一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子@サントリー美術館


 なぜ幻想的な言葉があるかと思えば、島津藩が海外にも輸出できる特産品をと力を入れたガラス工業であったが、1623年薩英戦争によって破壊されてしまったこと。
幕末薩摩藩 島津斉興が振興し、斉彬が力を注いだガラス工芸。 
これは、サントリー美術館ご自慢の充実した薩摩切子コレクション。今回はその研究成果が多くの個人蔵やびいどろ史料館も含め陳列される。薩摩の尚武集成館所蔵も多い。
江戸から四本亀治郎らを呼び寄せ研究を重ねて「紅びいどろ」を完成させたそうだ。かなりの酒癖の悪い職人であったが、才能ゆえに斉彬が重用したというエピソードも文献もある。美術研究の成果は多面的に行われたようである。
 数々のガラスの器を見ればきれいなカッティング、で終わりそうだが、材質や技法など詳細な調査により、イギリス、アイルランドボヘミアなど舶来品か、江戸か薩摩か、また薩摩切子の影響を受けた作品か、「紅びいどろ」のぼかした紅色が美しい。厚みが
斜格子魚子(ななこ)がDiamond strawberry cut というそうだ。細やかな文様に名前がついている。
徳川美術館に伝わる切子は、篤姫お輿入れと推定される雛道具揃えが精緻の美。雛壇に飾っただろうか。
音声ガイドでは、非常に丁寧な解説が聞く事ができる。BGMと共に楽しいガラスとの対話も良いかもしれない。硝子に透ける憧憬は一瞬の煌めきでも幻でもなく、ここに永遠に残るゆえ。