SAC合同展覧会Shuffle@白金アートコンプレックス

SAC合同展覧会Shuffle@白金アートコンプレックス

2011年4月2日―30日
白金アートコンプレックス(SAC)2周年を記念し、全館合同展覧会「Shuffle | シャッフル」を開催。
展覧会は、美術史家の山下裕二氏をゲストキュレーターに迎え、現代美術から古美術にわたり多種多様な分野を扱う全5フロアが協力、全館で作品を取り混ぜて展示(シャッフル)する画期的な企画。
本展の全体のディレクションをした美術史家山下教授は、日本美術を専門で古美術から現代美術まで深い造詣を持つ。その審美眼が大胆なシャッフルを施すと、この空間では時代を超えて作品が共鳴する見事な企み。最新若手の作家から、古美術の大作まで、その組み合わせの妙。

statement引用 
美術史家 • 明治学院大学教授 山下裕二
まずは、シャッフルする。
このビルの1階から5階まで、シャッフルする。
作家も作品も時代もジャンルも、凝り固まった価値観はすべてシャッフルする。
シャッフルされたありさまを、ただ見る。
そこからすべてがはじまる。
白金アートコンプレックス2周年を期に、全館あげての記念展のキュレーションを依頼された私は、瞬時に「シャッフル」というタイトルを思いつきました。
白金アートコンプレックスの4階には、古美術の「ロンドンギャラリー」のスペースがあります。はじめは古美術のエッセンスが階下の現代美術ギャラリーに降り注ぐようなイメージを考えたのですが、「児玉画廊」「ナンヅカ•アンダーグラウンド」「山本現代」は、いずれも劣らぬ現代美術の強者で、それぞれに強烈な発信力をもった作家がいます。
そこでこの「シャッフル」では、それぞれの価値観をいったんご破算にして、作品自体も行き来するような構成を考えるようになり、各階ごとのテーマを設定しました

【展覧会構成】
1F  児玉画廊|Element (エレメント)
現代美術: 池谷保、関口正浩、和田真由子、貴志真生也(児玉画廊)
山路紘子(NANZUKA UNDERGROUND)
できやよい(山本現代
古美術: 根来盆、杓子 室町時代 他(London Gallery)

根来がこんな台座にあったら、こんなシャフルなら大歓迎。
この展覧会の入口で対面してこのshuffleの意味が理解した。
とても贅沢な展覧会なわけだ。

2F  NANZUKA UNDERGROUND|Chaos(カオス)
現代美術: 貴志真生也(児玉画廊)
田名網敬一、三島章義、中村純代、四谷シモン (NANZUKA UNDERGROUND)
西尾康之、松井えり菜、村山留里子(山本現代
古美術: 金銅蔵王権現立像 平安時代 他 (London Gallery)

本 堀雄二の段ボールという素材で造り上げる仏像。
その絶妙なる空間構成に滞在して惹きつけられる。
カオスな空間とはいえ、人形、アイドル、偶像、仏像 
様々な想いを捧げる像が点在する。

3F  山本現代|Energy(エナジー
現代美術: 八木修平(児玉画廊)
田名網敬一(NANZUKA UNDERGROUND)
小谷元彦西尾康之田中圭介、森靖(山本現代
古美術: 愛染明王像 鎌倉〜南北朝時代(軸)
不動明王像(木彫) 他 (London Gallery)

小谷元彦の血液による映像から愛染明王に至るまで赤き血潮を感じるフロア

4F  London Gallery|Universe(ユニバース)
現代美術: 田中秀和(児玉画廊)
本堀雄二(NANZUKA UNDERGROUND)
西尾康之山本現代
古美術: 長谷川等伯 桃山時代
円山応挙 江戸時代 他(London Gallery)

展示空間の設えがまた見事。
円山応挙初期の作品。たいへん繊細。抽象画を背景にした、地蔵菩薩像。
長谷川等伯描く柳の屏風。居心地よい場となる。

5F  新素材研究所|Heaven(ヘヴン)
現代美術: 杉本博司山口晃、榎本千花俊 他+杉本博司 個人コレクション
古美術: 阿弥陀二十五菩薩来迎図 鎌倉時代(London Gallery)
榊田倫之建築設計事務所
現代美術: 大舩真言
建築: 榊田倫之建築設計事務所  進行中プロジェクト

杉本博司コレクションが並ぶ。土曜のみ公開。「御伽絵草紙」江戸時代。
杉本博司氏勲章コレクション(杉本氏受賞の紫綬褒章も) 
天使のおならは「人体構造解剖図集」(gautier D'agoty)の背中から切り開く解剖図で
濃緑と朱との補色で表装していた。

あまりに可笑しくて笑っていたら、後ろに画伯がいらした。西洋図版が表装で変わるのかと改めて感服。
 山口晃作画の「曽根崎心中」ポスターもあった。杉本文楽は8月公演が決まったようだ。

 隣の設計事務所では、葉山の家の設計模型と大舩真言を事務所に展示する。
榊田倫之氏と大舩真言氏在廊でフランスで現在展示していること、榊田氏はライカ銀座を設計され
ご縁で杉本博司氏とIZU PHOTO MUSUEMを設計された事を伺う。

 この贅沢な展覧会に最終日ながら全てのフロアに伺えて良かった。
今回は大舩真言と本堀雄二作品集を購入して帰る。

 そうしてるんるんと帰り道にlysanderさんに出会ったのだった。
そして、MISA SHIN GALLERY東松照明 新宿騒乱」の場所を教えてもらう。
6月11日まで 
オフィスの方も見せてもらい、沖縄の写真、貴重な昭和の新宿を撮りだした
作品を見せてもらう。エピソードも聞かせていただく。
(「写真家・東松照明 全仕事」 〜6月12日(日)まで名古屋市美術館にて開催中)

 いにしえの日本で大切に崇拝された仏像や残された掛け軸や屏風が、
現代に生きる日本人作家と対峙しても違和感がないのが、キュレーションの巧みで
むしろ共鳴してよい関係であったのが、とても気に入った展覧会だった。
まるで白金の街で、時間の迷子になったような錯覚に陥った。