「さて大山崎」デュオトーク 山口晃×山下裕二@大山崎山荘美術館


 会場での静けさが苦手でついつい笑わせようと爆笑独壇場ソロトークと異なり
山下裕二氏がどんどん山口氏の過去を暴き、仕事ぶり引き出す
(そしてついつい美術史を語ってしまう)トークとなりました。
途中ドクターイエローが通ると ちらりとテツ発言となる二人です。

(注意:文中の発言を 山口晃(A)×山下裕二(Y)と表記
メモをもとに再構成したため、不適切な表現はご指摘下さい)

◎二人の共通点
髭 チェックの服 靴「Y:相似形だな」
カラオケの「あずさ2号」の絶妙なハーモニー
「Y:彼は本当にうまい 見事にハモったのは初めて」 

◎二人の対比点
(A)夏休みの宿題が終わらない×(Y)宿題は遅れたことがない
(A)折り畳み傘を持ち歩く×(Y)絶対持たないな ビニール傘買うし、濡れちゃってもいいや
(A)芸大試験は国語と何か二教科だった そして実技試験×(Y)俺のときは七科目だったよ

Y:テレビだと マシンガントークだね

1.山口晃を注目した経緯
こたつ派が初めて展覧会。
その後、「源頼朝像写」を出したよね。
足利直義像)図録の印刷によって こうも変わるのかーという絵。

Y:あの時60万円だったけど当時の俺には買えなかった。
某有名コレクターに買われ 今では「高橋コレクション」になっている。
前田の「洞窟の頼朝」にインスパイアされて あの絵が生まれた

(「たけしの誰でもピカソ」10年前の貴重な映像が流れる)
「貧乏とアート」
29才助手時代 段ボールの草履、研究室で寝食して過ごす。

A:アパート時代には向かいのおじいさんに 出稼ぎイラン人と間違われて、
牛丼を奢ってもらったこともある。

A:絵が売れてから急に楽になって 2004年東京大学出版会から画集が出た。

2.山口晃誕生少年時代からのヒミツ

A:子ども時代は、らくがき、ねんど、ロゴのローテーション
一番楽しかったのは 広告の裏に描いた落書き
大きくは描けなくて隅っこにちょこちょこっと飛行機とか描いた。

A:目立つ方ではないが、お鉢が回ると悪目立ちするタイプ。
母が残してくれた絵はスペクタクルな戦艦の絵だった。

A:映画をよく観たけど、田舎だから大抵二本立て。
ランボーに地中海殺人事件、SFとラブロマン、寅さんと鎌田行進曲とか
要らないのも観なきゃいけないんだよね。
漫画はもっぱら テレビアニメだった。
宇宙戦艦ヤマトど根性ガエル、チキチキマシーン
再放送だと 巨人の星 とか。
(←Y:僕はリアルタイムだった)

A:昔はそこそこ勉強が出来ていたから、無理しなくてもできた。
僕の成績はソコソコだったんだけど、高校で相対的に勉強
消去法で絵が上手くて科目数が少ない学校で....
父が勧めてくれたのが油絵の先生で、日本画の存在は知らなかった。

 古美術に興味を持って、中村光夫「移動の時代」がきっかけ
日本のまっとうな跡継ぎになるには...と模索していた時期。

Y:東京藝術大学は「入ってみたらガッチョン(注:広島の方言)だ」
「入っても何にも教えてくれない 迷える子羊」

3.「日本画」「やまと絵」とは(ここは Y氏ほぼソロトークかも)
Y:日本画という概念は、明治以降に始まって、
西洋から来た「洋画」の対概念として生まれた。
漢 狩野派水墨画など中国宋時代の文化
和 やまと絵といわれる平安時代の絵巻物 ただし これも 日本と中国(唐時代)が混じっている
こういう今までのものがいっしょくたにされて対概念とされた。
外から刺激を受けると ひっくるめて対概念が HYBRID
日本語には漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベットが混じっているように
「日本古来」「日本の伝統」「和風」なんて簡単に言えるものじゃないよ

日本美術という中にJapan Originalは非常に少ない 縄文時代ぐらいだ。
これも岡本太郎が発見し、1952年以降 やっと美術の対象としたのだから。
それまでの日本美術史は「仏教伝来から始まっていたのだ。
世界最古の土器で(火焔型縄文式土器)あれだけ複雑な装飾ができるとは。

山口君はよく「現代のやまと絵師」と言われるが、 HYBRIDだと言えるだろう。

4.今回の展覧会制作秘話?
 モネの絵は外してダメって言われて、ひっくりかえすのもダメ と。でも絵巻に合わない
仕方ない その場所を「受け入れる」ことから始めた。 
それでコンクリートの壁面を愛でる ことにした。なんといっても利休ゆかりの地

A:明日(1/26休館日)、ちょっと加筆 いや蛇足を付けに泊り込みの予定で...
Y:荷物コレだけ?ちょっと中見せてもらいましょうか。

5.山口晃氏 持ち物検査:
絵の具(油絵の具は高価だったので助手時代研究費で)
チマブエブルー、ルーベンスブラウン、マザッチオイエロー、ジオットブルー...

Y:日本画材は宝石を砕いたものだから画材が非常に高価。
A:某元学長さんなんて厚塗りゴテゴテ、よくあれだけ積み上げる....
積立貯金だから、某銀行のカレンダーになるんだね。」


面相筆 墨で描くため
平筆 たくさん持ってくるが使うのは 2-3本
硬い豚毛 
柔らかいナイロン筆 これは消耗品

(ここで傘対談と、僕達相似形? トークが入る)

6.山口晃 メディアでも大活躍
五木寛之親鸞」 
これは講談社が仕掛け 各地主要紙に連載されるもの
神戸新聞の紹介記事はコレ
A:最初は7作ぐらいまとめて入ったけど、2作ずつチョコチョコと
「うーんこれは」と言われて書き直しも。
一年は食いはぐれないし

挿絵でこれは本当に素晴らしかった

菊灯台 (ホラー・ドラコニア 少女小説集)

菊灯台 (ホラー・ドラコニア 少女小説集)

獏園 (ホラー・ドラコニア少女小説集成)

獏園 (ホラー・ドラコニア少女小説集成)

これからは展覧会用の絵でなく
商業美術が評価されていく時代だと思う。
小村雪岱など「明治の春信」と言われた挿絵画家で
泉鏡花の世界をよく描いている。

Y:パブリックアートは多いね。
成田国際空港第一ターミナル南ウイング出発ロビー陶版
地下鉄13号線副都心線西早稲田駅
ステンドグラスで
再現してもらったもの。

A:岐阜の清安寺の屋根修復にあわせ天井絵を依頼されている。
(「岐阜」です といっていましたが、岐阜県土岐市では
ないでしょうか)

7.山下先生監修企画
来年新しくオープンする山種美術館 速水御舟特集をやります。
良い作品をそろえています。
平成23年秋に江戸東京博物館 狩野一信 五百羅漢図
BSハイビジョン放送の番組で放送したが
地上波はまだ。よかったらリクエストを。

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そんな感じでほとんど山下裕二先生に先導を取られましたが、
ソロトークで山愚痴節を堪能された方は二度美味しい でしょうか。
静かな大山崎が大賑わいの一日