杉浦康平 脈動する本@武蔵野美術大学美術館

武蔵野美術大学美術館での展覧会で無料。

杉浦康平のデザイン (平凡社新書)
展示室であの空色のエントランスが迎えてくれると
すっかり杉浦康平の小宇宙空間。
本を見ると、杉浦氏が手掛けた装丁だとすぐわかるが、その多彩ぶり
実際に本を間近で見ると、まったく違う世界が見えてくる。
 装丁された本たちは幸せであったろうと思う。
 写真集や文学全集、百科事典など全体を見る眼と細部を見る眼が
両軸として緻密に計算し尽されているような美。
 フリッカーや小口印刷、見返しや函など隅々にまて杉浦氏の美学が
設計されて施工されていく。
 小口印刷のために、アクロバット的な展示をする本もあって、
まさに動き蠢いている書籍たち。

 憧れの「全宇宙誌」も登場するが、その緻密な世界観をこうやって
立体感を持って見せてくれるのが素晴らしい。
 インタラクティブに本を紹介するシーンもあり、映像で本の中味を
魅せてくれる仕掛けもある。
 東京画廊の図録たちも、これだけで作品になる。
 
 杉浦氏の装丁にはアジア大陸の美意識を感じる作品が多いが、
曼荼羅が 書籍を装丁する美意識にも通じ
杉浦康平氏は書物という小宇宙の建築家ではないかと思った。

 図録はその構成も動的で魅力的で、本という物質のあまねく
魅力を描き再現してくれる。
 この高精密印刷はルーペを使うと文字が読めてしまう
装丁と内容一部ながら両方堪能できる、二倍も三倍も魅力的な
展覧会である。
 これで無料とは。
武蔵野美術大学に杉浦氏の全著作や関係資料が収まるというのは
とても素晴らしい事だと思う。