ルーヴル美術館展 17世紀ヨーロッパ絵画@国立西洋美術館

 ルーブルの名品が多い展覧会は混雑予想されるため、
時間差鑑賞を狙うか、双眼鏡があるとよいかも。
 今回企画は大胆にも ルーブル所蔵の絵画を使った
17世紀のヨーロッパ世界の歴史文化を語る織物
眩しいまでの黄金の光を放つかと思えば、暗い陰も見える。
 絵は時空を超えて相互に連関し織り成す。

 三つのテーマ 私の印象は
1)黄金の世紀の光と影
2)旅する発見 どこまでが科学?
3)物語 キリスト教の聖人とギリシャローマ神話 
以下(数字)展覧会リストによる

1)「黄金の世紀」その陰の領域
導入は ブッサンは「古典主義の幕開け」を。
絵画は元来写真代わり
(2)マリー・ド・メディシスの肖像はイタリアより
持参金と眩い文化を連れて輿入れされた
フランスの国家権力の象徴
(4)ミニャールの少女の傍らには 珍しきオウム、
イヤリングをした犬
足元は金箔を施した輝くサンダル。
(8)ハルス〔リュートを持つ道化師〕は 初めて「笑いを描いたといわれる。
ガイドによれば「聴覚の寓意」
(7)若きレンブラントの肖像は 市民台頭
オランダのダム広場を置き、オランダ繁栄を示す。
(12)フェルメール〔レースを編む女〕双眼鏡で
細いレース糸が見える。

そこに視線を集中させるため赤い糸との対比を。
戦争画や農民の姿もすべて「描かれた」もの。
現実より美しく甘美に訴える手段。
ボロを着ても心は錦 そんな印象を与える絵。

2)旅行と「科学革命」 
 世界大航海 光を受ける海に浮かぶ帆船があるかと思えば
今まで彼らが知らなかった
ブラジルの大地やスカンジナビアの渓谷。
 市民階級が台頭してきたオランダから
日常生活、誇るべきお宝を静物画 ステータスシンボル 
(29)ロランの描くイタリアの海
太陽の光が一筋海の彼方から差込み、帆船をひるがえす
クリュセイスを父親の元に返すオデュッセウス〕は左の階段の上で
繰り広げられ、双眼鏡でやっと確認できた。
 現実の海岸と 神話の宮殿が共存する舞台。
(39)〔プファルツ選帝侯の息子たち〕
ダイクがイギリス亡命中のプファルツ侯の息子を描く眼
左 後にプファルツ選帝侯で領地を支配する兄カール1世ルートヴィヒを正面から、
右 イギリスにて軍人として幸福に生きたカンバーランド公ルパートを斜めから
後に仲違いし歩む道さえを見抜いたダイクの筆。
(42)ブリューゲル〔火〕錬金術が盛んだった時代。
ニュートンは近代科学の祖というが、錬金術や魔術も共存する時代。
(46)〔アンドロメダを救うペルセウス〕も前面を飾る珍しい貝殻の数々を
写実的に精緻に描きこみ、幻想的な一場面を描くような
一枚に幾つもの時代を、織り込む絵
哲学は全ての学問であったよう

3)「聖人の世紀」、古代の継承者?
エスチョンをつけるところがキュレーターの妙
古代と現実を繋いでしまうのは 絵画だからこそ成せる技
 キリスト教は煌き聖書の世界を美しくわかり易く描くカソリック
ギリシャローマ神話多神教
キリスト教にとっては異教ではあったが
ヨーロッパの祖として、また美しき人間裸体を描く口実ともなる。
(50)〔エスランの聖母〕手にするのはナラの小枝
(52)(53)カルロ・ドルチのバロック様式は美そのもの
〔受胎告知天使〕

〔受胎告知聖母〕

あの場面を二枚の絵に丁寧に描く美 栗毛の一本一本まで愛らしい
(55)ラトゥール〔大工ヨセフ〕
大工にヨセフを、その息子にイエスに託して描くのは多いが
このろうそくの焔に浮かぶ表情、灯りを透かす手
その灯りとともにずっと見入っていた絵。
〔パテシバ〕 ダヴィデからの手紙を持つ女性として
描かれる。魅惑的な女性を描くのに神話に託して描くことが多い。
(59)ムリーリョ 無原罪の聖母
IN PRINCIPIO DILEXIT EAM (‘He loved her from the beginning’)

(62)モッラ遊び(イタリア風じゃんけん) 視覚の寓意とか

(69)コラージュ!

 大変精緻な絵画が多く、出来れば ゆっくりじっくり見たい。
絵をそれぞれ鑑賞するのもよいし、展覧会の意図を感じる
絵の配列に17世紀の歴史を感じ、今現在の対照とするのもよし。
 絵画に描かれた事物で語る世界史 魅惑的。
歴史は現在を知るために学ぶもの
どうして古臭い過去の事なんて学ぶの...なんて
生意気に思っていた高校時代だけど。
 発見と侵略、王政と搾取、
キリスト教イスラム教 カソリックプロテスタント
同時代の両面性を教えてくれた世界史の先生に感謝したい。
 フランスと諸国の世界史を見るにつけ「三十年戦争」という
キリスト教やヨーロッパ全土の諍いを思う・

恣意的な絵画でさえ歴史の片鱗を見る 時空を共有する経験。

 なお DNP大日本印刷ルーヴ美術館の共同研究も
同時に体験できる場もあり 参考にされると良いのでは。
子ども手帳「黄金の世紀を生きる」は わかりやすい。

*関連サイト*
MMF artscape