もっと! フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち@東京都美術館

 デルフトの栄華時代と共に絵画が流行り廃り。
オランダの歴史は、投機熱が時代に翻弄され、絵画もチューリップもその犠牲になった陰も感じさせる。
ここでは光であった時代。

 デルフトの巨匠に注目する。
みんなの心も視線も、フェルメールに注がれがちだが、やはり良いものは良い。

◆ヤン・ファン・デル・ヘイデン
《アウデ・デルフト運河と旧教会》
教会と運河の美しさは第一だが、犬や洗濯する女や鶏、餌をあげる人など、細やかな描写にも注目を。
◆エマニュエル・デ・ウィッチ
《デルフト新教会の内部》
まさに劇場のように額縁の更に内部がカーテンレールも見せての仕掛け。
教会の曲線美を様々な構図や視点で描く事が比較できるのが面白い。
◆ダニエル=フォスマール
《壊れた壁のあるオランダの町の眺望》
この煉瓦が凄い!
◆カレル・ファブリウス 
彼がデルフトに火薬爆発事故がなければ、彼の作品は現世に残ったであろうに。
《歩哨》
寓意画もありつつ、しかし歩哨のそばにすっと座る黒い犬の姿がいい。オランダ人は犬好きなんだろうか。
教会内部にも犬が見えるので、どこまでも犬に興味がいってしまう。
楽器店のあるデルフトの眺望
錯覚を呼び起こすような透視法の熟練者として名声を得ていたことを裏付ける唯一の現存絵画。
研究成果を体験 向かいには「透視箱」に据え付けられ当時の楽しみ方を再現している。
 今回こちらを覗いてみて なるほど納得。

 ◆ピーテル・デ・ホーホ
《食料貯蔵庫の女と子供》
 絵画という平面に奥行きを感じさせる建物を描きこみ、女中にビールを飲ませてもらう男の子。
かれの被り物の刺繍の細やかなこと。
静謐な時間を描く風俗画家として素晴らしい光と陰のバランス。
躾は教会と家庭が担っていた素晴らしきオランダ時代。

 しかしこの時代の絵画は洗浄によって驚くべき変貌を遂げたり、
絵具や筆致から画家を鑑定したり、本当にドラマチックな発見があるものだ。
 特に「ディアナとニンフたち」は、右上に青空が描かれているのが定番だったのに、
いきなり洗浄により暗闇に戻された。19世紀に何があったのだろう?

 二度も盗難にあったあの「手紙を書く婦人と召使い」 無事生還だけでもロマンチックだが、
この絵からドラマが生まれるのもまたロマンス。

 今回の展覧会を仕掛ける側からの視点のコメントを見つけた、財団ハタステフティング
 ハタステフティングの企画と粘り強い交渉力で、初来日を引き寄せたようだ。
世界各地にバラバラに分散されている絵を結集させる力。本当にその恩恵にあやかっているようだ。

 唯一の疑問。フェルメールの絵の大きさをパネルで比較するコーナーでは 36枚しかない。
2000年来日の今回カウントされないのは何故なのだろう。

特別出展作品「手紙を書く婦人と召使い
アイルランド・ナショナル・ギャラリーではこの作品を他館へ貸し出さない方針だったが、
本展覧会の学術的・文化的な意義に対して評議会の賛同が得られ、本作品の出展が決定したとか。
 企画だけでなく展覧会図録も構成するハタステフティングゆえか、展覧会場での説明など わかりやすい。

Aimez-vous Vermeer?
BLUE HEAVEN 弐代目・青い日記帳のTakさんが、この度 この上野にある
「手紙を書く婦人と召使い」をもってチェックメイト フェルメール巡礼の旅を完遂したそうだ。
祝賀会でのTakさんは、本当に幸運に恵まれた素晴らしい方である。
朽木ゆり子さんの著書「フェルメール完全踏破の旅」フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版) [ 朽木ゆり子 ]では
実際は完全ではなかった事をあとがきで知った。
 彼のような文筆力ある人物からも是非「フェルメール完全踏破の旅 BLUE HEAVEN version」に
期待したいものである。