記念座談会「放談 巨匠対決」

創刊記念『國華』120周年・朝日新聞130周年特別展「対決−巨匠たちの日本美術」関連事業


『國華』主幹、尚美学園大学教授、秋田県立近代美術館館長 河野 元昭 氏
『國華』名誉顧問、武蔵野美術大学名誉教授 水尾 比呂志 氏
『國華』編集委員学習院大学教授、千葉市美術館館長 小林 忠 氏
東京国立博物館 上席研究員 松原 茂

 帝国博物館の美術部長だった岡倉天心らが明治22年に「國華」発刊。朝日新聞の支えもあり、現時点では世界最長の美術雑誌となる。節目ごとに東京国立博物館で展覧会を開催。
 今回は数えで120周年、朝日新聞は130周年という記念。
1)「國華」研究蓄積の成果 2)見て楽しめる の2点を主眼に構成した。 
日本の歴史を通観しつつ、日本美術の優れた成果を楽しむ機会。

今回の展覧会には実現しなかった点
編集委員注目の「対決」
◎水尾名誉顧問
「無名の大家」紹介したかったが、あまりにも多すぎて割愛せざるを得なかった。
あえて「著名な巨匠」を選抜することに。
今回の対決で出品されなかった名品
◆永徳「国宝 洛中洛外図屏風米沢市上杉博物館
等伯国宝 楓図智積院

水墨の名手であり色彩も巧い。
工芸:今回の対決で出品されなかった名品
◆長次郎「黒楽茶碗 銘あやめ」MOA美術館
●光悦「国宝 白楽茶碗 銘不二山」サンリツ服部美術館

 長次郎が千利休の「わび」の精神を体現した型も小さくしおらしく奢らぬ姿。
対する光悦は「日本のレオナルド・ダ・ヴィンチ」といわれる程あらゆる方面で才能豊かな人物。
二人の才能は内と外、静と動ともいえる。

◎河野主幹 一押しの対決
宗達光琳
「雷神風神図屏風」
宗達のどこか愛嬌のある雷神風神像に較べて、光琳はどこかシニカル
若冲蕭白
全く筆致が異なる二人だが、「波を見て今閃いた。蕭白は縄文で、若冲は弥生だ!」
奇想の系譜の二人を見出し辻先生は、前の主幹。「辻先生が論文を発表した時は正に昭和40年代、日本が新しい文化を生み出すエネルギッシュな時代だった...」

◎小林編集委員
巨匠といえば「北斎vs広重」を実現したかったが、数年前に大規模な展覧会「北斎展」があったゆえ 今回は割愛することに。
◆大雅●蕪村
二人は実はとても仲が悪かったよう そうと知ってか知らずか
尾張国鳴海の素封家下郷学海により10図ずつ競作させたそう
(ちなみにどちらも川端康成記念館蔵)
大雅「十便帖」(10の便利な別荘の図) 魚釣りができる別荘 羨ましい
蕪村「十宣帖」(10のナイスなすまいの図)