コロー 光と追憶の変奏曲@国立西洋美術館

 実は私は画家コローをよく知りませんでした。でも確かに美術展などで、絵を見ていました。あまりにも身近で当たり前のように素晴らしい絵があって気が付いていないように。すぐそばにある幸せに気が付かないように。恵まれた緑の大自然の素晴らしさを改めて教えてくれるように。 

 彼の画力は、ほんの少し筆を置く事で人物や動物が現れ、人物を配する事で奥行が出ます。かすかに色を置いただけなのに、人物の表情がわかるのはどうしてなのか 驚くべき筆です。絵の近くに寄ったら何も見えて来ないのに、少し後ろに下がると具象化する、そんな不思議な絵が多くありました。特に赤ん坊を抱いた若いお母さんの表情は幸福で包まれています。 
 彼の素晴らしい筆致は、近景をぼかして、具体的に人物に焦点を当てること、光と影のバランスを上手く配すること、美しきものを再構成する力があること 感じました。木々を見つめて習作し続けた力が さっと描く木々に現れます。

 ヴィル=ダヴレーの坂道を森の木々が光と影を照らしつつまっすぐに進む光景は美しい。深い森は安らぎの場のように、その奥行きも素晴らしく表現されていて、すっかり森に迷い込んでしまいます。
 夢にような空想的なニンフ達という女性像、決してモデルを固定させることなく、自由に動く中を写生を繰り返したコローにとって、彼女達が一番美しく一番輝く表情を知っていたようです。 

 国立西洋美術館蔵の「ナポリの浜辺」浜辺は遠景に下げて、森がカーテンのようになびき、ナポリの浜辺で楽しんできた女性二人と可愛い赤ん坊、タンバリンと歓声が聞こえてきそうです。

 コローは才能にも恵まれ、後世慕われた幸福な画家でしょう。人生かくありたし。お父様の尽力もあったでしょうが、別荘であるヴィル=ダヴレーからどれほど素晴らしい芸術の泉を生みだしたことでしょう。
今回は企画から丁寧に構想を練って数多くのコローの作品を集結されたとHPにそれぞれ紹介されています。素晴らしい作品をその後の影響も含めて、まさに協奏曲のように配置された展覧会だと思います。
研究し丁寧に編纂したこの展覧会が成功すると思いました。
美しい変奏曲でしょうか。
 
 「光と追憶の変奏曲」いかにも日本人に受けるコピーにしたこと、美しきコローのモナリザと意味付けをしたこと など成功要因が多く含まれています。日本人は近代フランス絵画のうち、バルビゾン派印象派と括られるカテゴリーの作品を多く好みます。
 フランスでも都市化により、本来の自然に対する憧憬が強くなり人気を博したように、日本も本来あるべき森の深さが今失われつつあり、まさに追憶するように森も愛します。トトロの森 しかり。昔は緑深い森はあったのですね。
素晴らしい画家に光を当てたことが一番の成功です。
何度も訪れるでしょう。そして幾度となく幸福な満足勘に浸れるでしょう。

 なお今回は図録を入れるバッグも併せて販売しているが、友人はとても気に入ったいた様子でした。いつも図録を購入すると、ビニールバッグに入れてもらえるが、図録の重さで持ち手が曲がりがち。今回はファスナーもあるので、きちんとしまうことが出来ます。
 こういうささやかな配慮でも、好印象を与え、たとえ追加料金があったとしても、大変満足いくバッグだから。別の展覧会でも何にでも、COROTのロゴ連れて行きましょう。ささやかなECOでしょうか。