あおひー写真展「いつかのどこか」@gallery613

  • 11月30日 19:00

Gallery613
港区元麻布2-11-6-202 カフェオリンピコ2F

 麻布十番を降りて、つい賑やかな麻布十番商店街に惹かれ
文字通り紆余曲折しながら辿り着いたギャラリー
分岐する道のちょうど真ん中に位置した場の階段を上がる。

 温かな白い空間の中に、今回の作家あおひーさんと
その分身が並んでいる。入り口を迎えるのは、
「えきかいだん」と白い卵のオブジェ。ここでは低い天井に
気をつけなくてはいけない。
 古美術アンティークが並ぶ白い空間に、非常にフィットする
白いフレーム装丁されたモノクロームの写真
 モノクロームは、白と優しいグレイが重なり静かな音楽になる
写真はカメラのファインダーを通じて、作家の心を映ずる。
作家の心が出るからこそ、芸術写真となる所以。

 地下鉄、横断歩道、階段、ローカル線の車内、
行き交う人、光に満ちた風景。
 その光は球になり、温かな光で満ち溢れる場となる

 ピンボケしているのは、確信犯の技術。
ぼやけている画像は確実に目の前の現実を見定めている。
 焦点を合わせてはっきり見ようと調節する機能を
この写真を観る人は、頭脳に移行させる。
 いつかどこかで見た風景と認知したときに発見する。
まだ見たことがなくても懐かしい気持ちにさせる
そして「いつかのどこか」で出会うだろう。

 作品には当然キャプションがついておらず、
写真の前でいろいろ想像するのが楽しい。
じっと見入ると、彼らの表情が見えてくるのが面白い。

 信号待ちの彼女は、
九州出張の信号待ちで発見するんだから心憎い。
 小田急線で駆け込む姿をキャッチしたのは、秀逸だと思う。

 私が今回購入したのは
「みせじまい」
眩しい光に満ちた店を閉じる瞬間、その姿を見つめる眼
「きって」
普段見慣れたモノにもっと寄り添ってみる、違う角度を
見つけてみる そんな楽しさが感じられたから。

 作家あおひーさんは、LOMOトイカメラのような
味わいある写真を撮っていたのが、
ある時に瑞々しい緑の木々と白い軽トラをぼんやりとした焦点で
撮った写真の仕上がりに、今回の手法に転向するきっかけを得たとか。
カラーでなく、モノクロームにすることで、より写真の味が出る。
デジタルカメラモノクロームのぼかし撮影法を発見して
スタイルを確立し、作品を作り続けるあおひーブランド。
すでに次回の展覧会の構想は定まりつつある様子。期待したい。

見つめる眼の優しさに。