「小袖」江戸のオートクチュール展(第一期)@サントリー美術館

 着物が本当に日本の文化で良かったと思う瞬間。
パリのオートクチュール文化が華やかですけれど、
江戸時代の日本の着物も負けていない。

初公開 松坂屋京都染織参考館の名品を厳選した上で
 サントリー美術館は心憎い事に、数多く展示したいという名目で
またまた展示替えが三回も重なり、図録は全て収録していますが、
あの唐織、友禅染、鹿の子総絞り、刺繍の繊細で緻密な見事さは、
これは会場でじっくり見るしかない。
第一期 7月26日-8月11日
第二期 8月13日-9月1日
第三期 9月3日-21日
 暑い夏に心憎い企画。
着物姿だと割引など、最近取り入れているユニークな割引制度。


 日本の着物は平面で形が決まっている分、技の見せ所は
その平面をいかに構成するか。
その平面を 染める 織る 彩色する 刺繍する
絢爛豪華、昔の人の仕事ぶりに恐れ入る。

 「ひいながた」を観ながら、呉服屋さんの注文をあれこれ楽しんだ時代。
 今回は 慶長小袖から寛文小袖、町娘の豪華贅沢な意匠から、
武家の小袖まで、本当に堪能。
 
第一期で気になる作品(音声ガイドでも紹介されています)
◆雪待ち水仙に仔犬模様振袖
 刺繍のワンちゃんの愛らしいこと。
◆御所車花鳥模様小袖
 淀君ご所用と伝えられた、紅黒白の大胆な染め分けに見事な刺繍。
戦乱の世を超えて絹という繊細な布地が残ることは奇跡です。

◆網に魚介模様浴衣
こいつは粋な意匠。意匠化された網目の間から、伊勢海老、鰹、
河豚、蛸が顔を覗かせている。蛸の表情なんて本当にユニーク。
木綿地に両方から型紙を当てて染め抜く大変高度な技術を要するのだとか。
こんな意匠を考えて実現させるとは。
◆唐桟表着+花卉模様更紗間着
 とんだ伊達物。舶来の布地で仕立てるとは。渋い縞模様で木綿地なのに
よくみると赤と白が入っている。
ちょい不良スタイル。

洋画家 岡田三郎助が描く「支那絹の前」油絵の肖像画に登場する
小袖、振袖が実際に登場する。時代を超えて体温を感じる着物。

このほか装うための小物、牡丹紋業平菱蒔絵の豪華な調度品の数々も
素晴らしく、マリーアントワネットの時代を彷彿させるルーブル展なども
回想しそうな日本の贅沢美の空間。

ここでは誰もが姫になりそう。実際会場では9割女性。
ファッション雑誌をめくり、あれこれ自分の姿に投影して妄想する姿は
いつの世も同じかも。
雛形本をめくると、その時代の嗜好や流行が垣間見できる。
そういうファッションの歴史を知っていると、江戸時代の浮世絵や肉筆画などの
着物も味わいが面白いかもしれない。

 古き時代の着物をよく保存くださった
松坂屋京都染織参考館からの初公開。
 
 こどもには「おもしろびじゅつ帖」
江戸前期、中期、後期の特色を捉えつつ、着せ替え人形仕立ての
愛らしいガイドブック。子供は幸せね。