ボストン美術館展@森アートセンターギャラリー

 ボストン美術館の改修工事に伴うサプライズ
こんなに来てしまったよいのか という位充実している内容だった。

 ボストン美術館展「名画のフルコース」というコピーのとおり、定番の美術館案内を思わせる丁寧な構成。会場にはテーマカラーになっている鮮やかなきみどり色で年表や画家の説明をするコーナーもあり、西洋美術初心者も十二分に楽しめる。
 この会場を上手く使っており、モネの半円形の展示は上手いと思う。混雑する前にぐるりと堪能されることオススメ。
ちなみに図録はカラー表紙が三種類くらいあり、好きなデザインを選べるようだ。もちろん中味は一緒だが、ジャケ買いが楽しめるのはオツ。
 またこのミュージアムにあわせてコラボ企画もあるようで、そのチャレンジ精神に拍手は送る。

1 多彩なる肖像画
レンブラント筆の対の肖像画を含めて、ダイクを描く人物は性格もあぶりだす。当時権威の象徴であった存在が市民を描くことになる過程まで。

2 宗教画の運命
キリスト教を何か」このmookとは重ならないが、キリスト教を知っていると西洋絵画がわかるのも醍醐味。エルグレコ《祈る聖ドミニクス》ミレー《刈り入れ人たちの休息(ルツとボアズ)》

タイトルに宗教的主題はつけていないが、ブーグロー《兄弟愛》は青衣の女性と二人の姿から連想させる。。

3 オランダの室内
17世紀の遠近法を駆使した、市民生活の一場面。

4 描かれた日常生活
近代以前 “風俗画”。バルビゾン派は農村の暮らしを描き、19世紀は都市の市民生活を描く。ルノアールは当世ファッションをまとう女たち、マネ《音楽の練習》スペイン歌手か。モネの家族への眼差し。ドガの競馬場での日常風景。

5 風景画の系譜
風景画というジャンルが成立した17世紀オランダ ライスダールから、18世紀ヴェネツィアの都市景観、19世紀イギリス、フランスの風景画まで、風景画の流れがわかる展示として構成している。西洋では風景が背景でしかなかった時代から、やがて主題となる流れ。そうとらえると日本美術感覚から見ると新鮮で面白い。

6 モネの冒険
世界有数のモネ・コレクション 風景画10点がずらりと壮観。叶うならば、半円形の中心点に当たる壁際で全部を眺めたいもの。積みわらも、ルーアン大聖堂も至近距離とは印象が全く異なる。
クロード・モネの世界―陽光と色彩のメッセージ。
7 印象派の風景画
印象派の風景画は西洋絵画の流れに大きな変革を流れを追う。コローといえば《フォンテーヌブローの森》、そしてクールベの大作《森の小川》スケールも題材も破格。リアルな教科書図版のよう。

 静物と近代絵画
ファンタン=ラトゥールとジョルジュ・ブラックの桃と並べてあるところが憎い。

全体的にテーマごとに壁紙の色調と統一してあった。重厚な紺からえんじ色。そして穏かなグレイや水色へ。画家や時代別を意識しながらも、章ごとでリズムよく流れを感じる展示がとても好印象。
 誰もが知っている名前もあり、それを全てまとめて展示するところが、またスゴイんだなあの黄金時代のアメリカならでは。

 今回はガイドを借りたが、鹿賀丈史ナレーション。ベルリオーズの「イタリアのハロルド」やサティ、ドビッシィーなど同時代の作曲家を配し、わかりやすい説明だった。耳と目で楽しめるのは良い企画。