松任谷由実×松井冬子 クロストーク@横浜美術館レクチャーホール

 横浜美術館のレクチャーホールにカサブランカ
入口で何故か九段下成山画廊のあの香り。

 会場に遅れて登場したお二人と八柳横浜美術館学芸員
松任谷由実さんは朱色の黄八丈の着物に赤黒のタータンチェックのストールに銀色のクリスマスツリーのブローチ。十八の時に仕立てた着物に黒色半襟を付け替え丈直しての装い。
 松井冬子さんは定番の結髪に白地に金色刺繍、金色の西陣帯の着物姿。
展覧会場を鑑賞してからのトークとなった。
(Y:松任谷由実 F:松井冬子 進行:八柳横浜美術館学芸員

Y 一番印象的だったのは「体の捨て場所」
日本画の不思議 遠近感、平面の不思議さ。
F 真実を追究 リアリティを絵から出力する。デッサンは実物そのものよりも、くずれた方が魅力になる。
Y 日本画の不思議 遠近感、平面の不思議さ。
F 油絵と日本画の見方がミックスして整理するのが難しい。明暗や凹凸。
 アイディアを小さなメモにして、具体的に構成していく。作品の大下図を升目で拡大するが、私は縦横比率を変えたコピー機能で下図を作る。
Y 霊界、見る世界が平行移動、3Dと平面 宇宙もそう。3Dから自由になれる。
Y 画集と色が違う。画材のニュアンス。宝石を砕く、緑青が鮮やか。無傷の標本、ラピスラズリと緑青でキラキラ。
― 現在美術の作品を掛け軸、かなり近くで見られる。「世界中の子供達と友達となれる」。麻紙に金箔、藤花と思ったらスズメバチ
F スズメバチ駆除業者に頼んで段ボールいっぱい死んだ蜂をもらってきた。生きている蜂は黄色いけど、死ぬと黒ずんで丸くなる。
F 心が不自由な少女として描いた
Y 上野千鶴子の書評を読んでどんな人かと思ったが、実際にお会いしたら既にアウトプットし尽して体育会系の健康的な絶世の美女。読売新聞の誌上対談以来、仲良し。
アトリエに遊びに行って5時間くらいいたけど、大きな冷凍庫の中に、烏に食べられた子羊の死体が。
F 熊本市現代美術館での展覧会の際に、阿蘇で 屠殺現場をデッサンさせてもらう。ものすごくショック。死ぬ事がわかっていても、スーパーで見たものがどう殺されていくのが37年間知らなかった。
Y Guiltyに思うこと自体が罪。モンゴルで羊の解体は聖なるもの、食べなくちゃいけない。(食中毒になったけど)
F 食べ物食べていて残酷だと思うのは「子持ちししゃも」…..

Y メス蛇のデッサン、悪趣味でなく、霊界も死もグロテスクと思う動物も「すべて美として捉えている」
F 初めて死を体験したのは小4.庭の黒猫の死体。真実を受け止めなくては、と抱いたら冷たくて重たかった。神社に埋めた。
現在は、死をグロテスクとして排除しがち。綺麗な葬式、火葬に骨壷。
死や痛みについて考える感覚が鈍くなっている。

F 九相図連作。10点 死んで腐り灰になるまで、この数年スターウォーズ的な制作に。
「應声は体を去らない」白雪に見えるのは蛆虫。朝顔、向日葵、メロンといった夏の花。
Y 蛆虫、内臓を含めて美しい。
F 九つの自殺の要因
「浄相の持続」血みどろ、内臓を曝け出し、相手に対する怨念と攻撃。
「転機を繋ぎ合わせる」死こそ休息
― 日本画そのものに力がある
Y 緑青は長寿の源という。日本画家は長生きするね。
― 創作のインスパイアの源は?
Y なんでも貪欲に歩き回る。♪chinese soup 作詞は、京王線電車の揺れと事故による停車がきっかけ。いくつかの要素が結びついて、自分の脳内が嬉しくなる。
― 映像的なイメージの歌が多いが。
Y (多摩美術大学美術学部絵画学科日本画専攻)学生の頃、日本画をかじっていた。音楽中心の生活で制作が追いつかず、加山又造先生が「表現としては一緒、今度アルバムを持っておいで」と言われ、その後は絵を描くように詩を作るように。
加山先生って小猿みたいににこっとしてエロイ。その後は片岡珠子先生に習う。
日本画はすごく細い筆で技巧修練するから、ぼけないのかな。
最後の蜻蛉が「生まれる」は超絶技巧。
F すごく楽しかった。(普段は絹地なので表糸に描く感じ)紙に描くと綺麗な線が出る。細かい線が気持ちよく描ける。
― 絹地に描く技術を身に付けている人は希少。蜻蛉の絵は色紙大、細筆で描く技術をぜひ。テーマや描き方は現代的で独自のもの。グロテスクと思えるものさえ「グロテスクではなく特有の美」
Y 根本にかえって間口の広い受け入れ方。専門知識、審美眼、鑑賞に堪えるテクニック。素晴らしくAttractive。着物を召した美女が幽霊画を描くのだから。
F 一番好きな曲が♪ANNIVERSARY♪
「あなたを愛してる」
Y 「心が透き通る 私には記念日」ある朝神社に行ったら、木漏れ日が綺麗な六角形になっていた。「ありふれた朝でも 今日の日が記念日 今朝の光は無限に届く気がする」
頂点を描くと見るに堪えない。一度出して作詞作曲する。
F 「愛」を作詞作曲するのは、日本画では富士山を描く名画のように藝術のど真ん中。出すのは難しい。生理的なもので「愛している」「信じている」が音律に会った時にこそ効果。
Y この画面で、この部分、この色で、このストローク
F うまくかみあうと良いものが出来る。
Y 鳥肌が立つ、一生制作を頑張りましょう。

会場に 真紅の薔薇で装いした素敵な上野千鶴子先生がいらした。
2009年森美術館「医学と芸術展」で新作「無傷の標本」が出た頃から変わっていくと思っていた。今年2011年「生まれる」で更に新しい表現方法を見出している。
2006年MOTアニュアルから気になっていた作家。上野先生が行っていたように、確実に幸福になっている実力ある現代の日本画家。