開館30周年記念特別展 柿右衛門展@戸栗美術館

開館30周年記念特別展 柿右衛門

2017年4月1日(土)〜5月14日(日)
戸栗美術館
渋谷区松濤の閑静な住宅街の中に開館して30周年記念特別「柿右衛門展」が開かれている。
10:00〜17:00 会期中無休
○今展会期中は毎週金・土は20時まで開館(最終入館は19時30分まで)

出展作品リスト

 柿右衛門とは、「濁手(にごしで)」と呼ばれる乳白色で暖かさを感じる白磁に、華やかな赤の上絵具を主に絵付けを施した「柿右衛門様式」と称されるうつわ。
初代柿右衛門が赤絵の焼成に成功し、1647年には製品を長崎で売り出されました。やがてオランダの東インド会社が買付けヨーロッパに送り出す王侯貴族の憧れの的となり絶大な人気を誇ります。
ザクセン王はこの美しい白磁を我が物にしたいとマイセン窯で試作を試み、ドイツで磁器作りが成功していきます。こうなると東インド会社はやがて輸出をやめてしまいます。その途端、あれほど人気だった柿右衛門も輸出事業の縮小によって「濁手」素地の製法が18世紀のうちに失われてしまいました。
 その「濁手」素地の製法を昔の文書から試行錯誤の研究を重ね復興したのが11代目明治期世界万博に出品し好評を得ました。そして引き継がれるのが12代・13代です。
 つづく14代柿右衛門氏は先代達よりその技術を受け継ぎながら、写実的な植物の姿を捉え意匠として赤と白で描く方法を生みだします。
 そして平成26年に襲名された15代酒井田柿右衛門氏が、伝統を守りながらも現代に生きる柿右衛
門を作り続けています。最大級の壺や大皿なども出品され、繊細な桜花、愛らしい団栗、デザインも色合いもとても微笑ましく人柄が感じられます。

 近現代の歴代「酒井田柿右衛門氏」のを11代から15代までの作品を眺めると、伝統の中に個性が見えてきます。昔の教科書にも「柿右衛門誕生秘話」が紹介されていて、それも面白く読めます。

 戸栗美術館の館蔵品を中心に、典型的な柿右衛門様式の丁寧な作行の製品から染付併用の製品、輸出先である西欧の需要に応じた様々な器形も興味深いものです。また、ドイツ・マイセン窯による柿右衛門写し製品も、同意匠の伊万里焼と並べると白磁の色の違いや絵柄の稚拙さが感じられて微笑ましくもあります。

 どうぞ戸栗美術館で「これも柿右衛門!?」と驚いてみてください。