美しの和紙 ―天平の昔から未来へ―@サントリー美術館

会期:2009年9月19日(土)〜11月3日(火・祝)
サントリー美術館名物の展示替えは、6分割している。出品リスト
9月19日〜9月28日 9月30日〜10月5日 10月7日〜12日 10月14日〜19日 10月21日〜25日 10月28日〜11月3日
多くは類似作品を差し替えだが、最古の戸籍断簡(702年)は10月14日から。国宝「歌仙歌合」(27)(和泉市久保惣記念美術館蔵)は10月21日から。10月5日までの前半のうちに一度訪れると良いかと思う。

                                                                                                                                                              • -

 和紙に対する愛が感じられる展覧会。和紙が、文字や絵を表わす素材、工芸品や美術の題材、明かりを包む素材、着物の織糸となり、多様な「和紙」が現れる。和紙は日本文化と共に常に生きている歴史と美意識を感じる
ほとんどは洋紙にとって変わったが、日本画や書道など相変わらぬ和紙は欠くべからざる存在。そして襖や障子など。また書籍の補修や保存という面でも和紙ほど優秀な紙は世界に存在しない。
 文化を伝達するタイムマシンであると同時に、神仏への祈るカタチ、くらしのデザインへ溶け込む存在。
 第一章、奈良時代から平安、鎌倉の写経や和歌断簡など貴重な作品が登場する。第二章は 神仏に捧げる伝統美は現代へ続く。東大寺修二会で使う「造り花」「紙衣」や石清水八幡宮「供花神饌」など愛らしい造形。第三章は紙職人の活躍と、芹沢圭介の「紙漉讃」。現代の紙に関わる名工が登場する。第四章は、暮らしに関わる和紙が、家庭用品や紙衣といった素材から、和紙から派生した意匠の工芸品の数々。「和紙」というキーワードでこんなにも豊かな展示会が出来るのは、「和紙」の魅力ゆえか。
 ミュージアムショップも楽しいが、以下のような和紙に関するお店や博物館もおすすめ。

小津和紙博物舗日本橋)1階の紙漉き体験が出来る。開設も丁寧で楽しい!チャポチャポと鹿の足音のように。体験の際には、貴重な全国名産の和紙や博物館の内容など紹介してもらえる。
和紙の榛原(日本橋)  定番中の定番。ここで麗しい和紙が見つかる。
紙の博物館飛鳥山) 博物館は充実している
小川町和紙の里(埼玉県)  広い敷地で紙漉き体験など出来る。行く甲斐がある。

【展示構成】
第一章 和紙の成り立ちと展開
 奈良時代から鎌倉時代まで 大陸伝来製法をもとに、日本に自生する楮や雁皮などを用い、和紙が作り出される。それは行政国家整備や仏教をを広める写経と重なる。
日本各地で和紙が作られ、素材や製法が向上する。漉きの素朴な和紙から、美麗な装飾技法が考え出され、豊かに展開する。

第二章 祈りの造形 神仏に捧げる造形、折り畳むことで強くしなやか和紙の特質が活かされて、日本人独自の造形感覚が発揮されてきた。イサム・ノグチ作の「2mのあかり」

第三章 和紙の伝統を繋ぐ人々 中世より近世へと時代を経るごとに、和紙の種類は多様化し、また広い階層に浸透して用いられる。紙漉をはじめとして和紙に関係する多くの職人のすがたが、歌合絵巻や近世の風俗画にみることが出来る。、紙漉の製法や和紙の産地を伝える本が出版されていた。

第四章 暮らしを彩る和紙の世界 日本の気候風土に育まれた和紙は、日本の暮らしを支える。住まいの温度湿度の調節をする襖や障子などの建具、暖かな光をもたらす提灯や行灯、軽さとぬくもりで身体を包む紙衣や紙布などに活用されてきた。さらに実用的なものだけでなく、熨斗などの折形や遊戯折紙など、日本人の暮らしに潤いをもたらすカタチ。

和紙のある美しい暮らし (SEIBIDO MOOK)