古九谷展@戸栗美術館

古九谷展 戸栗美術館
陶磁器専門美術館として有名な戸栗美術館では古九谷に焦点を当てた展覧会が開かれている。
ここで新たな発見があった。
実は「古九谷焼=加賀前田藩=石川県」のイメージが強かったが、実は伊万里で生まれた技法だったのだ。戸栗美術館は解説パネルがとてもわかりやすい。また、一品ごとに鏡を置いて裏面も鑑賞できるように工夫されている。まさに陶磁器にとっては幸せな美術館環境だ。
 江戸時代、17世紀初頭に佐賀・有田において誕生した伊万里焼。草創期には青色で文様を描く染付が大半だったが、1640年代頃には、赤・黄・緑・紫などの上絵顔料が新たに導入され、色彩豊かな色絵製品が生み出された。
 これらの初期色絵を「伊万里・古九谷様式」と呼ぶそうだ。
 古九谷様式には、幾何学文様を淡い色調で模したもの、中国絵画の画題を鮮やかな色調で描いたもの、小袖や屏風絵を思わせる意匠を濃い色調であらわしたものなど。中でも目をひくのは、濃厚な色彩を用いた大皿。
 古九谷様式の大皿は、大胆なデザインと色遣い、緻密に描きこまれた縁文様や地文様など。その力に驚かされる。
 古九谷様式と同時代には、染付・銹釉(さびゆう)・瑠璃釉(るりゆう)などの製品も多数つくられました。17世紀中期は色絵の導入だけでなく、成形や焼成技術においても格段の進歩がみられる技術革新の時代そうだ。
 古九谷様式の色絵大皿を中心とした名品、同時代の伊万里焼をあわせて約80点展示されている。
 会場では石川県小松市九谷焼竹隆窯の北村隆さんがお声かけ下さり、ご自身のみならず、ご子息の個展を紹介してもらった。新宿伊勢丹のギャラリーで130点もの新作を発表されて、世界的にも活躍されている。緻密な動物画が九谷焼らしい色彩で彩られる。
 これから開催される東京ステーションギャラリーの展覧会にも顔を出されるそう。2015年8月1日(土)から9月6日(日)まで「交流するやきもの九谷焼の系譜と展開」も開催される。
「交流」という言葉をキーワードに、江戸初期の古九谷から再興九谷、明治期の輸出陶磁や近代の展開を経て、現代にいたるまでの九谷焼の系譜を、各時代を代表する名品によって辿り交流するやきもの、九谷焼の本質に迫る内容だという。

 佐賀県伊万里から陶工が高い技術をもって開発した九谷の色彩や技術に魅了された前田藩。政略結婚で鍋島藩から前田藩に嫁いだものの、その技術は秘密。古九谷様式が出た百年後に京都から陶工を呼び寄せ再興させたという。陶磁器の高い技術は秘密。
また柿右衛門や有田の栄華も、中国が明から清へ変わる混乱期に乗じて日本の陶磁器がヨーロッパに輸出されていったとか。世界の歴史や日本の歴史に翻弄される陶磁器の歴史は不思議なもの。この輸出から西洋の陶磁器が研究されて誕生するのだから奇縁。行き来戻り、そうして技術力は高められていく歴史の不思議。
古九谷から多くを知り出会う一日だった。