国立エルミタージュ美術館所蔵 エカテリーナ2世の四大ディナーセット ―ヨーロッパ磁器に見る宮廷晩餐会―@東京都庭園美術館

"Four Great Banquet Tables of Catherine the Great" from The State Hermitage Museum
2009年4月16日(木)〜7月 5日(日)
第2・4水曜日休館
10:00〜18:00(入館は閉館時間の30分前まで)

 ロシア宮廷ディナーセット vs アールデコ装飾の館
テーブルにセッテングされた貴重なディナーセットをアール・デコの館に置いたとき、宮廷晩餐会の様子が垣間見え。エルミタージュ宮殿のように・・・
ドレスコード割引。エカテリーナが「女帝」であったことにちなみ「クラウン王冠の模様」服装(ネクタイ、スカーフ、ペンダントヘッドなど)で来館で100円引。
エルミタージュ幻想
Russian Ark by Alexander Sokurov - Русский Ковчег

女帝エカテリーナ2世の生涯と華麗なる18世紀ロシア宮廷生活
 女帝エカテリーナ2世(1729−1796)の時代、ロシア宮廷では君主の威厳と崇高さを演出する工夫が様々に試みられました。女帝は衣食住にわたって「エルミタージュ・エチケット」と呼ばれる礼儀作法を厳格に規定し、宮廷儀礼の形成に大きな影響を与えました。文化的な成熟度を内外にアピールする場でもあった晩餐会では、その場を構成する全てがひとつの芸術と見なされ、料理はもちろん、テーブルセッティングや室内装飾、列席者の衣装に至るまで、当時最高の質と内容が求められていました。女帝は特別な招待客のために、西欧各国の王立窯や最新の窯に特別なディナー・ウェアを発注し、卓上を豪奢かつ華麗に彩らせました。当時たいへん貴重であった白く輝く磁器を贅沢に使用した晩餐会は、女帝の財力や権勢を誇示する絶好の機会でもあったからです。

 
セルヴィス= 器形、絵付けデザインに統一をもたせた食器セットのこと。
18世紀の正餐では、料理とデザートの2回に分けて、幾種類もの料理が同時に食卓に並べられた食器。
料理用のセルヴィスとデザート用のセルヴィスの2種類。

 館内で見事でテーブルセッティングが。
瓜の形の愛らしい器、トルコ人とロシア人の戦い場面がお皿に..(1)
ブルー地にレモンイエローが鮮やかなカメオ柄。セーブルの青は綺麗。セーブルの青を「王者の青(ブルー ロワ)」、「天空の青(ブルー セレスト)」と言うそう(2)
ロシア帝国内の多様な民族たちを模した陶器 さすが広大なロシアを実感!(4)
イギリスの長閑な田園風景を描いたアイボリーがかった(3)アオガエルが可愛い!さすが童話「カエルの王女」が出来た国だけある。

(1)《ベルリン・デザート・セルヴィス》 + プロイセン(ベルリン王立磁器製作所)
プロイセン(ドイツ)の国王フリードリヒ2世は 1768年に始まったトルコとの戦争にロシアが勝利したことにより、ロシアの軍事拡張を脅威に感じるようになる
 そこで、ロシアとの友好関係を促進するため、ロシア軍の勝利を祝う豪華な磁器製セルヴィスをエカテリーナ2世に贈った。贈り物であると同時に、王の権勢を誇示するものでもあった。
テーブルの中央には女帝の白い彫像が置かれ、周囲をロシアの様々な民族と階級の代表者たちがそれぞれ小さな集団を作り、エカテリーナの彫像を取り囲む。その他、台座に据え付けられた戦勝記念碑、トルコ人捕虜の彫像などがテーブルに置かれ、皿にはトルコ軍と対峙するロシア軍の絵が描かれている。
(2)《カメオ・セルヴィス》 + フランス(セーブル窯)
 エカテリーナ2世はカメオ(瑪瑙、大理石などに浮き彫りを施したもの)やインタリオ(沈め彫りを施したもの)など手彫宝石の熱心な収集家。
当時に流行りはじめたギリシャ・ローマ風の最新デザイン。オリジナルのカメオ彫刻を模した装飾を食器に施し。
長らく女帝の愛人であり、生涯、彼女の最も信頼のおける友人でもあったグレゴリー・ポチョムキン公爵への贈り物として作られた。
 ロシアとフランスの微妙な関係。1770年代の前半頃まで、ロシアにとってフランスは憧れの国だったが、73-75年にロシア国内で農民による反乱が相次いで起こると、フランス流の啓蒙主義的風潮は避けられるようになる。この思想が王侯貴族の立場を脅かすと受け止められたからだ。
けれども、1774年にルイ16世がフランス王に即位すると、女帝はフランスとの新しい関係を前向きに考え、このセルヴィスを注文した。
(3)《グリーン・フロッグ・セルヴィス》 + イギリス(ウエッジウッド)
 女帝はそれを受け、フリードリヒ2世に負けない、ウィットに富んだ外交。風景画が絵付けされたセルヴィスをウェッジウッドに注文しました。これにより、女帝の権勢アピール、情報網の的確さ、そして、イギリスという国を選んだ彼女の教養までも西欧に披露することが出来た。
 このセットは1つとして同じもののない1222のイギリスの風景画で飾られた944品からなるセルヴィス。セルヴィスが使われる予定の宮殿が沼地の湿地帯にあっため、《グリーン・フロッグ・セルヴィス(緑のカエル)》というユーモラスな名前が付けられた。
(4)「聖ゲオルギー・セルヴィス」 + ロシア 
 エカテリーナ2世は自分の支配体制における近衛隊と将校たちの役割をよく覚え理解していた。そのため、勲章を与えられた者たちを祝した晩餐会には必ず出席した。ロシアの最高位の勲章は「聖ゲオルギー勲章」、「聖アレクサンドル・ネフスキー勲章」、「聖アンドレイ勲章」、「聖ウラジミール勲章」と4つあり、この勲章を授与された者の祝宴の際、「勲章セルヴィス」は用いられました。これらのセルヴィスは、モスクワ近郊のフランツ・ガルドネルの民間工場で作られた後、サンクトペテルブルク帝室磁器製作所で追加作品を制作した。
 今回の展示では「ロシアの諸民族」と「商人たちと職人たち」から選ばれた彫像。少々荒削りでヨーロッパをお手本にした華やかなロココ様式はロシアの磁器の中にも受け継がれてた。
 
 外交や政治の道具であった最高級の磁器たち。今では、平和な気持で鑑賞できるのが幸いかも。
エルミタージュ美術館のサイトでは数々の美術に出会える。
 プロイセンから嫁いでから最もロシアであろうとしたエカテリーナ2世。絶対王政の女帝とされるが、
さまざまな貢献を世界史の残したことを思うとロシア帝国の魅力もまた、愛おしい。
女帝エカテリーナ (1) (中公文庫―コミック版)
恋と美の狩人 エカテリーナ (カルチュア・ドキュメント)
女帝エカテリーナ 上 改版 中公文庫 B 17-3 BIBLIO
エルミタージュの華やかな世界に思いを寄せるのも。