ブリューゲル版画の世界@Bunkamura

Bunkamuraザ・ミュージアム
ベルギー王立図書館所蔵 ブリューゲル版画の世界
7/17-8/29
 
 ブリューゲル版画でのモンスターがキャラクターとして展示会場でも散りばめられている。
 Bunkamuraは展覧会ごとに 壁のみならず、展示装置、ソファーまでもすっかり館内をまるごと変えるユニークな空間作りをする。今回もキャラクターとして、天井から飛び出し、映像となって蠢き、ファブリックに潜んで驚かす。
 しかし彼の活き活きと動き出すさまざまな森羅万象、そして農民たちの生活もまた、想像以上に楽しく版画の世界で生きている。

 今回はブリューゲルのみならず、ともに活躍した同時代の版画も登場する。比較することで、ブリューゲルの手腕に改めて感心する。版画によって、当時のベルギー、アントワープの反映、豊かな農民の表情が伺える。
またブリューゲルらしい、キリスト教らしい人間への眼差しが面白い。

 細部を見れば見るほど深く発見が多く潜んでいる。この銘文については、監修者の森洋子先生をはじめとして、ベルギー王国図書館、各研究者の知恵の結集となって解読したという。ラテン語オランダ語の銘文が、ブリューゲルの絵と相まって深く示唆する。諺や頭巾などをパネルで丁寧に解説紹介する。

 ベルギーに旅して、ブリュッセルのベルギー王立美術館で衝撃的だった。ブリューゲルボッシュ(ヒエロニムス・ボス)が繰り広げる奇想天外にも思える幻想的なワールド。厳格なキリスト教カトリックらしい宗教画が連なる中で、創造力豊かな世界観。
 ベルギーでもマンガが人気。ベルギー王立図書館だって落書きされてるわ、素敵なマンガ博物館があるのだから。

 図録は版画部分を特殊印刷した充実した研究集成。
第1章  雄大アルプス山脈、近郊の田園風景
第2章 聖書の主題や宗教的な寓意
第3章 帆船の見事な表現
第4章 人間観察と道徳教訓
第5章 コトワを通じて知る「青いマント」の世界
第6章 民衆文化や民話
第7章 市民の祝祭と農民

しかしチラシも力作で、七つの罪源のうち「傲慢」図入り解説あり!
あの時代のスペイン文化を思うと、非常に痛快。江戸期の浮世絵版画にも通じる大衆の勝利。