上村松園展@東京国立近代美術館

 上村松園 その気品あり明治女性らしい強い女性であった作家。樋口一葉と同世代でもあった。
美人画」と名高い上村松園は「美人な日本画家」でもあり「美人を描く日本画家」でもある。
 その滑らかな白い肌と、ほんのり紅色の頬と耳、そして指先。きちんと結い上げた髪には美しく精緻な細工の簪や笄。白地に刺繍の半襟に妖艶な赤襦袢。そして着物と帯の
美しい組み合わせ。
 御簾や蚊帳、そして薄物を通して透ける美しさ。一点一点に込められた丁寧な描き込み、迷いない線。
 とにかく、その描きこみに目を見張るばかり。そして同じ構図でも着物の色や柄の変化に注目するのも。表装は絵と合い本当に美しいので、こちらも注目を、決して図録には出て来ない美しい部分。

上村松園全随筆集 青眉抄・青眉抄その後

上村松園全随筆集 青眉抄・青眉抄その後

1章 画家の模索、対象へのあたたかな眼差し
 明治に生まれて、大正と昭和を生きながらも、平安や江戸の文化を大事に描いた方。
今回は年代順に配置されて、その画業の変遷や変化を見ることが出来た。特に初期の天才少女と言われた時代えは非常に興味深い。
 必ず「松園女」と書き入れているところが、あの閉塞的な日本画壇の中でしっかり生きていた気概を感じる。
 葉茶屋を女一つで営む母が才能を認め、画家としての道を後押ししてくれる。その分人並みにいう幸せ、結婚、育児などは全て犠牲となった彼女の思いが25歳から27歳の作品にも感じる。あの頃一番美しく華やかであったろう彼女本来の姿にも重なる。《粧》《浴後美人》
12《四季美人画》から江戸浮世絵などスタイルを感じ、常に清らかな美人へと昇華させている。
《人生の花》(会場では2点比較、図録には3点)
 その画題となる対象を描かないで雰囲気を感じさせる絵が良い。

2章 情念の表出、方向性の転換へ
31《花がたみ》狂女を描くために実際スケッチや写生など繰り返したという。そのスケッチも幾つかあり構想の過程が見られる。
33《焔》下図は見たことがあったが実物は初めて。蜘蛛の糸と藤が緻密に描かれる。髪の毛が入念で丁寧に描き込まれていた。松井冬子《夜盲症》と対比でよく紹介されていたが、こうやって描き込むことで、画家は癒されるのだろうか。
 描かれずにはいられない性、そして「女」として闘った段階から一段と昇華していくよう。

3章-1 円熟と進化 古典に学び古典を超える
39《伊勢大輔》羅馬日本展に出品された逸品。描き込む髪や十二単、その透明感が美しい。 
謡曲に題材を得た作品も多く、その形式美が人間性を昇華させた気品に満ちている。

3章-2 円熟と進化 日々のくらし、母と子の情愛
61《鴛鴦髷》昭和当時には珍しくなった明治流行の髪型。モデルさんに実際に結い上げ丁寧に模写して描くスタイルは他にも見られる。

3章-3 円熟と進化 静止した時間、内面への眼差し
74.83《新蛍》それぞれ同じような構図でありながら、髪型も着物も違う。ひたすら簾の透け感も出しつつ丁寧に描かれる。
もっと知りたい上村松園―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
77《序の舞》(後期9/28-10/17)
上村松園画集
79.80《鼓の音》