ベルギー幻想美術館@bunkamuraザ・ミュージアム

 今回は姫路市立美術館所蔵の作品から構成するが、版画が充実している。特に図録は出ないが、姫路市立美術館図録(1000円)と、リーフレット(400円)がある。

第1章 世紀末の幻想 象徴主義の画家たち
 クノップフ、デルヴィル、ファブリなど。

第2章 魔性の系譜 フェルシアン・ロップス
頽廃的でエログロの世界。それを反映してどぎつい悪趣味な紫色の地。版画のテイストが霞む。ボードレールに評価される。パリでは発禁扱いも、国際都市か、ブリュッセルなら実現できた。

第3章 幻視者の独白 ジェームズ・アンソール
ボッシュへのオマージュが描かれる。「マンガ的」な表情が満載だ。《キリストの生涯》リトグラフ

第4章 超現実の戯れ ルネ・マグリット
《ジョルジュット》リトグラフエッチング版画作品多し。
《魅せられた領域》円形室内を囲むような版画連作。背景が繋がり、彼特有のモティーフが登場する。
第5章 優美な白昼夢 ポール・デルヴォー
《最後の美しい日々》挿絵とはいえ、絵だけでも。甘いローズ色の背景。移動式遊園地の人形ジュリエットとキリコの影響を指摘。鉄道、女性
 
 Bunkamuraは展覧会ごとに壁もソファーも徹底して変える徹底ぶり。
今回はパープルレッドに近い色彩で統一している。ソファーはゴブラン織。マグリットのコーナーのみ黒。較的紫のトーンのバリエーションだが、第2章はどぎつく版画の主題を意図したせいかもしれないが、折角の淡い色彩の版画がかすむ色彩で目が疲れる。その視覚の魔性を狙ったとしたら強烈だ。 
 章ごとに凝ったコピーがつくが、それぞれテーマを感じさせる。展示説明が作品解説というより「つぶやき」っぽいのも面白い。
ベルギー王国そのものが幻想的な世界を描く場なのか、ボッシュブリューゲルルーベンスやファンダイクなど輩出する。ベルギー王立美術館コレクションによる「近代絵画のあゆみ」とは全く別文脈での構成。
 ミュージアムショップにはベルギーにちなんだお菓子、ここの関連図書はいつも品そろえが面白くて、今回もベルギー画家たちの画集 象徴主義からムンクへ、マグリットからシュルレアリスム宣言。悪女から悪の華へ。世紀末からウィーンへ。渋澤龍彦、そして「怖い絵」シリーズへと様々に絡み合う茨の茂みのように幻想の書物へ森が誘う。

ポール・デルヴォー 〔骰子の7の目 シュルレアリスムと画家叢書〕 (シュルレアリスムと画家叢書 骰子の7の目)