ファインバーグコレクション展 江戸絵画の奇跡(後期)@江戸東京博

7月15日まで

 ファインバーグ夫妻が1970年代に出会った南蛮図屏風のポスターがきっかけになり、夫人の姉から本物の日本絵画を鑑賞するべきと案内されたのが、江戸絵画の世界へ。
 江戸絵画の百花繚乱ともいえる幅広い中で、とりわけ愛された琳派から文人画、京都画壇、「奇想派」に浮世絵肉筆画と幅広く堪能できる。

 小林忠先生はじめ国内外の画商目利きと共に、丁寧に集めたコレクションというのは、お人柄も出てくるようで、ファインバーグ夫妻の、江戸絵画に対する美術史的理解もとても素晴らしい。
別冊太陽150 江戸絵画入門 (別冊太陽 日本のこころ 150)


 俵屋宗達《虎図》がお出迎え。細やかな毛並みと大胆な模様と筆で描き分けて絶妙。
 尾形乾山《白百合扇図》雄蕊が胡粉を塗り重ね立体的な百合の姿。清楚な白が美しい。
 酒井抱一《十二か月花鳥図》抱一といえばコレという位人気が高いのだろう。七月のアオガエルが愛らしく。
 池田孤邨《雷神・暴れ馬図》二幅の対比、表装も太鼓柄。
 鈴木其一《山並図小襖》遠景の山並みは、青や緑を用い幾重もの連なりが美しく、近景の迫力ある山肌と対比も良い。
 池玉瀾《風竹図扇面》池大雅の妻、風を受けて尚勢いある竹の葉を描く。
 岡田米山人《蘭亭曲水図》奇怪な岩、SF漫画みたく!
 谷文晁《秋夜名月図》文化十四年仲秋良夜の満月がこのように見事に描かれて残るのは、谷文晁あってこそ。
 円山応挙《鯉亀図風炉先屏風》これは実際に観たかった作品のひとつ。絹を重ねて水紋が拡がるごとく。なかなか粋であり、ちいさき魚の鱗ひとつひとつまで写実的に描き、まさに泳いでいるよう、江戸の水族館。
 森狙仙《炊きに松樹遊猿図》松の樹木と滝との対比、毛並も見事な猿の親子、舌を出している子猿、誰かに似ている。
 伊藤若冲《菊図》菊人間のように、生きているような姿。日本所蔵家との対面で初めて三幅並ぶのだそう。学芸員のチカラをこういう場面で感じる。
 伊藤若冲《松図》80歳でこんなに力強い。すべからく胆力画力ある老絵師。
 葛飾北斎源頼政の鵺退治図》鵺を赤い光線で表現し、筋骨隆々を江戸歌舞伎の如く赤く描く、こちらも胆力画力ある狂老人絵師。

 1970年代、若くして日本美術に関心を持ち丁寧に収集を続けた成果を21世紀里帰りで鑑賞できた。
 ファインバーグ氏の周りには素晴らしい助言者がおり、かつ本人も非常に江戸絵画史を勉強している。
 日本人は自国の文化として、このように説明できるであろうか。まったく海外のコレクションを通じて多くを学ばせてもらった。大変貴重な作品である。必見。