フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち@東京都美術館

Aimez-vous Vermeer?フェルメールはお好き?
 どうしてフェルメールに惹かれ、恋する人が多いのであろうか。どうして魅了させるのだろうか。
 人は「眼」で光と影を感じ取る。絵画は心地よい空間や時間、人を描き上げて、まさにその場にいるような錯覚にさせる手段。

 7枚が来日すると宣伝に力が入っていた「フェルメール」、開催直前の土壇場で「絵画藝術」「デルフト火薬爆発」が出品取りやめになるなど、展示会場や図録など大混乱を引き起こすハプニングぶり。
 しかし、昔から フェルメールはアートテロも絡む盗難事件や贋作騒動など、事件簿に枚挙に暇がない画家の作品である。
 今回は無事来日して、連日多くの来場者を迎える展覧会になっている。
 あの東京都美術館の構造上の欠点をフォローすべく展示構成が工夫されており、大変魅惑的な空間となっている。
 デルフトの風景と建築を重厚な濃緑の壁紙に白抜き文字で展示していく。遠近法など駆使して描いた空間の中で、オランダ絵画は必ず可愛い犬が登場している。
 活躍した同時代の画家の作品は真紅の壁紙で。
 デ・ホーホの作品がある場所には、オランダ美術に出てくる大理石の床を模してあり、心憎い配慮である。
 2000年に大阪来日した時の感激はまったく色あせない。

 1階に上がると、7作品が程よい感覚で置かれており誰もがフェルメールの作品の細部に潜む秘密をパネル展示にして絵画の傍に設え、その深みを味わう機会がある。

1)《小路》
静謐なデルフトの街風景の一コマ。デルフトの実風景でない何処か。煉瓦の描き込みなど、一番惹かれる作品。
建物に人物をうまく配置する事でその奥行きさえも表現する。

2)《ディアナとニンフたち》
19世紀に描きこみと別人のサインが入るとは!
絵画洗浄の技術に驚き。月の女神 ディアナ神話のエピソードも。

3)《マルタとマリアの家のキリスト》
フェルメールには珍しい初期の宗教画の一つで、現存する中で最大の作品。
(2階のパネル展示で大きさ比較がされているので注目)
見事な三角形と鮮やかな三色の色彩。マルタが中央に配置されるのがオランダらしい。

4)《ヴァージナルの前に座る若い女
黄色のショールの女性が愛らしい。2004年にサザビーで真作とされた個人蔵。

5)《ワイングラスを持つ娘》
ステンドグラス ワインや服への光の加減が。

6)《手紙を書く婦人と召使い》
白い強い光が差し込む一方で、陰になる床に手紙が。
白黒の市松模様の床がかなり重要な構成に。

7)《リュート調弦する女》
霞みがちな風景の向こうに、帆船が描かれた世界地図。
恋する女心

 2階に上がると、フェルメール以降の影響を受けた作品、あの36作を実寸大にしてパネルで再現してある。本当に愛らしい小作品から、大作まで、様々なフェルメールを一挙に体験するなかなか面白い企画。
 Kenさんの作品リストが見易く比較情報が出来る。修復前後の比較できる点も素晴らしい。研究者によっては真作かどうか疑問視する作品もあるが、謎が多いのも魅力のひとつだろうか。

 この37作品全踏破した人もいるという。それぞれの美術館の空間でひとつひとつに出会い感激したであろう、その感覚が複製とはいえ、一挙に眼にするのは贅沢な時であろう。
 しかし、フェルメールは本物の作品ならではの実力は変わらず。いくら大きな複製画が出来たとしても、オランダの画家フェルメールがカンヴァスで絵具を重ねて生み出す色彩から溢れる光は、あのカンヴァスから感じられないもの。

 また、描かれたデルフトの街の絵と現実の写真と比較してあるのも、時代を超越したような感覚。
 フェルメール論は小林頼子氏が日本では詳しく執筆されており、何度か拝読したが、いつまでも謎に包まれた画家として、多くの想像力を与えるであろう。
 恋する相手は全て知らなくて良い。自分が好きと思うのに理由などない。確かに恋するという感情のみではないか。

 「芸術新潮」2008年9月号にも「やっぱり気になるフェルメール」で登場。
 前回は、2000年5月に「特集/フェルメール あるオランダ画家の真実(創刊50周年)」
[rakuten:book:13031719:detail]

 BRUTUS 370号(1996年)フェルメール特集 
 これを上回る特集に期待をしたい。二番煎じでも十分堪能できそうな貴重な内容。
 全作品をカラー図版つきで紹介してあるのはもちろん、映画や小説・漫画への引用、作品のサイズ、フェルメールの経済状況、フェルメール作品全世界分布図、フェルメールコクトー、再現された「フェルメールの部屋」、盗まれた「合奏」は日本にあるのではないかという噂の真相、名展覧会リスト、フェルメール全作制覇の旅(2人紹介)、作家たちの「フェルメール」、フェルメールの制作方法を探る、再発見物語のもう1人の主人公トレ=ビュルガー、メーヘレン事件の謎、などなど、もう至せり尽くせりの内容!

 表紙にはどの絵が来るだろうか。
 「小路」は多くの人にとって人気があるので、今回はこれだろうか。
 いやいや 急遽アイルランドから来日したマダムが登場するかもしれない。

 とても充実しているのでリンクを貼っておく。