日本の美を極める@ホテルオークラ

2014年8月8日〜31日
ホテルオークラ別館地下2階アスコットホール『第20回 記念特別展秘蔵の名品アートコレクション展』

 今回は企画担当された熊澤弘先生の解説と共に鑑賞する機会を頂いた。今回の画像は主催者の許可を頂いた。毎年オークラで開催される「秘蔵の名品アートコレクション展」は20年の節目を迎える記念特別展である。
 今回は東山魁夷《渓音》から展覧会の構想が始まり江戸と明治、日本画から油絵という時期を生きた高橋由一《墨水桜花輝耀の景》を加え、日本独自の美意識が息づく日本近代絵画を「四季」「花鳥」「風情」と分けながらホテル空間の制約の中でそれぞれ工夫され一期一会の会場となっている。実際にこの空間でしか成し得ない組合せ。また著作権上の制約から掲載できない作品が素晴らしいのでぜひ足を運ばれたい。
 このカタログ 300円。特に四季と美人画では図版配置が実に見事で、展示会場とは違う組み合わせで、このカタログだけでも楽しめる。なお、裏表紙は、前田青邨《みやまの四季》前田青邨は歴史画を得意とした筆致から一転《みやまの四季》。桜楓の間を鳥が飛び交い栗鼠が戯れる 愛らしい作品である。これはぜひ「リスを探せ」

大広間にはこのスケール感で屏風が揃う。竹内栖鳳《河畔群鷺》金屏風に濃淡の墨と白鷺を描く筆遣いは見事。横山大観《夜桜》1930年羅馬展に出品された一つ。

大智勝観《梅雨あけ》

横山大観の軸装の作品が並ぶ。29歳《四季の雨》と57歳《山四題》での4幅ずつ。展示会場の制約から敢えて禁じ手として重ねた面白い展示となっている。むしろ比較出来て良い効果がある。カタログでも比較が出来る。

川合玉堂《秋川懸瀑》1930年羅馬展に出品されたひとつ。カタログでは秋の章で東山魁夷《渓音》と共に瀑布が落ちる。

培広庵コレクションから池田蕉園《秋思》と北野恒富《願いの糸》培広庵コレクションは個人コレクターながら質が高い美人画が揃う。今回もその一部が登場する。京都の上村松園、大阪の島成園 東京の池田蕉園が当代の日本女流美人画家と言われたという。とりわけ蕉園は美人薄命31歳没と解説にあり、初めて知った作家であった。

こちらな上村松園美人画。これだけそろうと目が嬉しい。

浅井忠《早春》岡田三郎助《舞妓》と近代日本の油彩が続く。

ここから小倉遊亀《夏の客》菊池隆志《初夏遊園》と夏美人が続くのでぜひ会場にて。

ミュージアムショップ 過去20年の展覧会ポスターと共に関連書充実している。

美人画の四季
美人画の四季」表紙は原成園。
オリジナル制作の絵葉書は今回限り、トリミングして裏面には全体図版四色刷。かなり手の込んだ葉書は初めて見た。しかも100円!

ホテルオークラ東京の意匠は美しい。

組障子など職人技が冴える設計となっている。こういう技能を生かした設えが今の日本にこそ重要であろう。本館は大倉喜七郎が企画し、谷口吉郎氏が設計に加わり東京オリンピック開催に向けて建築した。このモダンな日本意匠が、次の東京オリンピックに向けてどう変わってしまうのか、オオクラらしい良識ある建築を願う。

 この場限りの展覧会。唯一無比の構成は、今夏限り。培広庵コレクションやウッドワン美術館、ひろしま美術館、島根県石見美術館など東京では開催が難しい作品も多く出品されている。近代日本。初めて出会う作品、再び出会う作品が待っている。日本が紡ぎ織り成す美意識を再発見する夏になれば幸いである。