ハンス・コパー展@汐留ミュージアム

ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新
パナソニック電工汐留ミュージアム 2010年6月26日(土)〜9月5日(日)
10:00より18:00 休館:月曜日[7月19日、8月9日は開館]、8月12日(木)〜8月16日(月)
一般500円(65歳以上400円)
このミュージアムパナソニック電工ビル4Fにある。
 今回は、金子賢治氏の講演が5階ホールであった。(元東京国立近代美術館工芸館で凄腕の活躍をされ、工芸館の質の高いコレクションは目利きによるもの)ルーシー・リーの作品もかなり収蔵していたよう。そして、ハンス・コパーの作品様式と近代性など、スライドを交えて講義いただく。

ハンス・コパー

ハンス・コパー

  • 作者: トニー・バークス,西マーヤ
  • 出版社/メーカー: 株式会社ヒュース・テン
  • 発売日: 2005/02/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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(トニー・バークスの著作が詳しい)
Modern Pots: Hans Coper, Lucie Rie and Their Contemporaries : The Lisa Sainsbury Collection

(展覧会)
 コパーの生涯と芸術を日本で初めて紹介する大規模な回顧展です。ルーシー・リーとの共同制作で知られるテーブルウェア、1960年前後の工業デザインと建築空間へのアプローチ、古代キクラデス彫刻に刺激を受けたシリーズなど、初期から最晩年に至る創作の全貌を展開します。
兵庫陶芸美術館 2009年9月12日(土)〜11月29日(日)
滋賀県立陶芸の森 陶芸館 2010年3月13日(土)〜6月17日(木)
パナソニック電工汐留ミュージアム 2010年6月26日(土)〜9月5日(日)
岐阜県現代陶芸美術館  2010年9月18日(土)〜11月23日(火)
岩手県立美術館   2010年12月4日(土)〜2011年2月13日(日)

巡回する、兵庫陶芸美術館岐阜県現代陶芸美術館、滋賀県立陶芸の森 陶芸館の所蔵品が出ているが、多くは個人蔵。
 

 この展覧会の入口では、二人の出会いでもある ルーシー・リー工房のオートクチュール陶製ボタン。
ライティングの妙ゆえ、宝石のように輝かしい出会いを演出する。
 ハンス・コパー(1920−1981)の自画像が迎え、子供達のデッサンなど描くコパーも紹介される。そしてリーとの共作であるモーニングセットなどテーブルウェアが登場する。工房の写真に二人の作品が棚に納まっている風景は贅沢。
 彼がリーの工房を離れ独立すると、工業デザインも挑む。コベントリー大聖堂の燭台、音響タイルなど。写真パネルも多用し、わかりやすい。
しかし、「Wall Disk」なる壁はユニーク。壁に丸い穴があり陶製の円形がはめられている。
 それぞれ造形的にとてもユニーク。ろくろで成形した形をいくつか組み合わせて表現する。キクラデス形、あざみ形、砂時計形など。そういう命名もユニークだが、見るのに限る。もう器ではなく、彼の表現方法。同じ形を、土をつかった陶器で作り、またブロンズでも作っている。それぞれの味わいがあるが、緊張感ある完成された成形美は、やはり土が合っていたよう。
 土でも二酸化マンガンと酸化鉄で焼き、研磨してあの黒艶ともいえる表情を作る。
大英博物館時代にずっと鑑賞し続けた中で 古代地中海の石造キクラデス(Cyclades)に強い興味を抱き、様々な形に変容されて表現される。

 20世紀のイギリス陶芸界として、バーナード・リーチルーシー・リーと並び切手デザインにもなっている。
晩年は 筋萎縮性側索硬化症で徐々に身体の自由が利かなくなっていき、また自分の資料を燃してしまったそう。そんな壮絶な少年期、晩年を過ごした彼。しかし、こうやって円熟した陶芸が永遠に残る事で しかし常に高いセンスによって磨き上げられた銅のように輝くのだろうか。

ルーシー・リー

ルーシー・リー

  • 作者: トニー・バークス,西マーヤ,荻矢知子
  • 出版社/メーカー: 株式会社ヒュース・テン
  • 発売日: 2006/07/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 今回の展示は時代やテーマごとにテラコッタやオリーブ色のように落ち着いた壁面と、展示ケースからライティングまで非常に緻密に計算され演出されていた。噂の有機ELパネルは、私が見える範囲では、展示ケース上部に2つ、下部に1つ設置されて、それが器ごとに微妙に変えてあるのが、心憎い演出だった。キクラデス形、あざみ形、ペード形など突起や変形が見られる形の作品は同じようでいて、少しずつ方向を変えて並べており、あらゆく角度を楽しめるようにしてあった。ルーシー・リー展より規模は小さいが、彼女の作品も品良くまとまって展示されている。
 ボウル、花生、ポット、プレートと作品名はあるけれど、器ではない、しかし彫刻ともいえない。
 
 金子賢治氏が指摘するには、外国人は作品を見て「器なら応用芸術、彫刻なら純粋芸術とされ、工芸品は低い価値観で見られていた」と指摘する。実用に耐えない器があっても良いではないか、器の造形と材質から伝える何かが すでにあるのだから。
 興味があればぜひギャラリートークへ。
 この内容で500円とは、企業が運営するとしても破格。ぜひルーシー・リー展に行った人も行かない人も、そのモダニズムは体感すべきおすすめの展覧会だと思う。
 今回は入場と共にドリンクチケット200円をもらい、帰り道に2階に立ち寄りコーヒーブレイク。窓から見える建物が気になって、その後は旧新橋停車場と、カレッタ汐留に立ち寄り、亀の噴水に驚く。
ハンス・コパー展のカタログ。国内初の展覧会、デザイン、写真がすばらしい。
企画協力 ヒュース・テン