ポワレとフォルチュニィ展@東京都庭園美術館

 このアール・デコの館に相応しい東京都庭園美術館で、「20世紀初頭のヨーロッパの夜会」テーマに館内の雰囲気を変化させる内藤廣氏の試み。照明もぐっと落とし、動線をすっきり変化させ、朝香邸はその照明や調度品がますます輝くように引き立つ仕掛けとなった。館内に入った途端に、みな夜会へと誘われていくのだ。

 20世紀はじめのファッションを変えて行った二人。
20世紀初頭を代表するモード界の巨人ポール・ポワレと、20世紀最高のテキスタイル・デザイナーといわれるマリアノ・フォルチュニィのドレス。
 ポワレに代表される直線的なシルエットのドレスや、フォルチュニィによる布地の美しさそのものを纏う斬新なドレスの誕生。
 「デルフォス・ドレス」シリーズは、ギリシア時代からエッセンス。絹サテンを折り畳みしわ加工することで、身体のラインに沿うように絹がまとわりつく。裾も見事。オーダーすると手書きメッセージで帽子箱のように丸い箱にくるまって届いたそう。
 それぞれの部屋に相応しい装いをしたキリコの絵画から抜け出たようなマネキン。
 ファッションの流行は新しいエッセンスを過去や異国から見出しアレンジすることで、とびきり魅了する衣装へと変化し流行を生み出す。
 ジャセフィーヌが愛したナポレオン時代のドレス。世界各地の民族衣装の装飾美。
コルセットという矯正美から、本来の姿へ戻そうという動きを先見した二人の流れはやがてココ・シェネルの登場も促していったのだろうか。

La Gazette du Bon Ton』 (←岐阜県立図書館 デジタル画像で堪能!素晴らしい)
 Gazette du Bon Ton』は「上品で美しい雑誌」の意。副題には『art,modes et frivolites(芸術・ファッションと婦人装身具)』とある。その名のとおり芸術性豊かなファッション誌であり、<今世紀最大のモード誌>とも称されている。『アール・エ・デコラシオン』誌の編集主任を務めたリュシアン・ボージェルが1912年11月に創刊し、以後、第1次世界大戦により一時休刊を余儀なくされたものの、1925年12月まで刊行された。特漉きの厚手コットン紙に刷られた格調高いポショワール*図版は、アール・ヌーヴォーアール・デコを代表するクチュリエであるポール・ポワレ、ウォルト、パキャン、ドゥイエ等によってデザインされた最新のモードを、同じく当時の代表的挿絵画家であるバクスト、バルビエ、マルタン(C.Martin)、マルティ(A.E.Marty)、ベニトー、ブリュネレスキ、ルパップ(G.Lapape)、イリーブ、デュフィ、ドリアン等が華やかな色彩で描いたものである。

アール・デコのファッション・ブック

アール・デコのファッション・ブック

 ファッションプレートやモード雑誌が華やかなりし頃。
《Chou Chou》などドレスが光で表情が変わる様、女性をヴィーナスと三美神にたとえるなど、平面的なアール・デコのイラストレーションながら、情景や調度品などを含め魅力的。
 ポール・ポワレはパーティーを企画して妻に最新のドレスを着せてはお迎えしたとか。
ファッションを伝える手段。
 
 その頃ロシア・リュスがロシアからエキゾチックな耽美を連れてくる。そんな時代とファッションについて語る本にちょうどポワレのエピソードが登場する。
[rakuten:book:13136712:detail]
 そんな古き良きアール・デコの時代、世の中は世界を巻き込んだ大戦へと向うのに、女性はどんな時でも美に対する情熱は変わらないもの。

 会場へはポケットチーフをお忘れなく。身だしなみを割引に適用するいつもながら心憎い試み。