祈りのかたち 仏教美術入門@出光美術館

2017年9月3日まで
出光美術館

 日本で「美術」と言うと、主に西洋美術がキリスト教由来であるように何かしら仏教の影響を受けている。
それは人びとの願いが仏教を通じて誰にでも見えるように、わかるようにしてきた成果なのだろう。

 「祈りのかたち」
寺院の仏教美術を拝顔するには、信仰する対象であるから、常時でもないし強いライトは当てられないし特別拝観日でないと出会えないことがある。
、美術館博物館に入ってしまった途端に「美術」として温湿度や保存修復などで管理されることになる。私たち見る側にとっては信仰、祈りのかたち。

 いつもすごい出光美術館の名品揃いだが、今回破格にすごいスケールなのは曼荼羅図と地獄図。
極楽浄土を願うゆえ民衆に諭すための絵図が「地獄図」そこには、救済して下さる清らかな地蔵菩薩様と対極的に描かれる激しい形相の獄卒たち。そして見せしめ教え諭すに相応しい人間たちの愚かさと苦しみ。イケメンや美女に夢中になるのも罪なのだとか。
2つの地獄図の間に配置する地蔵観音立像。
「六道・十王図」「十王地獄図」地獄の種類や六道世界、裁きの期日、地獄の場所など、細やかな解説。裁きと救いがきちんと対となっていることも大事な要素だろう。

 仙がいさんは出光美術館ならでは。今回は緻密に丁寧に描かれた羅漢たちの図が印象的だった。
さっと一筆で多くを諭す筆さばきも見事だが、こうしてひとつひとつ細描で表情を捉えた作品もまた魅力がある。

当麻曼荼羅図」の緻密で重層的な世界観は、今の時代のデジタルアートで再現したら無限な魅力があるだろうと思われた。
奈良県天理市にあった内山永久寺サイトによれば「明治年間の廃仏毀釈より徹底的な破壊」で失ったという。それが、因果で東京丸の内で見る境遇を複雑な思いである。海外流出も多くあったという。
 その因果あってもなお有難いと思えるのは日本人ゆえだろうか。

第1章 仏像・経典・仏具 ─かたちと技法
第2章 神秘なる修法の世界 ─密教の美術
第3章 多様なる祈り ─弥勒・普賢信仰の美術
第4章 極楽往生の希求  ─浄土教の美術
第5章 峻厳なる悟りへの道  ─禅宗の美術