「STORY OF・・・」カルティエ クリエイション〜めぐり逢う美の記憶@東京国立博物館表慶館

 
開館時間:午前9時30分→午後5時 (入館は閉館の30分前まで)
(土・日・祝日は午後6時まで、金曜日は午後8時まで開館)
STORY OF・・・

今回は宝飾カルティエは、世界的に活躍するデザイナー吉岡徳仁監修による展覧会を表慶館で開催した。Cartierの輝きが引き立つ。「人の記憶と想像の世界で物語が生み出される」

 エントランスから、創造のインスピレーションは古代エジプトから中国や日本まで。2階に上がると、大きなショーケースの上部に過去を回想するように映像が。ガラス四面どこを見ても同じ。まるでミステリークロックを模したよう。インドの大富豪マハラジャとの出会い。インドの宝飾デザインを取り込んだもの。そして、カルティエとの出会いは、王室から大富豪、友人の飛行家Santos(サントス)、そして映画女優モナコ公妃グレイスケリー、それぞれの物語がやはり映像と共に映し出される。1904年からの追憶と豊富な写真や映像と共に紹介する方法。向こう側の展示や人影さえも感じる中で、過去の映像と共に引き立てるライティングで物語が始まる。
 パンテール(豹)、プラチナの優美な曲線、ダイヤモンドとオニキス、腕時計、金のシガレットケース、トリニティ、ラブブレスレット、そしてミステリークロック。それらの物語の語りが巧い。

 この展覧会の紹介はいろんな雑誌や媒体で見られるが、BRUTUSでは1頁にひとつの物語を丁寧に紹介している。Penはまるごと吉岡徳仁特集である。
Pen (ペン) 2009年 5/15号 [雑誌]
みえないかたち  ~感覚をデザインする
 展覧会の様子はこちらが詳しい。

 図録は日英併記でやはりデザインが美しい図録。実際にライティングで七色に反射しながら輝くダイヤには敵わない。

 個人的に気になるのは、エントランス右曲がってすぐはコの字型の展示ケースゆえ吹き溜まりのように人が重なる点。ミステリークロックのように透明の中で針が時を刻むように映像も流れていくが、向こう側の作品と鑑賞する人影まで写りこんでしまう。それは計算された記憶の仕掛けかもしれないが、複数の視覚記憶となってしまうかも。出品目録は驚くほど精巧で16pもの大部。ただし会場は宝飾を引き立てるため非常に暗くしており、展示番号も見難い。宝石をめぐる物語は実際の映像で見るのが一番。

 しかし2年の歳月をかけて準備していただけあって、展示ケースや最後の部屋のパフュームボトルの効果は絶品。 最後に辿り着く真白の空間に 大きなガラスにダイヤモンドを詰め込んだフュームボトル「Moon Fragment」。吉岡氏がカルティエの未来のイメージをデザイン。大きな吹き硝子に閉じ込めた命。
 しかも嗅覚の記憶に留めようとするとは。

ジャン・コクトー「巧妙なるマジシャン、カルティエは、太陽を紡いだひとすじの糸に月をかけらにしてちりばめる」の詩を、香りにしてしまうとは。こちらの記事も道案内によいかも。ダイヤモンドの輝きは実際目にしないと素晴らしさ実感できない。でも虜になる可能性は大。