イタリアの印象派 マッキアイオーリ展@東京都庭園美術館

会 期:2010年1月16日(土)〜3月14日(日)
休館日:第2・第4水曜日(1/27、2/10、2/24、3/10)
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)

  聞きなれない「マッキアイオーリ= Macchiaioli」とは、「マッキア(色班)派」という画家たちの総称だそうだ。いつも好評の洋服割引は、今回は「水玉模様」らしい。
実際見るまでは、「印象派」「水玉」「点描」と誤解していた私。
 正しくは、色のかたまり毎に素早く対象の明暗を捉える技法のこと。ルネッサンス時は下絵を描く際の手法として使われていたが、マッキア派はそれを活用して絵を完成させた。 対象の色彩や明暗を大まかにブロックで捉えて素早く絵の具を置いていく。外光表現などを捉えつつ、パリの印象派の作品とは異なって、形を失わないマッキアイオーリの画家たち。

 日本で「マッキアイオーリ」展が開かれるのは、1979年に伊勢丹美術館で開催されて以来、実に30年ぶり。しかも今回総監修担当する、マッキアイオーリ研究の第一人者である美術史家フランチェスカ・ディーニさんの父上は、30年前の展覧会を監修したピエロ・ディーニ氏。父娘二代のマッキアイオーリ研究家。イタリア本国でも近年再評価され、マッキアイオーリに関する展覧会が行われている。
 広い邸宅旧朝香邸に、トスカーナの眩しい光を受けた風景や、牛の群、優しい眼差しの人々がのんびりと、マッキアで描かれる。
 注目すべき画家は 三人 
ジョヴァンニ・ファットーリ
シルヴェストロ・レーガ
テレマコ・シニョリーニ

 19世紀のイタリアの重要な芸術運動「マッキアイオーリ」を紹介する特別展。今回は初のイタリア外務省とイタリア文化財・文化活動省の共同企画、ほとんどが初公開となる珠玉の作品。エントランスの謝辞の数々にイタリアがどれだけ力を入れているか感じられる。

第一章 カフェ・ミケランジェロのマッキアイオーリ

 カフェ・ミケランジェロ。祖国統一を夢見る熱心な愛国精神で結ばれた若い芸術家たちが1855年頃からフィレンツェのカフェに集まるようになった。
カフェに集うマッキアイオーリ達が描かれたアドリアーノ・チェチョーニによる特徴豊かな風刺画。

 1856年頃、フィレンツェに集った若い画家たちは、アカデミズムからの脱却と新しい芸術の創生を目指た。大胆な斑点(マッキア)を用いた画法から「マッキアイオーリ」と揶揄された彼らは、フランスの「印象派」にも先駆け、自然における光の描写を追求した。 
 当時のイタリアは統一運動(リソルジメント)の渦中。画家の中には統一運動に身を投じる者もいた。
やがて彼らのなかには、生きているこの時代を描く。マッキアイオーリの画家たちは、同時代の独立戦争、日常生活、そして雄大な自然をいきいきと描いた。しかしこの時代の画家は貧困に苦しみ、画家として成功も難しい時代だった。

リソルジメントとは19世紀にイタリアで起こった、イタリア統一を目指した社会運動。芸術家たちも統一運動に加わっていた。

レーガ《ジュゼッペ・ガリバルディの肖像》赤シャツ隊を率いたリソルジメントの英雄

第二章 マッキア(斑点)とリアリズム

アカデミック絵画からの脱却。当時アカデミーの美術教育に行き詰り、旧来の教育に対する不満を持ち、アカデミック絵画に見向きもしなくなった若い芸術家たちの関心は、同時代に起こっていることを主題に絵を描くことや、野外における光をどう表わすかというリアリズム表現であった。

第三章 光の画家たち

トスカーナの田園を愛した。そしてマッキアイオーリの風景画に大きな役割を果たしたのが、批評家にしてコレクターでもあるディエゴ・マルティッリ。リヴォルノに所有するカスティリオンチェッロの広大な土地を芸術家たちに開放した。また、フィレンツェ近くの湿った美しい田園風景が広がるピアジュンティーナもマッキ派が好んで通った。

 田舎の生活を好んで描いたマッキアイオーリの画家たちは、パノラマ風景に適した横長キャンバスや、戸外で持ち運びし易い板を使ったようだ。

第四章 1870年以降のマッキアイーリ

シルヴェストロ・レーガ《母親》
 レーガ自身は家庭的に恵まれなかったが、温かな眼差しを持つ作品だ。子供が母親のドレスの裾を踏んでいる。しかし母の眼差しは優しい。

第五章 トスカーナ自然主義者たち

 「マッキアイオーリ」はトスカーナ周辺に限られた動きでだった。しかし現在においては19世紀イタリア絵画の重要な芸術活動であったと考えられ、近年イタリア国内でも展覧会が続き、国際的な評価も高まってきているという。

 ネーミングは不勉強ゆえ今回知ることばかり。日本語の「印象派」イメージがステレオタイプとなり、誤解されやすいかも。でも今回の展覧会のお陰でイタリア美術史に「マッキアイオーリ」という芸術運動があったこと しっかり記憶する。
 ちなみ 勝手にネーミング「マッキアイオーリ 青春のイタリア トスカーナの光」とでもしようか。洋画の邦訳みたいに原語よりイメージ先行。
 とにかく抜けるように明るい青空と大地、トスカーナの光が美しい印象的な展覧会。 是非 晴れ渡る青空の日に、水玉模様のワンピースを着て のんびりとデートして欲しい。そんな清々しい気持ちになる展覧会だ。

学芸員フロアレクチャー。<各日午後3時30分より1時間程度>
日時:1月21日(木)、2月11日(木)、2月25日(木)、3月11日(木)

■DVD上映『マッキアイオーリ 光の巨匠たち』(約40分)日本語字幕付
中3階多目的スペース