樽屋タカシ展ReJapan!  ―起点の風景 ―@Art lab TOKYO

樽屋タカシ展ReJapan! ―起点の風景―Art lab TOKYO
2012年5月28日(月)〜6月9日(土) 日休
15〜20時(最終日〜18時)

 丁寧に金箔を重ねた中に現代社会に遊びに来た妖怪画が愛らしい作風だった前回の作風とは全く違う印象を受ける。

 日本伝統色の真珠粉で丁寧な下地を作っていく。その上でスケッチや構想を重ねて作品を作っていくそう。このパールは角度によって印象が異なり、アクリル絵の具やエアブラシとの絶妙な関係もまた絵画の面白さ。
 その伝統色のイメージから描かれるモチーヅや構図が生まれるという。
 飛行機をモチーフにしたのは、そこにものづくりのカタチ、飛翔する姿が、日本復興のシンボルと捉えたことからとの事。

 精密なデッサンなど繰り返して、その機体を丁寧に描く。
樽屋氏は大阪でも大掛かりな天井図をはじめ空間全体を描くようなスケールの大きい仕事をこなしつつ、今回のように緻密な下地を作ってから、そこに日本復興を「飛行機」に託して描いていく作品は、今までの作風と違うようにも感じる。
 しかし、その緻密さは伝統色を真珠粉で表現した上に描かれるもの。
銀座和光の時計台の上空を横切るのは日の丸を冠した日本航空JALの機体

建設途中の東京スカイツリーをまさに横切らんとするのは、全日空ANA787機体。それぞれ建物と機材の質感も構図も良く見るほど面白い。スカイツリーの鉄骨など非常に精緻に描かれて三角から円形へと変化していくさままで見事に描き出す。こんな魅力的な建築中のスカイツリーを描いた画家を他には知らない。

 いずれも日本のつくる力、飛翔する姿を託したものか、頼もしい。
大阪で活躍するPEACHの機体もまた下地と共に魅力的である。

 
 今回は5点妖怪・付喪神シリーズがあって、昭和の懐かしい車種と日本ならではの日常の一品を手にした妖怪・付喪神が登場する。樽屋氏の父の愛車シリーズだそう。日本伝統色ながらなぜか新しく絶妙な色彩なのは、愛車と妖怪の登場ゆえか。ナンバープレートまで凝っている。

 日本の伝統色「黒橡 くろつるばみ」「錆御納戸 さびおなんど」「銀鼠 ぎんねず」「梅染 うめぞめ」「伽羅色 きゃらいろ」「焦香 こがれこう」「山葵色 わさびいろ」「桑染 くわぞめ」「薄雲鼠 うすくもねず」

定本 和の色事典 増補特装版

伝統の色事典をめくりながら、そこからインスピレーションを得て描かれた絵を見直してみたい。また伝統の色事典には特製INDEXがついて、色彩の世界に誘う。

会場には付喪神に捧げる神棚があり、飛行機と管制塔、機材について語りえる知識はないが、飛行機好きにはたまらない展覧会。飛行機をこの構図でトリミングして表現するのかと驚いてしまう。琳派のDNAはこういう感じにあるのだろうか。
樽屋タカシ氏は現代の絵師として活躍して欲しい。妖怪も惹きつけ、会場にもきっと妖怪が潜んでいるはず。


今回画廊の許可を得て写真撮影させて頂いた。樽屋氏の解説も伺え感謝。