生誕250年記念展 酒井抱一と江戸琳派の全貌@

会期 2011年10月10日(月・祝)〜 11月13日(日)

 千葉市美術館は5期に分けて、おおよそ前期後期で入れ替え。
姫路から巡回し次には細見美術館に行くが、出品点数はダントツ多い千葉市美術館を見逃してはならぬ。

酒井抱一と江戸琳派の全貌

酒井抱一と江戸琳派の全貌

もっと知りたい酒井抱一―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
抱一と江戸琳派 (琳派美術館)
 入ってすぐには、酒井抱一を取り囲む酒井家の父、兄との姿を浮き彫りにする、心憎い導入部。
 さらに、37歳から出家して自由な身分で活躍された経緯を追う丁寧な展覧会。
 作品ごとに細やかな解説もあり、新出作品であり、かつ個人蔵が多く、ここまで集めて揃えた充実感はすごい。

 琳派展や酒井抱一を巡る展覧会は何度か行っているので、感動の再会が出来た。細見美術館出光美術館宮内庁三の丸尚蔵館根津美術館など名だたる名品も揃う。

 でも驚いたのは、「尻焼猿人」と狂歌を読んでいた頃の作品。山東京伝画に兄弟で登場したり、宿屋飯盛撰により山東京伝喜多川歌麿の画とともに狂歌が収めされているのは今回初めて知る。

 『白蓮図』(153)の清々しい美しさから、『青面金剛図』(143)や『観音大王図』(145)など仏画の世界も非常に新鮮な驚きだった。

 揮毫『流水』もダイナミックで達筆。あの衣紋や枝ぶりなど筆を自由自在に操るし『蚊画賛』のちいさきものに対する視線から風神雷神までスケール感が大きい活躍。

 たくさんある作品で欲しい!と思った逸品は『十二ヶ月花卉図豆画帖』(173) 60mmの小さな円い画帖に描かれ、入れ物まで細やかなこだわり。図録には全12ヶ月が見れて、嬉しかった。
 尾形光琳も着物や器などデザインをプロデュースしたが、抱一も原羊遊斎による蒔絵では見事な意匠が映える。 
 後半は「江戸琳派」の命脈を辿る。鈴木其一や、池田孤邨など幕末期の活躍も素晴らしい。描表装も数多く、だまし絵的な魅力もある。
 この展覧会の充実ぶりは 図録を買わなくては!と決心するほど論文ともに価値あり。求龍堂は図録をちゃんと流通経路に、心憎し。

・・引用・・
酒井抱一(1761-1828)は、譜代大名・酒井雅楽頭家の二男として江戸に生まれました。文芸を重んじる酒井家の家風を受け、若き日より俳諧や書画をたしなみ、二十代で狂歌や浮世絵などの江戸の市井文化にも手を染めた抱一は、三十七歳で出家して自由な立場に身を置きます。そのころから、宗達光琳が京都で築いた琳派様式に傾倒し、江戸後期らしい新たな好みや洗練度を加えた、今日「江戸琳派」と呼ばれる新様式を確立していきます。風流で典雅な花鳥画を得意としながらも、風俗画や仏画、吉祥画や俳画などさまざまな主題や作風に対応しうる柔軟性を持ち、多くの文化人との関わりながら、独自の世界を作り上げました。
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