土門拳の昭和@日本橋三越

 昭和時代がすぐそこにあったのに、失われた時代のようにも思える。戦乱の世を静かに見つめる十一面観音。仏像の姿をぐっとズームアップして一点にぐっと引きこめる。
 これだけ引き伸ばしていくと、土門拳が引き当てた一点が見える。写真とは現を写すものだが、写真家の眼を通じて、その内にある真実を引き出すのだろうか。
土門拳の眼は、骨身のある人間をじっと捉え、その人が持つ本質を引き出す。ヴィンテージプリントで文学界、画壇、政治、人物の表情を捉えている。人を写すということは撮影者自身をも映しこむのだろうか。
「江東のこども」
筑豊のこどもたち」筑豊のこどもたち〈続〉るみえちゃんはお父さんが死んだ―土門拳写真集 (1960年)
ヒロシマヒロシマ (1958年)
彼は写真に焼き付ける事で昭和の時代に起きていた社会を風景を肉眼以上に正確に残してくれたのか。

室生寺 (土門拳の古寺巡礼) 
 古寺巡礼の旅は、室生寺に始まり雪の室生寺に終わる。
昭和の時代はまだカラー撮影が難しくてカラーには三原色の原版で三度写してできるというのを知って驚いた。カラーは大変貴重だった時代。

文楽」戦時下に撮影した六千点あまりのガラス乾板を、防空壕に埋めて守ったとか。その時すでに文楽の貴重な人形や衣装は戦火で消失。写真集が刊行され、はじめて世に。
文楽 (1972年)

 今のデジタル画像で画素数によって色彩が変わり、携帯で簡単に日常を切り取れる時代になってしまったからこそ その時間をかけた丁寧な撮影に人柄をを感じる。
土門氏の丁寧に一点の光を当て撮る手法が 本当に職人技。職人の手を撮影した作品が一番心惹かれる。
「吉田文五郎の手」
 偉大な写真家
山形酒田市土門拳記念館大きな空間でこそ味わいたい気合。

「古寺巡礼−仏像−」
東大寺お水取り」
〜平成21年4月5日(日)

別冊太陽 土門拳

別冊太陽 土門拳