マーク・ロスコ 瞑想する絵画@川村記念美術館

会期 〜2009年6月7日(日)
開館時間 午前9時30分−午後5時(入館は午後4時30分)
休館日 月曜日(ただし5/4は開館)、5/7(木)

 誰もが口を揃え絶賛する美術館。ロスコルームが出来たと聞いてずっと行きたいと思っていた。今年ロスコが揃う大展覧会があると知り、満を期して陽光穏やかな春風に誘われて遠足に出かける。JR総武線快速エアポート成田と比較的快適。佐倉駅南口を降りて左に進むと無料送迎バスが迎えてくれる。
 豊かな北総台地の自然は、春が芽吹いてなんだか楽しい道のり。
 バスを降りると、隣接するDIC総合研究所とともに広大な敷地内は、樹木草花、野鳥や昆虫の楽園。散策路は四季の折々楽しめそう。 美術館に入った後でも半券に押印してもらい、散策できる。自然散策路は無料。

 毎日開催される午後2時のガイドツアーに参加する。イヤホンガイド式でどこにいても聞けるのはとても良いシステム。
 入場に際して音声ガイド(500円)を借りる。常設展のみならず企画展をBGMを添えて編集されたもの。解説者が何通りもあるのがユニーク。 ロスコ展とコレクション展示の解説のほか、モーツァルトシューベルト室内楽曲を収録。クラシック音楽をこよなく愛したロスコはモーツァルトの「魔笛」を特に好んだとか。子息クリストファー・ロスコ氏選曲

 2階はもっとすごいのでしょう。期待をしつつ丸みを帯びたニュートラルグレイの階段を上がる。二方向の階段を上がると、つい声をあげてしまった。
 グレイとホワイト、そして温かみのある赤。ニューマンの部屋。「アンナの光」がこの部屋一面のみならず、左右の窓の外まで繋がる心配り。ニューマンが母の名を冠した作品は、まさに慈愛の光で満ちているよう。「アンナの光」のための部屋、地中海美術館で体験したジェームス・タレルのように色彩の中に入り込む体験ができる部屋。

そしてロスコの部屋。

本展に出品されている〈シーグラム壁画〉は、ロスコが初めて空間を与えられ、そのために手がけた連作です。しかし、注文を受けた場所は、セレブリティたちが夜ごと着飾って豪華な食事とおしゃべりを楽しむ、ニューヨークのシーグラムビル内にある最高級レストラン「フォー・シーズンズ」の一室であり、そのスノッブな雰囲気を気に入らなかったロスコは、一度は喜んで引き受けた話を断り、完成した30枚の絵は行き場を失ってしまいます。
それ以前に手がけていた作品と異なり、壁のように大きな横長の画面に、窓枠を思わせるかたちが配され、深い赤茶色、オレンジと黒を基調に描かれた〈シーグラム壁画〉は、より深遠な、未知なる世界にわたしたちを誘います。古代の遺跡にも似たその圧倒的な存在に包まれて、自身を省み、心を彷徨わせ、瞑想にひたる――そうした空間の実現を、ロスコはどれほど待ち望んでいたことでしょう。そしてついに1970年、9点の〈シーグラム壁画〉は大西洋をわたり、ロンドンのテート・ギャラリーに終の棲家を見出しました。また、50年以上にわたって散逸したままだった〈シーグラム壁画〉の半数となる15点が初めて一堂に会し、あらたなロスコ空間を創り上げます。おそらく二度と見ることができない千載一遇の機会となることでしょう。そのほか、〈シーグラム壁画〉のための展示模型や関連作品、〈シーグラム壁画〉以前の大作、以降に制作された幻の連作など13点と、本邦初公開となるロスコの書簡などをあわせてご紹介し、晩年のロスコ芸術の真髄に迫ります。(川村記念美術館HPより引用)

ロンドン、テートギャラリー ロスコ・ルーム(1970年-)
千葉県佐倉、川村記念美術館 ロスコ・ルーム(1990年-)
 生前のロスコの強い希望により、〈シーグラム壁画〉を一室で展示するロスコ・ルーム 両館にとって、散逸した〈シーグラム壁画〉をまとめて展示することは長年の夢だっただろう。

 テートモダン所蔵3点、ワシントン、ナショナル・ギャラリー所蔵5点、川村記念美術館所蔵点の合計15点が並ぶ。制作当時のロスコの構想に基づいて、絵と絵の間隔をできるだけ近づけて壁の高い位置に掛け、帯状に連なる赤い壁に取り囲まれるように展示された、幻のロスコ・ルーム。

晩年のロスコは、自作の真の理解者を求め、我が子のように大切な作品を託そうとしていました。1965年、当時テートの館長を務めていたノーマン・リードは、作品の寄贈を依頼するためにロスコのもとを訪れ、それから4年以上の長い時間をかけて画家の信頼を得、友情を育み、ようやく〈シーグラム壁画〉を譲り受けることができたのです。本展では、その間、ロスコがリードに宛てた16通の手紙を本邦初公開します。迷いや焦り、疑念や信念、怒りや喜びなど、揺れ動くロスコのさまざまな感情をそこに 読み取ることができるでしょう。

 ロスコは「自分の絵画空間」を手に入れる夢を抱きはじめる。そこでロスコの絵は息づき、作品が響き合って、鑑賞者をすっぽりと包み込むことができるからです。
 古代神殿を取材したという「シーグラム壁画」。入って第一印象。丹の色合い、漆の味わいにも似て日本の寺社を彷彿した。阿修羅展と同じ感覚を得た。
 色彩は思索へと誘うような、静かで豊かな対話を生み出すように感じる。
ロスコが心理学を学んでいたのが何か関係あるのかどうか、「人間の感情、そして人間のドラマを描いた」という彼の言葉に共鳴する。
 
■5月24日(日)
14:00−15:00 林寿美(川村記念美術館学芸員) 本展企画学芸員の解説

ロスコ 芸術家のリアリティ

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MARK ROTHKO

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