美しきアジアの玉手箱 シアトル美術館所蔵 日本・東洋美術名品展@サントリー美術館

2009年7月25日(土)〜9月6日(日)
※会期中、展示替え有

開館時間:〔日・月〕10:00〜18:00 〔水〜土〕

シアトル美術館(Seattle Art Museum

その後、以下の美術館へ巡回。
神戸市立博物館 2009年9月19日−12月6日      
山梨県立美術館 2009年12月23日−2010年2月28日 
MOA美術館 2010年3月13日−5月9日      
福岡市美術館 2010年5月23日−7月19日    

サントリー美術館は、海外に点在散逸する日本美術を里帰りさせ、兄弟親子の涙の対面を果たす役割を担うのが巧い。屏風、蒔絵など過去の美術館展でも海外での調査で生き別れた美術品が、この会場での抱擁を交わす。
今回も名高い「鹿下絵和歌巻」が集う。残念ながら会場の都合もあり、断簡となってしまったように、会期をずらしての展示となっている。
シアトル美術館のサイトでは大変優れた配慮で、この「鹿下絵和歌巻」をスクロールして鑑賞でき、さらには和歌を読み下し文、意訳を日本語と英語で表示することが出来る。これぞデジタル化の魅力である。
シアトル美術館は1933年、美術コレクターであった地質学者のリチャード・E・フラー博士によって設立されたとか。さすが地質学者。地上でなく地中に潜む美を見出したのか。
 
 日本美術史をなぞる様にそれぞれの時代の良品を揃える。すべて国宝級、時代が時代とはいえ、惜しいものだが、逆に海外に渡ることで日本の美術が広く知れ渡り、日本の環境とは異なるゆえの保存環境という利点もある。日本人が意識しなかった美意識が、海外の美術館によって評価されるのも良いことだったのかもしれない。国宝ではなく、既に世界の美しき宝であるから。

10. 「浦島蒔絵手箱」
これが美術館のタイトルのきっかけか。細部にわたる美意識がちりばめられ、端正な亀甲文に浦島太郎を金蒔絵で描く、心憎い意匠。
16「織部片輪車屋文四方鉢」意匠が面白い
25「地獄草紙断簡」鎌倉時代
34「駿牛図」鎌倉時代 黒一色ではない、筋肉隆々な雄姿。よほど自慢だったのでは。
43「竹に芥子図」狩野重信 様々な芥子の花、ヒメタケなど自由な画材

46「鹿下絵和歌巻」本阿弥光悦俵屋宗達 鹿の動きも良いし、筆の運びも飛び跳ねる様。
42「烏図」屏風 飛ぶ、啼く、休む、食べる 黒地に丁寧に羽根、目が描きこまれた群像図
51「五美人図」北斎 身分も世代も異なる女性がずらり 北斎ならではの計算された配置
52「蜻蛉・蝶図」70名の詩画 豊かなサロンであったろう 江戸博物学の全盛か
53「寒林野行図」与謝蕪村 連なる山々を様々な視点から描き、旅人を見つめる

74「玳玻天目茶碗」 南宋時代
72「黄釉絞胎碗」 北宋時代
77「紅釉瓶」艶やかなる牛血紅、フォルムに合わせてアクリル板で固定している展示。

78「粉彩梅樹椿文盤」 清時代 
79「珊瑚紅釉金再御製詩文菊花盤」
81「墨梅図」楊輝 旅立つ朋友に送る梅
98「インドラ坐像」ネパールのマッラ王朝 魅惑を秘めた表情のヒンドゥー教の雷霆神(仏教では帝釈天へ)
  
 シアトル美術館の厳格な監修か 展示ケース個々に温度管理展示手法などいつもに増して丁寧な配慮。地震大国なのを考慮してか厳重な展示手法となっている。しかし、戦時戦中から日本美術品が海外に旅たったのも、こうやって大掛かりな里帰りが果たせたのも、時代を経て邂逅できるのも、それを対峙し鑑賞できるのも また運命であろうか。