やなぎみわ「Lullaby」@rat hole gallery

3月21日まで 12:00から20:00まで

http://www.ratholegallery.com

 孫と婆 白と黒 若と老 美と醜 愛と憎
 椅子と暖炉と小さな扉がついた可愛いドールハウスの中で、愛らしい子守唄が流れ、仮面をつけた孫役が婆役に抱えられ、愛おしそうに愛撫を受ける。その手の優しい様、孫の手がそうっと婆の首から顔に届いた瞬間、もの凄い勢いで格闘して縺れ合う。そうして 孫が優位に立つ逆転の立場となり、孫は婆を抱きかかえて それはそれは愛らしくそうっと愛撫する。それが愛と憎しみが入れ組むように繰り返される。そのうちに格闘は激しくなり、部屋の壁を突き破る。
 そこには屋外の仮設舞台のように裸電球が吊るされ、道路には激しく車が行き交う。二人は睨み合い プロレスのように、また柔道のように決め技をする。そこで優位に立った婆は孫を抱きかかえ、またあの愛撫を続けるのだ。
 次第にフェードアウトする。そして永遠に続いて行くのだろうか。
 激しく鋭敏な刃物で「女性の本質」を切り裂き内臓を引き抜くような手法。
そうだ幻想の世界と現実の世界とを自由に行き来しては、そのあぶれ出る感情のほとぼりが収まるまで永遠に続くのかも。
 佐野洋子さんの母子関係をつい思い出す。強い愛と強い憎しみに支配された深く強い血縁を思う。
シズコさん

2009年に3つの個展。
東京都写真美術館での「My Grandmothers」
ヴェネチア・ビエンナーレ日本館「Windswept Women」
国立国際美術館での「婆々娘々」展
やなぎみわ―マイ・グランドマザーズ
Fairly Tale 老少女綺譚

rat hole galleryの紹介文より引用
 今回、ラットホールギャラリーで発表される新作「Lullaby」は、以前より作家がテーマとしている老女と少女という年代の違う2人の女性が登場する映像作品です。サイズが不釣り合いな閉じられた空間の中で対立しながらも同化し、入り乱れ、絡みあい、縺れ合う2人。やがて閉じられた空間は2人の動きが進むにつれ、変容、崩壊していきます。「Windswept Women」と少なからぬ繋がりを持ったこの作品は、演劇的ともいえる2人の身体的な対峙、家屋や家族的関係性の無意味性などが映像から浮き上がってきます。世代の違う2人はそれぞれの世代を代表するのではなく、アンビバレントな存在であります。それは固定的な女性への価値観を揺るがすための存在ともいえるでしょう。

 やなぎみわの多くの映像作品では、出来事の初めと終わりがあるにもかかわらず、恰も繰りかえされることが当然の様に、現実と想像が入り乱れ、事象もしくは語られる物語が切れずに容赦なく続きます。現実世界に終わりがないように、やなぎによって作り出された我々の分身ともいえる作品内の女性達にも結末が訪れることはなく、ひたすら日常における小さな破壊と創造を繰り返す強さを持ち続けるのです。

 ヴェネチア・ビエンナーレで発表した「Windswept Women」

WINDSWEPT WOMEN:老少女劇団

WINDSWEPT WOMEN:老少女劇団

 
静止した写真に潜む動的なマグマが演劇性をもって映像化されている。巨大なフォトフレームの肖像写真、日本館を包む巨大なテントと、映像作品「The Old Girls' Troupe」上映のため会場内部に設置された小さなテント。サイズ違いのテントとシンクロし、鑑賞者の身体感覚を惑わす。