ジュリアン・オピー展@水戸芸術館

世界的な偉大なアーティスト ジュリアン・オピー
私はこの単純化されたマメのようなくるくる瞳が苦手。
しかし 安易な考えが浅はかであった事を知る。
実はあらゆる手法をもって、物事を単純化して純化して
更に本質を突き詰めるのが非常に巧い。

図像ピクトグラムのように単純化を突き詰めて
さらに「動く」

《スカートとトップスで歩くスザンヌ
動画連続写真などの手法でこういったblogで
鑑賞できるのも一興かと。
「歩く」基本形 動画か連続体で静止するか
面白い試み。

 展示は近年(2007)の作品が多いが、
水戸芸術館ならではの作品も必見だろう。
エントランスからしてでかい

Gallary1は 肖像画シリーズ
浮世絵の大首絵を想起させる。
髪型も表情も丁寧なのに、瞳は非常に最小限。
しかし、肖像によって瞳も微妙に違うことを知る。

喜多川歌麿(寛政三美人)
全身ではなく上半身もしくは顔にズームアップする事で
より内面や表情を強調しようとする手法が
現代に登場。三美人はさぞかし..
図録には三美人の写真が登場している。

小島聖の肖像を昇華した作品 
《本を持つ聖》《手をあわせる聖》Hijiri
オピーの元にはモデルへとオファーが多いそう。

《石でできたシャローザ》
 この石材は「墓石」
三つの艶やかな黒地に
にオピーが描くシェローザの肢体を
彫り込んだもの
図録には「白子家之墓」写真が登場。
インスピレーションを与えたのですね。
そうなると象形文字にも見えてくる。

白地に黒 フロック加工された絵など
まるで 書道。墨で描く書にも似ている。
白地に大きな黒い曲線を見て
子どもは「足」とすぐ気がつく。
今回の展示の位置関係がとても良い。

自分が動く事によって 絵が動く。
ステレオ写真のように見る位置によってポーズが変わる

自分が静止しても 絵が動く
おなじみの電光掲示

アニメのセル画の連続、ぱらぱらマンガ
動きは同じようで、やはり名前を冠しているゆえ
個別微妙な差が出ている。
《服を脱ぐサラ》《服を脱ぐキエラ》
なんて ドキドキもの。
比較するうちに差異がわかるはず。
トウィストする腰周りも魅惑的。

 日本の浮世絵版画のコレクターでもある彼が
浮世絵の構図や色彩感覚に着想し、
オピー独自の表現へと昇華させた風景作品を多数。
またしても 日本人以上に日本文化の本質を突き
浮世絵からさらに発信する伊達モノ登場。

Garally8
日本八景」と題して 日本の今現在の風景を
見せてくれる。浮世絵版画的でもあるが
何しろ LEDで静かに動く 音響も見事。
風が動いている 船も飛行機も車も 雛菊も。
水面も 水面に映る真鶴の夜の光も富士山も 短冊も。
お見事。現代の日本風景の眺め方。

マイコミジャーナルでは多くの画像が見れるので、
参考になるかと。


体の動きを点で表し、最小限の点で動きを再現する手法は、
ソニーエクスプローラーサイエンスの
バイオロジカル モーション
にも通じるよう。(茂木健一郎氏)
瞳はまるで村上隆スーパーフラットのキャラにも通じる瞳。

ジュリアン・オピーの公式HPがある。
残念なことに国内唯一の大規模個展は
水戸芸術館でしか開催されない。
誰もが絶賛する行く価値がある展覧会だった。
行けなかった人、行ってもう一度あの感激を
味わいたい人のためになんともコンテンツが優れたサイトである。
以下はHPのコンテンツより

◇Julian and Suzanne walking
◇Kiera walking

◇Shahnoza in dancing
◇sara dancing
これを見ていたら同じように踊りたくなり そう。

◇Monique smiling
こんなに表情豊かに変化し微笑む映像展示は
なかったので、必見。

◇Antonia yellow shawl
黄色のショールのディテールの見事さ。耳元に注目。

◇View of Nambu bridge from route 52
Gallary7に出ていたもの

芸術新潮9月号のインタビューより(128-135)
僕をアートへと駆り立てる原動力は、実は世界をどう理解するか、世界とどう関わるかということなのです。
・・・
以前教えていた学生達によく言ったのは、美術学校というのは良い作品の作り方を教わるところではない、どうやって仕事と関わってゆくかを教えてくれるところなのだ、ということです。この仕事を続けていく限り、さまざまな落とし穴が待ち受けていることでしょう。退屈や絶望、他人と期待と自分の要求のずれなどに苦しまなくてはなりません。でも、これとこれとをこうしたらどうなるだろうと考え、かつ実行してみて、たとえ、失敗した場合でもその失敗を楽しめれば問題はない。結論を出すことよりも、息をして、生きて、過程を楽しむことの方が重要です。そして世界とそこかで関わるかを見つけなくてなりません。

常にスタイル変貌を遂げるオピーの作品
これからどうなるか、眼をじっくりあけて観てみたい。