貴重書展 学ぶ・集う・楽しむ@国立国会図書館

10月16日(木)〜10月29日(水)
国立国会図書館東京本館 新館1階展示室 (入場無料)10時〜18時

関西館でも開催されます。
11月13日(木)〜11月26日(水) 国立国会図書館関西館 大会議室 (入場無料) 10時〜18時

 今回は日本の書物を中心に三つのテーマに絞って構成されたそう。
 書誌学上の展開や江戸文人交流の様子など資料そのもので味わうことが出来るのは貴重なこと。大変会期が短いので、足が運べる人はむしろ幸い。無料ゆえ機会があれば「貴重」な時間に戻ると良い。
 この展覧会は瞥見するより書物の中身を知ってこそ面白いが、今回はちょっと遊び心がある仕掛けもある電子展覧会で楽しんでから足を運ぶと幾重にも鑑賞が深いと思う。(その仕掛け人はアルファザードらしい)現代の多くの人には馴染みがない変体仮名や自筆など難読も書き下し文や解説が丁寧なので、電子展示会の説明もよく読むと、どうして「貴重本」なのか、その意味がよくわかってくる。
 なかなか見れない資料が、貴重書データベースの画像や電子展覧会で見れるのは、資料そのものの保存のためにも、資料を見て調べるためにも利便性が高く、今度もこうやって資料がどこに居てもネットを通じて見れるのことが出来るのだろう。

さて専門知識は電子展覧会を熟読すればよいので、純粋に楽しむポイントを。

1)学ぶ 和漢の代表的な古典(伊勢物語源氏物語論語など)
目で見る古典学の流れ

伊勢物語源氏物語 注釈書は「秘伝」とあってなにやら怪しい中味かと思っていた私..(反省)。
師匠から弟子へ 広く知れ渡る「印刷」となり、もっと広い層にまで裾野が広がり、江戸期に国学が盛んになっていく。
写本から版木へとつなげていく古活字本は貴重な存在。嵯峨本が出ている。光琳模様の謡本も。

2)集う 江戸時代の学者・文人
江戸文人所在マップ江戸文人の集まりは盛ん、知のコミュニティが形成されて切磋琢磨楽しんでいたのでしょう。

江戸文化コミュニティの中心であった大田南畝の「一話一言」(38) 
現代に喩えると...毎日魅力的な記事更新とコメント・TBをきちんとしているカリスマブロガーか

式亭三馬のスクラップブック
鑑賞記録までつけていて、最近のブロガーに似ている?
「耽奇漫録」(42) 「慳貪」の使用法をめぐり、中心メンバ―である馬琴と山崎美成との間で論争となり文政8年3月には絶交に至った。などに至っては現在の誌上論争、ブログ炎上みたい。

南総里見八犬伝』を書いた曲亭馬琴の書簡などが揃うところ。大きなパネルがあり、『南総里見八犬伝』各巻の華麗なる表紙と裏表紙がズラリと揃う。

「「謄写一行毎に涙千行。万巻の書を看破りても人情ハこの界を免れかたかり」
息子を亡くす父の悲しみなど人間味の部分が出てくる。

山東京伝「作者胎内十月図」(50自筆稿本)(51版本)
作家が作品を生み出す苦しみを直訳「産みの苦しみ」に変えてしまった図が笑える。作者のおなかにタネが入り月ごとに大きくなり胎内で成長し臨月には、なんと作品は人形になっており、無事出産すると上中下の可愛い三つ子が登場するという面白さ。これがあとの体験コーナーですべて見れるので楽しい。
京伝は北尾政演という名で「美人合自筆鏡」(53)を描いている。

3)楽しむ 絵入り本 絵巻から多色刷り版本までの彩色本の流れ
やはり知識はなくとも絵は良いが、比較など興味いっぱいの場。

◎奈良絵本 彩色写本
「てんじんき」(62) ここに赤ら顔の風神登場 (東京国立博物館に勢揃いの風神と較べてみては?)
甲陽軍鑑」(64) 美麗...信玄と謙信対面の一場面。

◎丹緑本(たんろくぼん)
版本の挿絵に筆で彩色
すべて貴重書データベースに入っているので画面を見ることができる

◎刷り絵本
浮世絵師もまずは挿絵画家から始まった..
菱川師宣の浮世絵版画に代表される墨刷り絵本

好色一代男
大坂(70) 秋田屋市兵衛 1682年
江戸(71) 川崎七郎兵衛 1684年
上方と江戸っ子の この版本の違いを見よ!
大阪が漢字交じりに上品で流麗な文体と挿絵なのに、
江戸は小型化して挿絵も省略気味、文体は平仮名のみで文字もぎっしり間違いも多々らしい...あわてもの!「しゃらくせえ」 

精巧な木版印刷技術が駆使された多色刷り絵本
「狂月坊」(72)喜多川歌麿画 版木の挿絵なので小さいが、空刷りなども含め面白い。やはり浮世絵絵師として活躍する力量が見れる。これも複製が見ることが出来る。

◎画譜
「賞春芳」(73)は「拓版画」と呼ばれる墨刷り版画集 若冲が描いてますよ 「若冲居士」と見えます?
「明朝紫硯」(74)(75)は比較してみて。

◎絵巻物
「十二月遊ひ」(56)
お正月の遊びが見事な絵で描かれているが、よく見るとラクロスのラケットみたい...
「御旗印」(60)水色、黒、赤の多色刷(金は彩色か)旗も美しく文字も見やすいので、「あっ!」と思う旗もあり。

 実際の資料の複製版が出来ており、実際めくって触ることが体感できるのも面白い。原本をカラーにて複製しを和綴じにしてなかなか面白い装丁。
お奨めは、大田南畝の「一話一言」(38) 画像にある桜島噴火の様子を立体的に表現している。

 仲間探しは楽しいですよ♪絵活字仲間探し観察力ある子どもと来てはいかがでしょう?
なんと図書館らしからぬ仕掛けが!会場には、スタンプ帖持参で来てみて。