大琳派展 継承と変奏 波・渓流@東京国立博物館

 とうとう最終後期になったが、今回の目的は 波をじっくり観ること。

 光琳の波図屏風に非常に感動した抱一が「自慢作」と言わしめるだけの出来栄えである。
◇2-18 光琳 波図屏風
◇4-32 抱一 波図屏風
光琳が 金地に光琳らしい深い群青色を用いて打ち寄せる波の一瞬を描いたならば
抱一は 銀地に大胆な太筆の勢いと共にスケールを拡げて轟音も聞こえそうな波の高鳴りとして。
その高鳴りは、師匠を慕う心の高まりにも似て屏風の前で圧倒される。
白く飛沫も散らす勢いである。

 波に穴を開ける描き方は 仙人を乗せた黒鯉を押し上げる波にも登場する。
◇3-34 光琳 琴高仙人図
◇3-35 抱一 琴高仙人図
同じようでありながら、鯉のヒレ、仙人のヒゲなど抱一らしさが出てくる。

 しかしそのルーツは既に宗達が描いていた事に気がついた。
◇1-25 宗達 唐獅子・波に犀図杉戸(京都・養源院)
にあの波が、
犀を引き立て囲むように描かれていた。
 継承されるうちに、波が主役となり屏風全てを埋め尽くす高波と変化していった。

 今回後期に展示された中で気になる作品は以下
◆2-03 光琳 白楽天図屏風  
これは「対決展」でも出展されたは、この波のうねりと舟の対比が動的である。

◆2-17 光琳 孔雀立葵図屏風 
 真っ直ぐな立葵の縦の線、孔雀の曲線美とそれに呼応するような梅の幹
丹念な孔雀の写生図がちょうど展示されているので、あわせて見ると感激も一層深まる。
また乾山も描く立葵と較べると面白い。さすが工芸的な意匠を感じさせる立葵の配置。
2-57 立葵図屏風

◆2-28 光琳 竹梅図屏風 
 ここにも真っ直ぐ縦の竹、枝を自在にくねらす梅 その対比が金地に美しい。

◆4-59 夏秋渓流図屏風 其一
 これは驚くべき筆致。波があの美しく鮮やかな青色 金で渓流の水の動きを描くだけなのに
非常に動的な印象を受ける。
右は夏 美しき百合の花が渓谷で誇らしげに美しく咲き 蝉が鳴く。
セミ見つけて)
左は秋 鮮やかに紅葉した葉が今にも旅立つように揺られ、まさに落ちんとする一瞬。
全てが一瞬時間を止められたような姿で、鮮やかに永遠を留める姿。
圧巻。

なお11月11日まで 平成館1階で綴プロジェクトによる
「八橋図屏風」光琳メトロポリタン美術館)が展示されている。
◇4-14 八橋図屏風 抱一
と共に較べてみては。
(なお12日から最終日は等伯の松林図屏風)
前回は気付かずに、抱一の複製と思っていた自分が恥ずかしい。
光琳らしい群青 配置の中で八橋に添わせて群生を描く
抱一らしい明るい青 リズミカルに空間を広くとる
その青色は、燕子花の色のみならず、風神のたすきの色にも感じられた。

水のさまざまな流れや勢いを一瞬に止め、永遠に生かす琳派の絵師達の技量に
ひたすら驚き、敬意を表する。
尾形光琳 百年忌を行った抱一もまた顕彰される側になった
尾形光琳 生誕350周年という節目に立ち会い、このように様々な対面がかなう機会の
展覧会に感謝するばかりだ。