新・根津美術館展―国宝那智瀧図と自然の造形@根津美術館

開館時間 :午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 :毎週月曜日(祝日の場合は翌日)
入館料金 :特別展 一般1200円(1000円) 学生1000円(800円)
アクセス :地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線「表参道駅」下車
A5出口より徒歩8分/B3出口(エレベーター)より徒歩10分
都バス渋88 渋谷〜新橋駅前行 南青山6丁目下車 徒歩5分
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ロゴデザインPeter Schmidt

設計 隈研吾

エントランスまでのアプローチ 期待が高まる。


最新鋭の技術で魅せる東洋の美
匠レポート | e-THEORiA.com
「新・根津美術館展」と題する新創記念特別展。
展示室1(絵画)「新・根津美術館展 国宝那智瀧図と自然の造形」
展示室2(書画)「手を競うー王朝びとの筆のあと」「古筆切」
ホール〜展示室3「仏教彫刻の魅力」
中国の石彫や日本の木彫など、仏教彫刻。
展示室4(青銅器)「古代中国の青銅器」室内で青銅器が浮かび上がるような照明と美しいケース。
展示室5「吉祥ー明清の漆工と陶磁」華やかな吉祥文様をまとう工芸品
展示室6「初陣茶会」初代根津嘉一郎大正7年(1918)に自邸で初開催の茶会「初陣茶会」を再現。茶室ケース。
特別ケース「宝飾時計」清朝皇帝が愛した華麗な装飾時計

 この美術館は展示ケースのガラスが見えない程、照明が静かに引き立てる。展示方法が巧いと思い確認したところ、サントリー美術館のあの空間を実現した二人の存在があった。豊久将三(照明)、山内佳弘(展示ケースの開発制作 コクヨファニチャー株式会社)
e-THEORiA ミュージアムレポート VOL.17 には美しい画像と共にその最新美が紹介されている。試行錯誤の展示ケースの数半端でない。こだわりぬいた成果が本当に見事。
これからの展覧会で どう展示が変化するか興味深い。同館の所蔵作品をテーマ別に紹介する8部構成の企画展示を1年かけて行うそう。
カフェ「NEZUCAFE」(10時〜17時)四方をガラスに囲まれ、天井に和紙を思わせる間接的なあかり。

 「開館70周年を2011年に控え ますますの努力を重ねて、愛していただける美術館にしていきたい」と語る西田副館長のコメント。
 愛されますとも、この美術館。これほど、展示ケースと照明に配慮された上に名品そろい。ただし小さなお子様はまだまだ。走り回るとガラスが見えなくてぶつかりそう。
大人になったら出掛けたい、美術館でのマナーを会得したら、ここでデビューできる そんな最高にオトナ度が高い上質な美術館。庭散策も思えば贅沢な場。
展示品に鎮座する姫君を陰日なたと、静かにお守りしているような建物、照明と展示ケースは名執事の印象。

 今回は有名な「弐代目青い日記帳」管理人Tak氏の紹介で内覧会に伺えた。丁寧なおもてなしに感謝したい。撮影は主催者に特別に許可して頂いた。心のカメラでじっくり空間を堪能することが、この上ない至福である。
 
根津美術館にこの技術力。ミュージアムレポート VOL.17から引用する。
 根津美術館は、東武鉄道の社長などを務めた実業家、初代根津嘉一郎氏の収集品を展示するため、根津氏の私邸跡に作られたプライベート美術。収蔵品の分野は、日本・東洋の古美術を中心に、絵画・書蹟・彫刻・陶磁・漆工など多岐にわたる。国宝7件、重要文化財87件、重要美術品96件を含む、約7000件の所蔵品。私立美術館としては量質ともに国内トップクラス。新・根津美術館では、これら優品の数々を最新の技術を駆使した展示装置や照明で鑑賞することができる。
[展示室1・展示室2]
 絵画・書蹟・彫刻・陶磁・漆工など幅広い分野にわたる根津嘉一郎氏のコレクション。根津美術館の壁面展示ケースは、展示品の大きさや素材に合わせた展示ができるよう、視野角調整パネルや背面可動パネルが採用されている。
 さらに、根津美術館の壁面展示ケースは、横幅4.5mの大きなガラスが均等に並んでおり、継ぎ目がほとんど気にならない。しかも、展示替えのための出入口すら見つからない。これは、作品の鑑賞に邪魔となるものを徹底的に隠し排除した結果だとか。


[展示室3]
大型の木像を展示する木彫展示室は、床から天井までの全面ガラス。天井から展示ケース壁面は、斜めに弧を描き、照明をあてるとやわらかく光がまわり、不思議な奥行き感を醸し出す。

[展示室4・展示室5]
2階の青銅器の展示室。グレー調の空間に並ぶ中国古代の青銅器の独特の質感が印象的。青銅器を世界一美しく見せるため、室内の照明を落とし、展示品が浮かび上がるように工夫した。この部屋の展示ケースは、展示品に合わせて形、大きさが決められている。

部屋の中央の3つの展示ケースが組み合わさったような独特の形状をした多面体の展示ケースは、重要文化財饕餮文方(とうてつもんほうか)を、上から横から立体的に違いを見せるために作られた専用の展示ケース。この形に決まるまでに、何度も実物大の模型を作り、見え方を検証したという。
根津美術館の独立型展示ケースは上部に照明装置が付いている。これは、蒔絵の手箱や陶磁器の壺など日本や東洋の美術品は、天井からスポットライトで強い光をあてるよりも、和ろうそくから太陽の光まで表現できるLEDライトの繊細な光で近い位置からほんのりと照らすほうが、作品が美しく見えるためである。上部の光源部分はアルミルーバーで覆い、LEDの光の粒が作品に映りこまないような配慮もおこなっている。
また、これら根津美術館の独立型展示ケースで特筆すべきは、上部照明の電源をどこから引いているかわからない構造になっていることだ。「鑑賞の邪魔になるものは徹底的に省く」という考えのもと、技術を研ぎ澄ました結果、業界初の画期的なアイデアで電源の取り込み口を隠すことに成功した。
[展示室6]
数奇屋大工が本物の茶室をしつらえた展示ケース。旧収蔵庫の木材を生かし、吉野杉や聚楽土を用いた。炉の中には灰も入る。自然光が障子越しに差し込むような照明で、静謐な雰囲気を持つ空間。また、茶室の横から差し込む光を表現するため、斜め上に照明装置を設置。床柱にもLED照明を組み込み、より自然に近い光で鑑賞できるように考えられている。
根津美術館全体では、約8万個のLEDライトが使われ、作品に合わせた最適な展示がおこなわれる。