興福寺創建1300年記念国宝阿修羅展@東京国立博物館平成館

芸術新潮 2009年 03月号 [雑誌]
もっと知りたい興福寺の仏たち (アート・ビギナーズ・コレクション)
上野の桜が美しい正に良い時期良いタイミングで国宝阿修羅像をはじめとした八部衆、重大弟子、中金堂の名品が賑々しく上京した。

 初日から激混みで連日行列をなしている混雑ぶりというが、中に入ればその分ゆったり回れるように配慮されているよう。本日は土曜日午後6時から入ったが行列はなく比較的空いていた。
 平日(火〜木 18時まで・金土日 20時まで)閉館前に入り、閉館間際に阿修羅像などじっくり拝顔するのも手かもしれない。
 ただし、この阿修羅展は巡礼し甲斐がある楽しい会場なので、リピーターや口コミで一挙に増える可能性大である。朝日新聞も充実した別刷り特集を発行しておりファン急増の模様。
 「阿修羅クラブ」も一万人超え、フィギュアは早々に完売、予約受付の状態になっている。

 昨年大変好評だった「薬師寺展」設営の成功を覚えており、これまた見事な会場に変貌させてある。今年はさしずめ「アシュラワールド」ならぬアミューズメントパークとなった。寺社というのは古よりその場に訪れるのが楽しい!と思わせる空間だからこそ。平成館を「あおによし」の舞台へと作るのはさすが。

第一章 興福寺創建と中金堂鎮壇具
 入口から発掘されて遺物が並ぶ。ガラス球、推奨、花鏡、唐時代の比較と共に見易い展示。特に水晶琥珀、瑠璃、琥珀、ガラスなどきちんと保存されている。

第二章 阿修羅とその世界
 阿修羅が今回のアイドルなのでその他大勢となるが、八部衆十大弟子の個性的な表情は青を背にずらりと並んで壮観。それぞれの表情も鮮やかな衣紋も味わい深い。スペースがあればそれこそ全てを360度鑑賞させてほしいもの。特にそれぞれ背中にも並ならぬ緊張感ある美がある。この製法は「脱活乾漆造」といい、麻布を漆で何度も固める技法。

第三章 中金堂再建と仏像
 康慶作四天王揃いは凛々しい姿もいいが、足元で踏み付けられている邪鬼に注目。持国天の元では目玉が飛び出し大口、増長天の下には元祖ピグモン(ウルトラマンに登場する友好怪獣)、薬王菩薩立像の金箔が剥れつつある姿が、漆の根来塗を彷彿する。侘び寂びがむしろ輝く一面に金色より慈悲を感じる。

第四章 よみがえる興福寺中金堂と阿修羅像
バーチャルリアリティ映像を駆使しての説明。これは平成館1階でも見ることが出来る。
細部まで精密に見えるのが面白い。興福寺中金堂の再建シーンは現在を舞台にしているのが観光バスや案内板、奈良県庁舎も見えるのが面白い。

遷都1300年盛り上がると良いなあ。せんとくん問題も含めて。
今回はなんとくん、まんとくんがいないのが残念。
「 いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな」伊勢大輔(61番) 『詞花集』春・29