中国の陶俑@出光美術館

 これは展覧会名に躊躇していたが、非常にユニークで贅沢な展示内容。これは行くべし。

 実用ではなく、神殿や墓に供えるために作られる器――“明器”
漢時代の灰陶加彩や唐時代の三彩などは、当時の優れた最高の技術が結集され生前から準備されたものだそう
中国本土で漢唐時代当時の王侯・貴族が厚葬される際に副葬された「俑」つまり家屋や調度・器物、従者や家畜などの模型。
この活き活きとした表情は、つい近所のおばさん、お隣のお姉さん、陽気なおじさん..と思わずにやけてしまうような楽しい表情である。
そして動物たちの今にも動き出しそうな様子を楽しめる。死者に対して丁寧に作られたのは、その豊かな表情やしぐさから感じられる。
 漢時代の俑の表情や、唐時代の曲線美、俑の造形力、
 
◆際立つ個性─漢時代の陶俑
(7) 〔緑釉楼閣〕この不安定なまでに高層でかつ屋根に鶏と弓を持つ兵か。
(8)ヘビもカエルも、狗や猪、狐、鹿などが元気いっぱいに飛び回っている

◆苛烈な時代の形象─南北朝〜隋時代の陶俑

◆洗練されたやきもの─俑の周辺の副葬器物
(74)龍の手足の凄まじく鋭い様が
(68) (69)この姿見たことある..邪鬼を踏みつける四天王、いやいやアメリカンヒーローに似ている。元祖漫画かと思うくらい。

◆写実的形象─唐時代の人物俑
 (28)青い小鳥を手にした青色衣装の女性、小鳥の姿も細やか。
(32)(33)この女性たちの衣装を三彩で見事なデザイン、歌姫は死者の傍で魅惑的な声と姿で歌い魅了していたのでは。
男子 二人の顔の特徴の違い、しぐさを比べると面白い。藍が美しい。
(43)この顔は胡人!ペルシア由来の顔 なんとも白磁胡人 今でもラテン地域で作られていそうな姿。
(34)(35)女子楽坊のように可愛らしい女性の楽隊。

シルクロード交流の記憶─唐時代の駱駝・馬
ここ圧巻。駱駝や馬の雄姿もさりながら、三彩によって様々に見事。
(64)藍釉獅子 キュート!愛らしいという印象だ。
(67)三彩猿笛

◆洗練されたやきもの─俑の周辺の副葬器物
副葬される器はままごとのように飾るもの。されば美しい。
(106)(107)練手枕 練り出した文様が見事なまでに美しさ。

 唐三彩という美しいやきものは 明器であったことを今更ながら知る。
 古代エジプトで来世のために死者を手厚く葬ったように、中国でも王や豪族の墓に副葬品を備え死後の世界へと見送った。
漢字の由来を白川静著作で読むと、大変残虐な古代中国であったが、生身の人間でなく、従者や楽人が愛らしい人俑となって副葬されていたこと。それは未来永劫中国大陸の大地で主人と共に死者の世界で永らえお守りするはずだったのが、ご縁で出光コレクションとなり、こうやってライトを浴びている姿を鑑賞できるのは、とても想像さえできない。
 ブリヂストン美術館松岡美術館のエジプトのミイラ棺もよもや極東異国の地で大事に美術として守られていると思っていなかっただろう。

陶俑 (中国の陶磁)