常設展@成山画廊

9月26日(金)〜10月1日(水)
成山画廊:東京都千代田区九段南2ー2ー8
松岡九段ビル205号室
(地下鉄九段下駅2番出口武道館側より徒歩3分)    
TEL&FAX:03ー3264ー4871
営業時間:月、火、水、金、土曜日  13時から19時まで  
日曜日休廊

 千鳥ヶ淵 桜並木の樹木達が
墨のごとく黒い肢体を仰け反り突き出し平伏し生きる姿そのもの
樹医の手によりひとつひとつそれぞれの生き様にあった処置を施し 
来春を延命しようとする。薄紅放つその前に。

 常設展 成山画廊
非常に短い会期の中にさり気なく開かれた画廊

 あのETV特集「痛みが美に変わる時〜画家・松井冬子の世界〜」で
製作された作品「ややかるい圧痕は交錯して網状に走る」が
出迎えてくれる。
製作中に「冬子さん」声を掛けられるのも納得の生命力ある彼女。
アイディアスケッチとも比較される機会も貴重ではないだろうか。

 松井冬子の新作は 絹地彩色の菊の花「転変図」
なるほど見出された初期の「試作」にも似て通じる菊の花
黒地表装。
 多分彼女の中では大事なモティーフであり、ずっと成山画廊
手元にあって欲しいであろう仕上がり。
やはり至近距離で拝見できる贅沢さは成山画廊ならでは。
 菊花の内に秘めたる恐ろしいまでの存在感が非常に感じられる一枚
この種類の菊を見ると、ついつい連想してしまう。

 樹木や頭蓋骨の素描は穏やかな印象。
絹に墨の黒が細やかに描きこまれていても
感情を昇華させたような仕上がりになるのは、
静かな怨念のようで、静かな鑑賞に堪える美。

 美術での解剖学は人体を描く上での必須科目だが
解剖によって生命をより深く追求して、それを絵に写そうとする心は
物事の本質を追求する心にも副うのか。

 新作の前には赤字で注意書きがあった。
(よほど前回マナーが悪い人がいたのか)
品格ある絵の前には、それ相応に品格をもった鑑賞が必要か。

 彼女の作品が現代の人を多く惹きつけるのは、
彼女自身の外見の美だけに拠るものではないと思う。

 九段阪へ下る途中 堀には一面に蓮の花が咲いている。
極楽浄土のように 緑の泥沼から薄紅の花卉を拡げる姿は清清しい。

■ 平野美術館 開館20周年記念展特別展 「松井冬子展」
過去の作品から新作までの約30点を展示予定
2008年10月25日(土)〜12月14日(日)
静岡県 財団法人平野美術館 Tel : 053-474-0811
観覧料:一般500円、中高生300円、小学生200円
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は開館、翌日休館)
松井冬子サイン会:11月9日 15:00〜17:00

NHK DVD「痛みが美に変わる時〜画家・松井冬子の世界〜」販売されるよう。