浮世絵百華「これぞ浮世絵!(前期)「―平木コレクションの優品・名品・稀品」@たばこと塩の博物館

前期:11月21日(土) 〜12月13日(日)
   「これぞ浮世絵!―平木コレクションの優品・名品・稀品―」
後期:12月15日(火) 〜 1月11日(月・祝)
   「浮世絵とは何であったか―浮世絵文化史学―」
午前10時〜午後6時(入館締切は午後5時30分まで)

休館日:毎週月曜日(ただし、11月23日と1月11日は開館)、11月24日、12月28日〜1月4日

たばこと塩の博物館 4階 特別展示室
東京都渋谷区神南1−16−8
 渋谷に不似合いな老舗博物館だが今回のポスターは見違えるほど。キラキラ特殊加工で、シブヤらしい。
 さてこの展覧会、前期と後期で全く別展開の展示を行う。入場料300円。前期・後期の連続チケット(500円)、パスポートは(1000円)
これは絶対お得。なぜなら あの平木コレクションの優品名品が揃うから。中央大学と縁の深い平木浮世絵美術館のご協力のもと、平木コレクション所蔵の名品による浮世絵展を。平木コレクションは、重要文化財、重要美術品を数多く含む、世界的に有名な浮世絵コレクション。
(最近、ボストン美術館スポルディングコレクションやギリシャ・マノスコレクションの初公開が続いたが)
今回は、日本が世界に誇れる珠玉ともいえる浮世絵の数々、あまり公開されることのない選りすぐりの優品・名品を揃えて展示。

(1)歌川師宣「若者と娘」もうラブラブ風景。高橋コレクションと違い、穂にほんのり紅はのっていないが、丁寧な手彩色。
(3)懐月堂度繁「立美人」今回のポスターの美女。墨摺絵ながら鮮やかな着物柄と佇まいに眼を見張る。
(4)鳥居清倍「初代市川團十郎の暫」
「しばらく」の声を掛けながら花道に登場。元禄10年(1697)正月に初代團十郎が演ず。市川家にとっても、江戸歌舞伎にとっても重要な十八番。
大田南畝旧蔵で「南畝文庫」の方形朱印。これと同じ旧蔵品「象引」はネルソン・アトキンズ美術館にあるそう。いつか里帰りして対面する企画を期待したい。

(6)鳥居清忠「浮絵劇場図」
エントランスの立体図や図録の表紙にも。4階の大画面でWiiで操作する解説にも登場する。これは見入るほどに面白い仕掛け。
「暫」成田屋の登場!
すぐ右側花道脇でもろ肌脱いで啖呵切るその左腕に三升の刺青。
今の歌舞伎座ではあり得ない、食べて呑み喋り歩き回り喧嘩もする自由奔放な空間だ。二階席には右端に美少女、隣は眉間に皺の女の子。猫も寝ているし、明り取りに障子を外す裏方も描く。もう大衆芸能万歳空間だ。
(9)石川豊信「花下美人」丁寧に手彩色された紅絵。繊細な着物の柄、ほんのり紅染めた頬、美しい意匠化された桜に短冊を描けようとする。(2)
(12)鈴木春信「鷺娘」こればかりは、実物でとくと拝見するしかない。図版で見る「白」はただの白ではない。雪や綿帽子の質感を感じる「きめ出し」、上品な綸子模様を出す「空摺り」。絵師春信はもちろんのこと、彫師、摺師の職人技に感じ入る逸品。
(22)鳥居清長「藤下婦女」藤の花房と藤色の着物の美女。柱絵、ピンナップは何時の時代も永遠なり。
(25喜多川歌麿「高名美人図」

 富雛、おきた、おひさの三大アイドル。この構図は芸能雑誌でも定番型。どれだけ定番になっているかというと...最近でいうとPeach John v.71の表紙
や ジュリアン・オピー”Hannah, Lottie and Ester blinking (vertical)."にも影響を与えた三美人

(26)喜多川歌麿「歌撰戀之部 物思恋」
Ukiyo-e (Themes)
思秋期の人妻 惚れる奴がいても仕方あるまい。
「歌撰戀之部」は、和歌集にみられる部立「恋の部」の主題を描いた揃物浮世絵。「あらはるる恋」「夜毎逢恋」「深く忍ぶ恋」「稀に逢恋」「物思恋」
目を細めて遠くを見遣り、頬にあてた手の表情が繊細な女性の内面まで追求した作品で、歌麿の傑作と。

(30)鳥高斎栄昌「扇屋花扇他所行」籠の中の鳥であった吉原遊女が外出できることを「他所行」という。中央の花扇に視線が行くように配する。着物の華やかなこと。満開の花の下。これを眺める誰もが鼻の下も長くなる。着物柄が多彩で華やか。ファッションプレートのようでもある。
(33)(34)(35)東洲斎写楽 黒雲母の大首絵 剥離もあり残念だが、彼の鋭い観察力は冴え渡る。役者の特徴を誇張して描き分けるのは、似顔絵元祖。
(37)(38)歌川豊国 写楽と対。引き立ての名手。
(40)歌川国政「市川蝦臓の暫」この斬新で見事な構図デザイン 美しい。ボストン美術館のほうが状態は良いが、また再会できて嬉しいエビ様。
(60)十返舎一九識 歌川豊国絵「役者似顔画早稽古」江戸はほんとうにおもしろい。

<講演会>
11月23日(月・祝)「平木コレクションについて ―初期から錦絵誕生まで―」松村真佐子(平木浮世絵美術館学芸員
11月28日((土)「平木コレクションについて ―浮世絵全盛期―」森山悦乃(平木浮世絵美術館学芸員
12月20日(日)「こんな浮世絵・あんな浮世絵 ―おもちゃ絵と風刺画―」湯浅淑子(たばこと塩の博物館学芸員
1月9日(土)「浮世絵師たちと書画会」ロバート・キャンベル東京大学教授)
1月10日(日)「江戸の浮世絵ショップ」鈴木俊幸(中央大学教授)
※いずれも午後2時から1階視聴覚ホールにて開催。当日先着80名。参加費無料(入館料は必要)
※当日、午前10時より整理券を配布。ただし、整理券の配布は1名様につき1枚限り<江戸講座>
12月6日(日)「浮世絵の遠近法〜印象派の人達は何に驚いたのか?!〜」新藤茂(浮世絵研究家)
※午後2時から1階視聴覚ホールにて開催。当日先着80名。参加費無料(入館料は必要)
※当日、午前10時より整理券を配布。ただし、整理券の配布は1名様につき1枚限り<落語>
12月23日(水・祝) 口演:柳家喜多八 講演:新藤茂(浮世絵研究家)
※午後2時から1階視聴覚ホールにて開催。当日先着80名。参加費無料(入館料は必要)
※当日、午前10時より整理券を配布。ただし、整理券の配布は1名様につき1枚限り<展示作品のみどころ解説>
11月27日(金) 12月11日(金) 12月18日(金)※いずれも午後4時から4階特別展示室にて、<シンポジウム>
パネラー:中野三敏 タイモン・スクリーチ ロバート・キャンベル
日時:2010年2月20日(土)午後1時〜午後4時
会場:中央大学駿河台記念館2F※参加費無料、当日先着150名