近代日本の巨匠@出光美術館

 出光美術館から皇居や赤煉瓦の法務省旧本館、日比谷公園を眺めつつ お茶をする時間だけでも至福だが、今回も魅惑的な企画展だ。
    出光美術館は桃山から江戸期の浮世絵、屏風、陶磁器のコレクションだけだと思っていたが、今回は意外に近現代の作品も多く所蔵しているそうだ。
本展では出光コレクションの近代美術作品およそ1,000件の中より厳選したよう。書画、彫刻、工芸と様々ゆえに、何かしら心に合う一品にめぐり合えたらそれだけで素晴らしい体験だと感じる。私が気になった作品ばかり、章ごとに連ねてみる。

《1.近代のめざめ》
明治・大正そして昭和― 西欧美術との衝撃的な出会い、日本美術界に訪れた新たな時代の波は。その変革期に、独創性を見出そうと挑み続けた近代日本の巨匠たち
 まさに温故知新 古きに学びて新しきを知る そんな良品揃いの場。
東山魁夷「春梢」
どんな風景も幻想的な物語に変えてしまう。冬のスケッチとの比較解説がある。彼の心が全て風景に再現されるかのよう。
平櫛田中「張果像」
 木彫の迫力。衣の真紅の彩色文様に恐れ入る。しかも手足や頭部は彩色せず木肌を見せてその迫力。手の瓢箪からは、駒ならぬヤギ。
上村松園「灯」 
若奥様(眉剃りお歯黒)ですね。長襦袢の緋色が艶っぽい。松園は描く際に、モデルにはきちんと日本髪を結ってもらって丁寧に写生されたとか。この「先笄」を結った女性をモデルに描いたのでしょうが、白桃のような肌や手先、ほんのり紅が印象的。是非実際をごらんあれ。
上村松園「春夏秋冬」四幅
江戸から明治にかけて様々な女性を四季折々に描く。四幅並べると、女性の頭部がちょうど弧を描くように配置されている。垣根と障子など線もバランスが良い。
ミュシャの「四つの時の流れ」を連想した。それもやはり円弧を描く構図だった。
月岡芳年「風俗三十二相」
浮世絵の手法と鮮やかな明治の色彩 「さむそう」「すずしそう」
狐手で油揚げを頂く女性が「うまそう」猫にじゃれつく女性が「うるさそう」
◆小杉放庵
 洋画として実力があったが、欧州留学で水墨画に目覚めて日本画に転向されたとか。なごみある線と意匠的な枝葉や石の描き。愛らしい人間の表情。
「南庭」縞猫が樹上で寛ぐ。


《2.茶のいろどり》
川喜田半泥子
昭和の時代に、過去のすばらしい名品茶碗が作られたその技を盗み、再現に尽力した茶碗の数々。出光ならでは!中国は南宋、朝鮮王朝、桃山時代の所蔵品と比較が楽しめる。
松田権六「鶴亀蒔絵棗」
漆工芸といえばこの人。小さな空間に鶴と亀 それぞれ見事な宇宙観である。
前田青邨「紅梅文棗」
木地をそのまま生かして紅梅を描く、それだけで十分。

《3.和のモダニズム
竹細工や蒔絵を さらに近代でのアレンジを試みた作品。大胆な竹細工、もともと日本工芸品は、モダンではなかっただろうか。
◆高井白陽「彫漆華文壺」
これは見事。見事に色漆を重ねて、丁寧に削っていき見事な文様にしている。
職人技はどれも凄いが、この切り口の見事さに 漆の深く鮮やかな世界を知る。

《4.近代陶芸のパイオニア
板谷波山
 大変有名なコレクション。更紗文様なども鮮明濃密な文様も板谷の手にかかれば、ほんのり「葆光彩磁」により、穏やかな印象となる。オウムも鳳凰も麗しい。
◆富本憲吉「色絵金銀羊歯模様角瓶」
シダ模様がこんなに魅力的な構図に収まるとは。
◆塚本快示
昭和の時代に青白磁を再現したその作品は、あまりに繊細な口縁に淡く清い青。
眺めているだけでも至福の器。

◆「仙がい」出光美術館 秋の風物詩
さっと禅の思想を墨で描く技 一円相画賛 など毎年ながら楽しみである。
出光美術館のカレンダーも毎年 掛け軸風で SENGAI