飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-@東京国立博物館

ずっと両面宿難に会いたいと思っていた。
今回は全国のうち、飛騨の円空に焦点を当てた展覧会。
1月12日(土)〜4月7日(日)


東京国立博物館本館では、謹賀新年とともに「飛騨の円空」垂幕がライトアップされた。

ここでは親しみを込めて「円空さん」と呼んでおく。
飛騨高山では「えんくさん」はとても身近な存在だったようだ。
子どもたちが一緒に水遊びしたり、病気の時はそばで見守ってくれていた。
仏像というと伽藍に納められ、近寄りがたき崇拝する存在ではなく
いつもそばにいる、そんな安心感さえ感じられる、穏やかな表情である。
円空さん 日常生活に寄り添う形で円空仏を彫ったのだろうか。

正面特別室5室
足を踏み入れると木々が立ち込める飛騨の山奥に来たような錯覚になる。
飛騨の山に入り込んだような中で、円空仏がすっと光の中で立ち上がるようにおられる。
光の中で 木肌やノミの跡がきわめて鮮やかに感じられる。

樹木を割りその中に見出した姿をノミでカタチとして現わす。
飛騨高山の森が上野に出現する。
円空仏の寺”として知られる飛騨・千光寺。ほぼすべての円空仏61体を一挙に上京する。
「両面宿儺坐像」が江戸時代以来約300年ぶりに寺外で公開されるとのこと。

白洲正子が著書「十一面観音巡礼」で“美しい”と記した「三十三観音立像」
十一面観音巡礼

現在知られている約5000体の円空仏のうち、1500体以上が岐阜県にある。
そのうち飛騨高山には、とりわけ多彩な円空仏が残っているそうだ。
千手観音菩薩立像」(清峰寺)
「柿本人麿坐像」(東山神明神社)仏とはいえないがとても穏やかな良い表情だ。

人びとの求めに応じ、観音様を彫り与えて治癒や祈願に応えたことだろう。
撫でられて艶やかな姿など、幾人の願いを受けた事だろう。

音声ガイドは、井浦新さんのゆったりと静かな語り。
ここで瞑想するにはふさわしい場。
図録は木目のような表紙デザインに三十三観音像たち。
写真も白い地に木目がはっきりわかるように美しい姿を見せる。
図録写真、展覧会場での感激を思い返すことができるよう。

本当はこの空間を永遠に留める写真集があったら素晴らしい事だろう。

円空の旅 (魂の臨床医)円空の旅(魂の臨床医)早坂暁
美術手帖 2013年 02月号 [雑誌]美術手帖 平成25年2月号
円空への旅
円空研究〈4〉特集・飛騨円空研究 飛騨