クリムト・シーレ ウィーン世紀末展@日本橋高島屋
10月12日(月・祝)まで
午前10時〜午後7時30分(8時閉場) 最終日は午後5時半
・文中の(数字)は、カタログNo.を付す。
午後6時過ぎると半額になる嬉しい展覧会場。
ウィーンの作品は額縁もたっぷり味わえる。金の装飾も
入り口すぐに音声ガイドもある、展示リストはお願いするともらえる。非常に細かいフォントだが、初めて会うオーストリアの画家達の名前を知るのに助かる。
「世紀末」という言葉には、エロスとタナトスの香りがする。退廃的で甘美な死臭。読売新聞が「クリムトの夢 シーレの現実」とコピーしたのが面白い。シーレの活躍が1910年代だが、その「世紀末」とう名の芳香に相応しい夭折の画家であろう。
シーレの自画像のポスターは強烈で、クリムトの「パラス・アテナ」と良い勝負だ。
ポスターより断然実際の油彩が良いのは、ゴッホと同じ。色の盛り上がりなど微妙なニュアンスは実物を見るしかない。シーレの自画像もあるが、アントン・ペシュカとオッペンハイマーが描いた「エゴン・シーレ」と比較するのも。
第1章 装飾美術と風景画
入ってすぐにレビーツキ「モザイクフリーズ下図」(25)(26)の華麗な金地に金屏風を連想した。
カノン「若い男」はウィーン少年合唱団のボーイ似。
ハンス・マカルトは「子供たちの絵」(6)を描き、シャルルモントが「ハンス・マカルトのアトリエの静物」(15)を描く。
エグナー「山ツツジ」(16)
ヴィルダ「ランナーとシュトラウス」(20).ヴァイオリニストで作曲家の二人を流麗に描いている。
グラニッチュ「イーゼルの前の自画像」(29)とフェオドローヴナ・リース「自画像」(30) 自分を描く女流画家の活躍。
カール・ツェーヴィ「仲人(による結婚の打診)」(21)ヒヤシンスは寓意だろうか。
第2章 グスタフ・クリムト
深紅の背景 額縁は絵と合わせて味わう。
クリムトは全部で8点、うち油彩は4点。水彩やチョーク、鉛筆もある。
「寓話」狐と鶴、獅子と鼠・「牧歌」、「愛」三連祭壇画のように左右に金地の草花。「パラス・アテナ」ギリシャ神話の戦いの女神。
弟、エルンスト・クリムト「宝石商」(52)「祈る子供たち」(53)
第3章 エゴン・シーレ
深緑の背景。自画像やブロンズ像とも較べると面白い。
シーレ作品19点、うち油彩4点。鉛筆、チョークのデッサンも、リトグラフやドライポイントの線描も 鋭利なナイフのようだ。
アントン・ペシュカの「エゴン・シーレの肖像」(54)で多彩に渦巻く。「意地悪女」(58)は16歳の妹シーレがモデル。「ヒマワリ」(55)
「自画像」(65)「アルトゥール・レスラー」(68)「イーダ・レスラー」(69)
第4章 分離派とウィーン工房
分離派展“日本特集”ポスター(79)様々な形で浮世絵が影響を与えた時代か。
カール・モル、コロ・モーザー。ウィーン工房のハガキなど ウィーン世紀末を彩る。
第5章 自然主義と表現主義
カルパリデス「秋の風景」(120)湖と空
オスカー・ココシュカ(111)(113)(114)はグスタフ・マーラー(99)の未亡人アルマの恋人でもあった。ちなみにアルマは エミール・ヤーコプ・シンドラー(9)の娘であり、カール・モル(85)(88)の養娘でもある。マーラーと死別、グロピウスと結婚離別、さらに文学者ヴェルフェルと結婚。ウィーンの花だった。
アルマ・マーラー―ウィーン式恋愛術 (女たちの世紀末、女たちの20世紀)
ゲルシュトル(134)(135)は 作曲家でもあるシェーンベルグの妻「マティルダ」(128)との不倫に破れ25歳でピストル自殺した。
最後にマックス・オッペンハイマーの親交「エゴン・シーレ」(138)
「イーダ・レスラー」もミューズとなり、シーレ(67)とファイスタウアー(142)がそれぞれ描く。
世紀末ウィーンの人間模様も想いつつ鑑賞した。彼らは絵の中で生き続ける。
人間模様は装飾の如く複雑、芸術家同士の交流や恋愛沙汰やら、リアルな人間関係図が展覧会場でも描けるのが凄い。狙っているか。
デパート美術館の充実ぶり。日本橋高島屋はショップが非常に充実している。
ポストカードはクリムトの油彩「愛」、色鉛筆による「画家カール・モルの娘マリー・モル」が 高島屋マダムローズには人気のようだ。
この展覧会をはじめ 「ハプスブルク」そして、「ベルギー幻想」「アールヌーヴォー」の展覧会が世紀末から20世紀初頭にかけた芸術の流れを立体的に交差して時代を浮き彫りにする秋が訪れるようだ。
以下に巡回予定 図録によれば展示会場によって内容は少し変わるよう。
大阪 21年10月24日(土)〜12月23日(祝) サントリーミュージアム[天保山]
福岡 22年1月2日(土)〜2月28日(日) 北九州市立美術館