎助《舞妓》と近代日本の油彩が続く。

ここから小倉遊亀《夏の客》菊池隆志《初夏遊園》と夏美人が続くのでぜひ会場にて。

ミュージアムショップ 過去20年の展覧会ポスターと共に関連書充実している。

美人画の四季
美人画の四季」表紙は原成園。
オリジナル制作の絵葉書は今回限り、トリミングして裏面には全体図版四色刷。かなり手の込んだ葉書は初めて見た。しかも100円!

ホテルオークラ東京の意匠は美しい。

組障子など職人技が冴える設計となっている。こういう技能を生かした設えが今の日本にこそ重要であろう。本館は大倉喜七郎が企画し、谷口吉郎氏が設計に加わり東京オリンピック開催に向けて建築した。このモダンな日本意匠が、次の東京オリンピックに向けてどう変わってしまうのか、オオクラらしい良識ある建築を願う。

 この場限りの展覧会。唯一無比の構成は、今夏限り。培広庵コレクションやウッドワン美術館、ひろしま美術館、島根県石見美術館など東京では開催が難しい作品も多く出品されている。近代日本。初めて出会う作品、再び出会う作品が待っている。日本が紡ぎ織り成す美意識を再発見する夏になれば幸いである。

描かれたチャイナドレス@ブリヂストン美術館

 ブリヂストン美術館貝塚学芸員が企画された「描かれたチャイナドレス」という企画展を拝見した。この画像は主催者からの許可を頂き撮影したものである。

 展覧会のみどころを実際の絵画を前に参考図版と共に紹介いただき、奥行がある構成を実感した。これを昨年夏に企画して実現するチカラも素晴らしい。

1915年、藤島武二が嗅煙草を前にしてすわる女性像、《匂い》が、大正期の中国服をまとう女性像の登場だそう。

ローマ留学中に見たルネサンス肖像画のように女性の真横を日本人モデルに中国服を着せて油彩画で描いた。藤島は中国服フェチ、横浜などで50着以上を買い集めたという。
ちなみに、参考図版。現在行方不明だという。いかにもルネサンス肖像画の影響を受けた美しい作品。

《女の横顔》のモデルは佐々木カ子ヨ(かねよ)竹久夢二のモデル、恋人にもなった「お葉」。

小出楢重は「支那服が書きたい」と言って実現したというアトリエでの上海の踊り子。現在はリーガロイヤルホテルに飾ってあるもの。今回は朱色の壁とライティングの御蔭で輝くような印象になった、という。

 安井曾太郎《金蓉》1934年
依頼を受けて小田切嬢を描いたという。この1枚から発想させるとはなんと魅力的な絵であろうか。

児島虎次郎の艶やかな中国での風景。

今回は会場にチャイナドレスなど中国の衣装を配して多面的多層的な
構成になっていた。

美術館は、チャイナドレス割引や、シノワズリティーという愛らしい企画もしている。クローゼットにチャイナドレスがあったら、ぜひ来て出かけるとよい。さぞ、朱色の壁面に飾る絵画と同様に似合うことだろう。

クールな男とおしゃれな女@山種美術館

平成26年5月17日から7月13日まで 山種美術館では前期後期で入れ替え 良い作品に出会えます。
これは池田輝方「夕立」
ひと雨に濡れて滴る男ときれいな女がいます。

粋なネーミングを付ける展覧会、すべて山種美術館の所蔵品で構成されています。

本日は特別鑑賞会、しかも古今亭文菊さんが落語会で江戸のいい男を語る、という趣向でした。二席 噺がありました。
我慢強い男気と、強かな女っぷり。見事な対比であり、
また着物も三度お着替えするという、かっこいい男ぶりです。

しかし、落語家といえば...江戸っ子堅気。
そしてシャンパン片手に文菊さんもブログ書いていました。帰りは颯爽と帽子に洋服。この切り替えがすごい。

この展覧会は3章
構成は
1章 「かっこいい男」
歴史上人物。
日本武尊菅原道真紀貫之織田信長
ローマの町を背景にした慶長使節支倉常長と二匹の犬たちも。
そして兜町山種美術館があった昭和62年
館内階段での姿を描かれた美術評論家・河北氏もダンディーです。
東洲斎写楽は黒雲母が良い状態で、山種美術館は浮世絵が130点ほどある中で写楽3点。貴重な作品です。

2章 「きれいな女」
浮世絵では、鈴木春信「梅の枝折り」喜多川歌麿「篠原」
伊東深水鏑木清方上村松園の美人尽くし。
そして舞妓、芸妓の姿。
例えば、小倉遊亀「舞う(舞妓)」と「舞う(芸妓)」

3章 「よそおう男女」
江戸期の「輪踊り図」もあり、松岡映丘「山科の宿」あり
なかなか見どころが満載の展覧会でした。

今回は着物が多く、美術館に華やかな場となり、見事なものですよ。とても贅沢な時間でした。