いしかわことみ「CIRCUS」@ピンポイントギャラリー


南青山5-10-1双葉ビルB1

 青山の交差点にある ほんの小さなギャラリーで
絵本好きな人がよく立ち寄る場所。
思いがけず、なかなか素敵な絵に出逢った。

 今回は第9回ピンポイント絵本コンペ受賞記念
展覧会だそう。小さなテーブルを囲んで、絵本原画がぐるりと
囲む小さな空間。そして小さな絵に目を凝らすと何か
お話が始まっている。


デュラン デュラン デュロン
アコーディオンを響かせてサーカス馬車が走りだす
さぁ今夜 何が起こるか お楽しみ
(文章を一部引用)

 このメロディが途中から変拍子になり、また戻る。
文章が音楽になり、音楽が絵になり、絵が世界に誘う。

 絵本だから と 子供だましじゃない。
 画面に切り絵で様々な場面が飛び出してきて、
どんなカタチも踊っていて、色彩も楽しい。

 いろんな絵本作家さんの場面や手法も思い出すけど
そこここで、エリック=カール、モーリス=センダック、
ブルーノ=ムナーリ、荒井良二、コロボックル...
だけど、これは いしかわことみさんの全てオリジナルの世界観。
 これからも もっともっと活躍して絵本にして欲しい。
 でも切り絵の立体的な楽しさや色彩の微妙な繊細さは 
この画廊でしか 実際に味わえない。
 大好きな絵本であっても、原画展だと印象が全く変わるくらい、
原画の力は素晴らしい。
 大竹伸朗「ジャリおじさん」も武蔵野美術大学での原画展で
初めて好きになったもの。

 いしかわさんによると、切り絵は、まず「切る」ことから始めて
後から着色するのだと。カタチは自ずから彼女の腕から切り出され
生み出される。繊細な切り絵が多いから、かなり集中力の要ることだろう。
 最後のキャンパス地に展開する二枚の絵は彼女の世界が詰まっていて
素晴らしかった。

 絵本として全体を見るとまた違う印象かもしれないが、
一画面の細かな描きこみ、切り絵の貼り込みが素晴らしく楽しい。

 マトリョーシカとコケシが仲良く収まっている棚も、
遊び心が満載。作りながら楽しんでいる様子も窺えました。
 立体も展示されていて、その引き出しの多さ深さに今後が
とても楽しみな作家さん。
 審査員の言葉でも 小野明氏が「総合力の栄冠」と。
たがが絵本されど絵本。私もこの絵本、うちの子と楽しみたいなあ。