大琳派展 継承と変奏 雷神風神@東京国立博物館

 第一会場で四面に並んだ「雷神風神」を目の前にして身震いがした。
時代を超えて今ここに同じ主題を描いた四人の絵師の「雷神風神」が並んだ瞬間を。
 宗達光琳、抱一の三作品を引き揃え丁寧に比較検証された出光美術館の展覧会の記憶が新しい。
しかし、コの字型に配置して、自分の視界の範囲内に四作品を入れることで時代を超越して拝見できる機会は本当に有り得ないのではないかと思うほど貴重な体験であった。
 私は前から色彩からも造形からもまずカタチを作り上げた宗達の作が一番好きだ。
光琳、抱一になると、雷神風神が屏風の中に少し降りてきて、鮮やかな緑の身体に朱色が鮮やかで両者は模写しただけあって非常によく似ている。
 それが其一になると、雷神風神は非常に肉付きがよく表情も豊かに凛々しく、さらに広い空を制覇するように黒雲従えて自由になる。作風は二人の先達を超えて、むしろ宗達に近いような気がした。

 さてこの時期この東京国立博物館ならではの鑑賞のひとつの視方
以前Takさんがプレビューにてガラス越しに雷神風神図屏風を見ていたのが面白かったので、実際に覗いてみた。
 雷神風神と 本阿弥光悦の楽茶碗にて茶会
1-31 黒楽茶碗 銘 雨雲
1-32 赤楽茶碗 銘 峯雲
1-33 飴軸楽茶碗 銘 紙屋
方向によって、抱一の風神、其一の雷神風神と対峙できる。
一服 茶を呑まれんことを。

また入ってすぐ見える
1-42 蔦蒔絵唐櫃(広島厳島神社)を通じて眺める
1-68 桜芥子図襖
襖の引き手に 風雪月花 の文字。

また
2-33 小袖 白綾地秋草模様(光琳)を通じて眺める
2-15 秋草図屏風(光琳
同じような秋草の意匠が重なり見事な味

さらには
4-36 小袖 白絖地梅樹下草模様(抱一)を通じて眺める
4-22 柿図屏風(抱一)
大きく弧を描くように伸びる枝ぶりがとても似ている。
梅と柿とはいえ、紅色も似ている。

◆今回後半で出会う作品で気に入ったもの

4-13 燕子花図屏風(抱一)
燕子花の意匠の上部をクローズアップして描き込んだもの
私は抱一が用いる青色が好きだ。
そっと蜻蛉がいるのも愛おしい。
世紀末の頃遠いフランスでエミール・ガレが愛した蜻蛉を
思い出す。

4-18 兎に秋草図襖(抱一)の
斜めに板をはめ込んだ意匠は驚くべき効果。
月光や秋風をこれで表現するとは見事。

◆今回一層感動したもの
4-60 秋草・月に波図屏風
ライティングが刻々と変化して、絹地に描いた秋草の背景に
ほんのり金泥で描いたという月と波間が浮かび上がる。

4-54 四季花木屏風
この意匠化が切り絵のように、非常にシンプルな形に仕上げ、
色彩がリズミカルに鮮やかに配置されている。
其一ファンになったきっかけ 出光美術館

4-49 蔬菜昆虫図
茄子と蔓が大小を変えて意匠化されて、虫食い葉など若冲をも彷彿。
生き生き描き出す力が素晴らしい。

 風神雷神図もきっかけであるが、光琳あって光琳顕彰されて
日本文化に深く根付いた意匠。王朝貴族文化の華やぎを町人文化に取り入れ
工芸、着物、お菓子、様々な形で変容されつつ継承されて、
今なお影響力のある「琳派」これからも楽しみである。