ジャラパゴス展@TOKYO DESIGNERS WEEK

 今年のTOKYO DESIGNERS WEEKに、現代アートの企画展が初お目見え。「ジャラパゴス展」と名付けられた今回の展覧会。企画・キュレーションを務めるのは、国際的に活躍するアーティストを多く抱える、ミヅマアートギャラリーの三潴末雄氏。

 日本人独特の美学を持ち続け、世界のモノサシで計れない独自の発展を遂げた美術。漫画、アニメ、浮世絵に影響を受けたスーパーフラット的アート、縄文時代から江戸期の鎖国時代までに発酵されたバサラ美学など、フラジャイルに変態し続けるJAPAN ARTを総称し“JALAPAGOS(ジャラパゴス)”と名付けたそう。(造語=JAPAN+GALAPAGOS)

 TDW-ART ジャラパゴス展 強烈な印象が残った。高橋コレクションも多く既知の作品もあるが、この1997-2010年という最近の作品を中心として、黒テントで再構成すると不思議な磁場となる。映像はどうも妙に惹かれてずっと見てしまった。

山口晃「邸内見立て洛中洛外図」「今様遊楽園」「下図」 建築的なフェチ構造的な美と、駄洒落満載の油絵で描く浮世な絵巻
天明屋尚「闘魂」
村上隆 「ルイヴィトンのお花畑」 「スザザザザザ」
■森淳一 「coma」
■指江昌克「moon」
■池田学「領域」「興亡史」st 
近藤聡乃「waiting」
会田誠「灰色の山」 灰色に見えるのは、サラリーマンとおもしき男の群像、人間のみならず会社備品と思われる椅子や機械も一緒に積み重なる。人間の表情は描いていないので、一層不気味でもある。まだ描き続けるのだろうか。美少女ばかり描いていた会田氏を見直す一枚。
西尾康之「素粒の鎧」 1997 この空間では一番古いはずだか、ふるびない強さ。高橋コレクション展でも登場した
■熊澤未来子「恐慌」強烈なパワーがモノクロームゆえ強烈さ倍増。
鴻池朋子「Landmark 再びそこへ戻るために」ミラーボールで乱反射しつつ回転する。また酔いそうな空間。胎内が強調される母体。
会田誠+21st Century Cardboard Guild「MONUMENT FOR NOTHINHG?」
■野田幸江「祈りと制作」
宮永愛子「はるかの眠る舟」 2009年からナフタリンが結晶化し、少しずつ子どものおもちゃやぬいぐるみが朽ちていく記憶の過程。そのプロセスが半透明のナフタリンで香る記憶となっていく。
■森靖「Love me tender Leda and the swan」
名和晃平「Pix celll Trumpet #2」 「Pix cell Gazzele」「Pix cell Shoe(R)#2」 Beadsシリーズ。
近藤聡乃 「てんとう虫のおとむらい」アニメーション 黒と赤のボタと天道虫と少女と。妙に強烈な印象の音楽と映像で引き寄せられる。
田名網敬一+相原信洋「般若心経」アニメーション 般若心経の文字とカラフルな色の波飛沫、その色と文字のセンスがあまりにもあって、般若心経を唱えるような世界。
田名網敬一「爆発の瞬間」「キリコ街の観光」「回転する光線」  実は苦手な作家だったが大胆な筆さばきと、非常に繊細なタッチの赤い斑点の重なりや塗り分けに、計算しつくした画面構成。感服。さすが束芋の師匠。
■ジャンボスズキ「待望の品」
束芋「にっぽんのちっちゃい台所」 高橋コレクション展でも紹介された名品。
鴻池朋子「Lunar breath 月の呼吸」この頭蓋骨は鴻池さんご自身だというエピソードを聞いて、ますます色っぽい美人な骸骨である理由がわかる。
 
 TDW-ART ジャラパゴス展 強烈な印象が残った。これは世界に生き残る強さ。日本が世界から吸収するのをやめて独自の文化を熟成させるときに変化が起きる。遣唐使を止めた平安時代鎖国政策の江戸時代、そして国際社会であるはずがいつの間にか「ひきこもり」体質も育てた平成時代。文化の成熟には重要な過程だ。こうやって黒テントでそのエッセンスを掬い取り、こうやって展開するのは興味深い。