特別展 根来 negoro ねごろ @大倉集古館

  2009年10月3日(土)〜12月13日(日)
開館時間 10:00−16:30(入館は16:00まで)
休館日 月曜日(10月12日、11月23日


 私はこの古臭い磨り減った漆がいけ好かなかったのであるが、今回考えを改めた。
漆器は好きで毎日のように使い続けているが、まだ「根来」のような風格には出会えない。

 河田貞先生監修の根来・漆絵・鎌倉彫の展覧会。中世期の根来を中心として、漆絵・鎌倉彫も配する。

焼経と根来盆。そして、須田悦弘「夏椿」。
「二月堂 練行衆盤 」鎌倉時代 北村美術館
フクヘン。で「時代を超えたトリコロール」と評している。なるほど しかし一番絵になる空間となっている。

 日本人の美意識と、機能性に富む現代的なフォルムと視覚に訴える根源的な色調のコントラスト。「用の美」使われ、育てられ、美しくなっていく。
 非常に造形として面白い。

 根来といえば瓶子が代表のようにみえるが、たくさんあるようだ。ユニークな意匠美。両口銚子、片口銚子。湯桶、飯桶、菜桶、足付盥(たらい)。
ところどころに配する、掛軸もよく 愛知切は表装は見もの。

「根来」の名は、中世の紀州根来寺一山内で生産された良質な朱漆器から。根来塗は、木の素地に黒漆を下塗りし、その上に朱漆を上塗りする。
 日用品として使い続けるうちに、やがて上塗りの朱漆が擦れ、下塗りの黒漆が露見する。「その景色と塗り肌の味わいが見事だということで、後の茶人などにたいそう愛された。」
和塾世話人より以下引用)
根来塗は、木の素地に黒漆を下塗りし、その上に朱漆を上塗りしている。日用品として使いつづけると、やがて上塗りの朱漆が部分的に擦れ、下塗りの黒漆が露見する。その景色と塗り肌の味わいが見事だということで、後の茶人などにたいそう愛された。使い込まれて朱と黒の意図せぬ文様が浮き出た器は、確かに美しい。侘び寂(ワビサビ)の美学と見事に整合しています。その美しさは千変万化。しかも、日々用いられることによって始めて現れる美しさ。しっかりとつくられた良質な漆器は、数年の使用くらいで摩滅するような塗りではない。だから根来の美というのは、数百年の歳月がつくり出した味わいなのです。造形美と歳月がつくり出した味わい。
もうひとつ、根来には塗肌の美ほど着目されませんが、造形の美しさもある。使いやすく機能性に富んだ用の美。美しいからこそ使われつづける。より使いやすく、しかもより美しく仕上げようとする作者・工人の美意識が充満しています。鑑賞のための美ではなく、機能性を逸脱するような過多な装飾もない。単純明快な造形美。海外での人気も頷けるところです。
河田貞先生によると「根来といわれる朱漆器の特質を端的にいえば、用に耐え得る堅牢な作行のものであることに加え、素地の造形美、上塗りの朱漆と下塗りの黒漆による塗肌が醸し出す深い味わいの三点が充足されてこそ生命感が漲ることになる」ということです。

海外で人気なのもわかる今なら。

 しかし大倉集古館が館内展示でこんなに工夫されたのは初めて。いつもと違う館内に驚く。暗く静謐な空間は変わらないが、右半面は静かな鼠利休のごとき壁面で構成される。そして井草を敷き詰め畳を思わせる展示、また黒ラシャを敷き、漆の朱色を引き立てるような展示。今回は、出品目録も図録もなかったのは残念(鋭意製作中か?)なにより本物の根来の存在感に対峙する楽しさがある。
 11月21日14時からギャラリートークがあるよう。
なぜ、日本はジャパンと呼ばれたか―漆の美学と日本のかたち