KAZARI−日本美の情熱−展@サントリー美術館

「KAZARI−日本美の情熱−」 日本文化の中で「ハレ」を表現する装飾について
鮮やかな装飾と物語を持っている文化であると思っていたが、
意外にも海外では「わびさび」のシンプルな日本美術ばかりがイメージ先行していると聞き驚く。
 日本でも鮮やかで装飾華美な時代があったのが、
時代の切り出しでは、縄文時代安土桃山時代から江戸時代、
江戸時代は華美に走るといつも禁止令が出て政府が抑えようとする。
いつだって日本人は「飾り」が好き。
 辻惟雄(MIHOMUSEUM館長)監修だけあって、
浄瑠璃物語絵巻の装飾、サントリー美術館蔵の遊楽図屏風を大きく引き伸ばし展示する。
 サントリー美術館所蔵品を上手に展覧会に織り交ぜて、独特の雰囲気に変貌させてしまう。
 お気に入りは「座敷飾り」
 出光美術館からの唐物を上手く配置されて、今まで図や写真でしか見た事がない、
この装飾を再現してしまう。
宴席の器が、図屏風から飛び出したように置かれているのも面白い。
絵画はその時代風俗をも伝える大事なタイムカプセルなのだ。

 日本人ならでは、ダンディズムだって健在。
甲冑や刀剣に日本美を見出す人は多いと思う。
今回出品がなく意外だった川越歴史博物館の甲冑の方が獅頭や兎月で奇想天外かつ美しく素晴らしいと思うのだが。

 そして「芸能のかざり」では背景が、能装束は板目、歌舞伎はおなじみ幕の三色、
小袖の展示も表裏から鑑賞、を今までとは全く違う使い方をしていて新鮮な空間だった。
 サントリーは今まで以上に激しい展示入替が行われている。鮮度も鮮やか。

 そして江戸のお洒落の嗜みは、円形ガラスケースに入れる心憎さ。
印籠や煙草入れに非常に凝った根付。
 現代ならステータスシンボル、高級腕時計、そして携帯電話。
今ならデコアートなどそれぞれ凝った装飾をする人もいるはず。

 本来ある「日本のかざり」特集だったら、祭具以外に日常を華美装飾するかたちとして、
私なら Ageha嬢や彼女達が愛するデコアートしたお茶碗や弁当箱、刺青のお兄様、
あの筋の華美な刺繍、大漁旗、トラック野郎の車内装飾の方が、
日本らしい「飾り」ではないかと思うのだが。そういう意味では、山本寛斎の「熱き心展
のほうが余程パワフルで日本美を強くPRしていたと思う。
 どちらかというと民俗的な視点になるので博物館としての展示かも。
まだまだ美術館にお呼びできる時代になるには一世紀かかるだろうか。
でもAgeha嬢は生ものですから!早く捕獲しておかないと絶滅するかも。

 今回の図録は、版形といい写真レイアウト、内容デザインの素晴らしさといい、
群を抜く美しさ。まさに「奇想」の美。図録はお奨め。
 今回は全てを見るためには6回通わないと全貌は見えない分、
こういう図録で堪能できるのは良い事である。
 会場でしか味わえないのは、あの縄文式土器の焔あげる勢いある装飾の力強さ、
辻先生お奨めの岩佐又兵衛浄瑠璃物語絵巻」装飾美、座敷飾り。
あのサントリー美術館は可変な面白さを秘めた場である。
 サントリー美術館所蔵品が展示企画に併せて幾度も出品されるが、
その企画ごとに切り口も変わり面白い。いつも、編集力の面白さを感じる。
 巡回展覧会であるせいか、数多くの学芸員の叡智が結集した展覧会。
もっともっとこういう企画が増えて、ありし日の日本について、
日本人自身も驚く展覧会に仕立てて欲しいと思う。

京都や広島ではどう飾るか期待できそうである。
京都文化博物館8/2〜9/15 広島県立美術館9/27〜11/9